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僕、答えを貰えませんでした

少々長くなりました。


会話文が多いですが、ご容赦願います

「カオルさんは、小学生の時に学校で三年余りに渡り酷い虐めを受けていました。第一次性徴期の大事な時期に性的な物を含む虐めを受けた為にホルモンバランスが崩れ、胸が膨らんだのです」


「何故そう断言出来るのですか?」


「虐めが発覚した際、入院した病院での検査で判明しています」


 女性記者が挙手をせずに質問しましたが、弁護士は即座に答えを返しました。記者は納得したようで、それ以上の質問をしませんでした。


「更に、肝臓に損傷を受け肝機能が低下していたようです。それにより豊胸が加速されたとみています」


 長くに行われた暴行で、あちこちが傷付いていた事は知っていました。でも、肝臓が損傷すると胸が膨らむというのは初耳です。


「お父さん、それ本当なの?」


「ああ、肝臓では男性に不要な女性ホルモンを分解しているらしい。だから、その機能か低下したら女性ホルモンが増えて男でも胸が膨らむ症状がでるようだ」


 僕はただ女性ホルモンが増えただけではなく、処理される量も減ったから余計に胸が大きくなったようです。そんな偶然、重ならないで欲しかった。


「女性は元々女性ホルモンが分泌されてるから、肝臓が傷付いても胸が大きくならないと思うぞ?」


 お父さんの呆れたような発言にお母さんと穂香を見ると、自分のお腹をじっと見詰めていました。まさか、胸を大きくしたいがために傷付けてとか考えていないよね?


「おまけに、肋骨が数本再建不可能な程に折られていた為に体型も変わっていました。男性の胸が膨らんでも、体型の違いから外向きになるのです。それが女性のように内向きになり、更に女性のような見た目になってしまいました」


「そんなに酷い虐めが行われていて、学校側は制止しなかったのですか?」


 うちの女性陣に注意が向いていた間にも説明は続き、男性記者が挙手をして質問しました。


「他の生徒や教師は、彼に対する虐めを黙認するか参加するかだったようです」


「そんな、そんな酷い事が許されるのですか!カオルさんは家族に助けを求めなかったのですか!?」


「教師に助けを求めた際に、虐めの主犯格に脅されたのです。次に告げ口すれば、妹がお前と同じ目に遭うぞと」


 弁護士の答えに、会場は静まり返りました。そんな中、誰かが小さい声で呟いた声をマイクが拾います。


「小学生だろ?そんな事までするのかよ………」


 質問ではなく、思った事がつい口から出たのでしょう。それに対し弁護士さんは律儀に答えました。


「その子は某代議士の子息だったのです。余程熱心に英才教育を施して居たのでしょうね」


 弁護士さんの皮肉に満ちた返答は、電波に乗って日本全国に放送されました。それが彼らにどんな影響を及ぼすかは、僕の知ったことではありません。


「隠蔽され、長くに渡った虐めはカオルさんが瀕死の状態で警備員に発見された事で発覚しました。体と心の治療が進み、何とか世間に出られるようになったカオルさんは、望まずにあのような体型になったという訳です」


 一通りの説明が終わり、一息ついた弁護士さんは再びお茶で喉を湿らしました。間を空けて記者からの質問を受けるようです。


「不可抗力であのような格好になった事は理解しました。しかし、だからと言って視聴者を騙して良いということにはなりませんが?それを利用して芸能界に入ったのでしょう?」


「では、世間に復帰を考えた彼が将来を考えた時、どのような進路があったと言うのですか?見た目女性の彼が、サラリーマンになれるとでも?」


 今の僕がスーツを着て会社の面接に行く。そして、面接官が履歴書を見て男だと知ったら………採用してはくれないでしょうね。


「見た目と性別が逆な彼を受け入れられるのは、現状では風俗関係と芸能界位なものです。まさか、未成年の彼に新宿二丁目て働けとでも?」


 新宿二丁目って、新宿御苑の近くかな?女性の外見と何の関係があるのだろう?聞かぬは一時の恥、知らぬは一生の恥。お父さんに聞いてみましょう。


「お父さん、新宿二丁目って?」


「………薫にはまだ早い。大人になったらな」


「薫ちゃんは一生しらなくても問題ないのよ」


 お父さんには先送りされ、お母さんは答えを拒否して僕を抱き締めました。ネットの人達に聞いてみようかな。


「当方から説明すべき事は、これで全てです。時間となりましたので、これにて会見を終了します」


 口々に質問を浴びせる記者を無視して、弁護士さんは退出しました。これで下火になって……くれないでしょうねぇ。




薫ちゃんは未成年なため、新宿二丁目の事を知りません。

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