閑話 僕、再び挑戦します
何気なくジャンル別ランキングを覗いてみたら………
え?何故にこの順位にあるの?前に見たときは五十位辺りにあった筈………
という訳で、十位に入ったお礼の更新です。今年もよろしくお願いいたします。
翌日の一月二日。僕は初詣で出来なかったお参りのリベンジをしようと思いました。
「お父さん、昨日と違う神社に連れていってもらえないかな?出来れば違う祭神様の所に!」
「薫のおねだり、何としても聞き届けなければ!お母さん、昨日の神社が祭ってた神様は誰だっけ?」
お母さんはすぐにスマホで調べてくれました。昨日の神社の神様は、スサノオ様だったそうです。
「ならば、今日はアマテラス様の神社を探して………ここにしようか。薫、穂香、準備しなさい」
お父さんは即座にスマホを使って検索し、出かける準備を始めます。
「お母さん、今日は着物は無しで。穂香が昨日大変そうだったから」
「じゃあ、お姉ちゃんだけでも着物で!」
穂香をだしにして着物を回避しようとしたら、当の穂香からダメ出しをされてしまいました。
「僕だけって浮いちゃうから。だから今日は着物は勘弁して!」
説得が功を奏して、着物は着なくても良くなりました。それは嬉しいのですが、この格好で初詣ってどうなんでしょう?
「お母さん、普通初詣に行くのにゴスロリは着ないと思うよ?」
「あら、初詣に行くのにゴスロリを着てはならないという決まりも無いわよ。薫ちゃんも穂香ちゃんも似合ってるわよ」
着せられたのは、闇夜のように漆黒のドレスでした。年末のビッグサイトならばこんな格好の人も沢山居たのでしょうが、僕達が今から行くのは正月の参拝客で賑わう神社です。
お母さんと穂香に両腕を掴まれ、着替える事も出来ずに車に乗りました。もう服装の事は忘れましょう。
「うわっ、交通規制か。これは計算外だな」
もうすぐ神社という所で、先に進めなくなりました。参拝客か多いため、神社までの道程が封鎖されて車では進めなくなっているのです。
「どうする、この辺りで空いている駐車場を探して歩くか?」
「神社まで、どれくらい歩くの?」
歩く事自体は構わないのですが、問題は服装です。穂香とペアのゴスロリドレス。目立たない訳がありません。
「そうだな………三十分位か」
この姿で、注目を浴びながら三十分歩く。中々の苦行と言えます。折角お父さんが調べてくれた神社ですが、ここは別の所に変更して貰いましょうか。
そう考えていた時、運転席の窓を叩く音が聞こえました。外を見ると、道路を封鎖していた警察官の一人が窓を叩いていました。
「失礼ですが、五菱の大和取締役で合っていますか?」
「そうだが………」
いきなり名を問われて、お父さんも戸惑っています。何故にこのお巡りさんはお父さんの名を知っていたのでしょうか?
「この先の神社に初詣ですか?」
「そのつもりだったのだが、迷っていましてね。ここから歩くのは大変そうだ」
お巡りさんはチラリと後部座席に座る僕と穂花の方を見ました。そして、肩の無線機を取ると交信を始めます。
「こちらキングジョージ五世巡査長です。北大通りに五菱の大和取締役一家が来られました。封鎖線の中にお通しします」
ちょっ、お巡りさんの名前、外国人風?!それ本名なの?何でそんな名前になったのさ!
突っ込みたいけど突っ込めず、声に出さないように努力します。その間に道路を封鎖していたバリケードが一部除かれ、車が通れるスペースが出来ました。
「報告と通達は完了しています。神社に最寄りの駐車場まであのパトカーが先導いたしますので後ろに付いてください」
「これはこれはご丁寧に。キングジョージ五世巡査長のご親切、きっと本部長に伝えましょう」
………そうでした。お父さんはこの県のお巡りさんのトップである県警本部長さんにコネがあるのでした。
パトカーに先導された僕達の車は、警察関係者と思われる人達の車が停まる駐車場に案内されました。
神社はかなり近いようで、露店の客引きの声が聞こえてきます。
うちだけ得をしてしまって後ろめたい気持ちはありますが、そこは割りきってしまいましょう。いざ、昨日は果たせなかった祈願のリベンジです。