僕、出番が増えました
「本日のゲストは、とっても可愛い男の娘カオルちゃんです」
朝霞さんに紹介され、立ってお辞儀をする。盛大な拍手と共に、抱き締めたいとか撫でさせてとかの声を戴きました。
女性からの声は良いのですが、男性に抱き締めたいとか言われても困ります。僕はノーマルなので、男性には興味がありません。
「男の娘だとカミングアウトしても大人気のカオルちゃん。今日も可愛い服装での登場です」
今日の服装は、空色のワンピースに同色のベレー帽。男だと公表したのだし、男用の服を着てもいいと思うのだけどお母さんと穂香が許してくれません。
長門さんに相談しても二人の味方をするし、お父さんは「諦めろ」の一点張り。
それを思い返して遠い目をしている間に進行は進み、一問目の問題が出されました。
「アメリカの国旗の星条旗。星の数は・・・」
「五十個!」
ユウリさんが問題を言う途中で回答ボタンか押されました。しかし、少しの間を空けて不正解のブザーが鳴らされました。
「残念、ユウリちゃん問題の続きをお願いします」
「はい。星の数は現在の州の数を表していま・・・」
ここでボタンを押しました。ここは果敢に攻めてみましょう。
「独立時の州の数!」
「正解です。『星の数は現在の州の数を表していますが、縞は何を表しているでしょう』という問題でした」
幸先良く初めの問題を正解出来ました。少しでも良い成績を取れるよう頑張りましょう。
「問題。ラムとロム、戦闘艦の武器はどちら?」
「問題、ヒエログリフ解読の鍵となった石の名前は?」
次々と問題が出され、答えられていきます。これ、学校で学ぶ事よりもネットとかで仕入れる雑学の方が多いようです。
なので、実質小学中退の僕でもそこそこ答える事が出来ました。
「では最終問題です。荷電粒子が光を追い越す・・・」
ここで優勝を争うタレントさんがボタンを押しました。正解ならば、彼の優勝て終わりです。
「チェレンコフ光!」
暫しの静寂。緊張が高まる中、正解のファンファーレか鳴りました。
「正解です。見事妙高さんが優勝を決めました!」
他の解答者の皆さんのように、妙高さんに拍手を送ります。すると、妙高さんがとんでもない事をい言い出しました。
「朝霞さん、優勝賞金いらないから、代わりにカオルちゃんをナデナデさせて?」
「「「「却下!」」」」
解答者の女性陣一同とユウリさんにより、即座に却下されました。僕も男の人に撫でられる趣味はないので、その回答に異論はありません。
「さて、妙高さんが男の娘好きという意外な事実が判明したところで今週はお別れです」
「全国の男の娘の皆さん、妙高さんには注意してくださいね~」
「違うっ!俺は可愛いのが好きなだけだっ!」
妙高さんの反論は封殺され、エンディングが流れて収録は終わりました。
「皆さんお疲れ様でした。カオルちゃん、初めてのクイズで疲れてない?」
「ありがとうございます。少し緊張しましたが大丈夫です」
朝霞さんを皮切りに、他の出演者の皆さんも僕の事を気遣ってくれました。ただ、妙高さんが僕の近くに来ようとして女性陣にブロックされていたのが可哀想でした。
「カオルちゃんお疲れ様。初めてのクイズはどうだった?」
「皆さん気遣ってくれて、楽しかったですよ」
帰りの車の中で長門さんに問われ素直に答えました。今までバラエティーにしか出ていませんでしたが、クイズも大丈夫そうです。
「幾つかオファーが来てるのよ。他の番組にも出てみる?」
「撮影に影響出ない程度にお願いします」
僕は、この発言を数日後に後悔することになりました。クイズも出るとわかった局側が鬼のように出演依頼を出してきて暫く休みが取れない程になったからです。
迂闊な返事をしてはいけない。僕は心からそれを思い知りました。