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僕、驚きました

「これで全員揃いましたね。撮影に入る前に注意事項を説明させて頂きます」


「監督さん、僕のこの状況はスルーですか………」


 夕暮さんに抱かれて頭を撫でられている僕の状況を当然のように受け止め、説明を始めようとする監督さんに突っ込みましたがそれもスルーされてしまいました。

 監督さん、スルースキルのレベル高過ぎませんか?あの作者さんと付き合っていると自然と鍛えられるのでしょうか。


「今回の撮影には、まだ秘匿されている最新技術が惜しみ無く使用されます。契約書にも記載されていましたが、それを口外することは一切禁止させていただきます」


 皆さん既に聞いているようで、誰も異議を挟みません。しかし、異議ではなく質問が男優さんから発せられました。


「監督、ここに居る者で全員と言いましたが、台本のキャストには少ないのでは?複数の役をやれと言うのは契約違反だが?」


「そんな事は言いませんよ。この場に居ないキャラの配役は、既に声優さんに依頼済みです」


 アニメではないのに声優さん?声だけで姿がないとか、透明人間だって設定にでもするのでしょうか。


「それも含めて説明します。岡部さん、準備は如何ですか?」


「いつでもオッケーですよ。エネルギー充填、百二十パーセント!はど………じゃなかった、VRプロジェクター作動!」


 声がした方を見ると、倉庫の隅で数人の男性が機械を操作していました。その前に立っていた店長さんが合図すると、機械の各部に付いているメーターの針が回っていきます。


「ちょっと、何よこれ!」


「ここ、倉庫の中よね?」


 ただ広いだけの、コンクリートが剥き出しの倉庫。つい先ほどまでは、僕達はそんな倉庫の中に居た筈でした。しかし、今は違います。

 周囲には石で造られた家屋が並び、足元は石畳の道となっていました。まるでヨーロッパの古い街に来たようです。


「これが今回の撮影を可能にした技術、VRプロジェクターです。VRゲーム内の世界は、これで再現する事が可能です」


 一度街中の風景が消えると、何処かの建物の中の風景に切り替わりました。正面にはカウンターがあり、横の壁には大きなボードに葉書二枚分程の大きさの紙が大量に貼り付けられています。


「ここは………冒険者ギルドの中ね!」


「そうです。この技術を使う事により、セットを組む必要が無くなりました。よく見れば違和感がありますがVRMMOの中という設定なので、かえってこの方がリアリティーを出せます。そして、人物も出すことが出来るのです」


 先程まで誰も居なかったカウンターに、制服を着た美女が現れました。そういえば、配役が無かったのはNPCでした。映像で出すから配役を決める必要がなかったのですね。


「あれ、それなら何で会議で声優を決めなかったの?」


 長門さんの突っ込みに、監督さんが顔中汗を流して顔を背けました。言われてみればあの時、俳優を決めたのですから声優も決めるべきだったのでは?


「あー、ほら、NPCだけ声優だって話したらバレる可能性があったでしょう。秘密にするために声優さんはこちらで決めました」


 あれは、完全に忘れてましたね。監督さん、嘘が下手すぎます。あれでは小学生すら騙せないでしょう。


「こんな事が出来るのであれば、全員VRにすれば良かったのでは?」


「それじゃあアニメと変わらないでしょ。敢えてアニメにしない事でテレビ局に嫌がらせするのに、それじゃ意味ないって」


 作者さん、その通りなのかもしれないですけど少しはオブラートに包みましょうよ!


「はあ………理由も含め、口外は絶対にしないようお願いします。本来ならこんな用途に使える技術ではないですから」


 監督さんの念押しに、一同頷いて同意しました。作者さんも岡部店長も、監督さんの胃に負担をかけまくっていそうです。


 この映画とDVDが撮り終わるのと、監督さんの胃に穴が開いて倒れるの。どちらが早いでしょうね。


 

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