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僕、味方がいませんでした

「まあ、細かい事は置いといて。今日はこの機器を使ってどう映るかを体験して貰います」


「それ、細かくないと思うんだけど………」


「ただし、まずはテストという事で主役のカオルちゃんからお願いします」


 長門さんの突っ込みはスルーされたようで、作者さんは僕に向かって手招きをしています。素直に前に出ると、他の皆から驚きの声があがりました。


「このように、映像を人に被せる事により衣服を擬似的に変更する事も可能です」


 店長さんの説明に自分の体を見てみれば、お嬢様の着るような純白のワンピースに白い帽子を被っていました。


「あっ、カオルちゃんは殺陣の経験はあるのかな?魔物と戦うシーンもあるんだけど?」


「学んだ事はありませんが、一応運動はやっていたので人並みには動けると思います」


 痩せるために鍛えていたとはいえ、ネットで見た武術の内容を自己流でやっていたにすぎません。普通の人がどれだけ動けるのかも知らないし、判断出来ません。


「じゃあ、試してみようか。魔物を出してみるから、戦ってみて。何か武器は必要?」


「じゃあ、原作と同じ円月輪でお願いします」


 円月輪は、輪っかの外側が刃物になっている武器。一部は刃がなくて、握れるようになっています。


「何も無いとやり辛いでしょう。これ使って下さい」


 監督さんがADさんに何かを持ってこさせました。


「この投げ輪に映像を被せるから。投げたら本物の円月輪と同じように戻るけど、受け止め損ねても痛くないから安心して」


「それは助かります。これは、どう見ても本物ですね」


 映像が重なると、投げ輪が鉄で出来た円月輪のように見えます。

 指を穴に通して回し、勢いをつけます。回転が上がったのを見計らい投げると、楕円を描いて戻って来ました。


「おっ、上手いね。扱えなかったらどうしようかと思ったよ」


「誤魔化す手段はありますけど、顰蹙買うのは目に見えてますからねぇ」


 昔、人気漫画がドラマ化した際の事。主人公はヨーヨーで戦う女子高生なのだけど、主人公役の人はヨーヨーを全く出来なかったのです。

 基本の中の基本である下ろして上げる事も出来ず、ヨーヨーが回転していない事を誤魔化すために真っ赤だったヨーヨーが渦巻き模様に変更され原作ファンの怒りを買いました。


「カオルちゃん、モンスター出すから心置きなく殺っちゃってね。最新のコンピューターで高性能AIを使ってるから、本物と遜色ないから!」


 店長さんが合図をすると、僕の前に光の塊が生まれました。その光から現れたのは、RPGでは定番のモンスターです。

 僕の倍はあろうかという体躯に、せり出した下腹。右手には太い棍棒を持ち、顔は豚そのもの。


「店長さん、普通初めの敵はスライムとかゴブリンというのが定形だと思うんですけど」


「あら、美幼女が襲われる敵といえばオークが定番よね」


 店長さんの反論に、その場の全員が首を縦にふりました。それはそうかもしれないですけど、実際に対峙する僕の身にもなってほしいです。


「オークは女の子を襲うものでしょう、僕はこんななりをしてるけど男の子だよ!」


「ゴフ?ゴフフフッ!(な、なんだって!)」


 オークは人間語を理解するようで、僕の言葉に驚きまじまじと僕を見ます。店長さんの言う通り、本当に生きているような反応です。


「ゴフ、ゴフフフッ(大丈夫、問題ない)。ゴフフフゴフフッフッ!(可愛ければそれで良い!)」


「ちょっ、このオーク変態!?問題ありまくりでしょうに!」


「「「「「カオルちゃんだから問題なし!」」」」」


 変態オークだけでなく、スタッフと出演者一同もですか!ここには僕の味方は一人もいなかった!


 こうして、スタジオの下見に来ただけの筈がオーク相手に戦闘する羽目になりました。


 ………負けても、成人指定な事になったりしないですよね?

 


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