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閑話 大和家の初詣

明けましておめでとうございます。


今年もよろしくお願いいたします

「「「「明けまして、おめでとうございます」」」」


 今日は元旦、一年の始まりの日です。家族揃って新年の挨拶をかわし、お節料理に舌鼓を打ちました。


「今年は良い年になるぞ」


「そうね。可愛い娘二人と、思う存分スキンシップをできるのですから」


 僕は息子ですと突っ込みを入れたい所だけれど、ここは沈黙を守ります。去年までは僕が引きこもっていましたから、家族揃って新年を迎えられませんでしたからね。


「さて、初詣は何処に行こうか?」


「定番は氷川神社だけど、あそこは混むのよねぇ」


 うちから車で四十分程の場所に、全国の氷川神社の総元締めの氷川神社があります。出店も沢山出て賑やかだそうなのですが、一つ問題があります。


「あそこは駐車場が混むからなぁ」


「去年は、駐車場に入るのに一時間以上待ったと友達が言ってたわ」


 穂花の証言がだめ押しとなり、氷川神社は却下されました。


「明治神宮とか、川崎大師あたりは?」


「お母さん、その辺りだと電車で行くようだよね?」


 去年芸能界入りなどしてしまった為、下手に電車に乗ると囲まれてしまいます。身動きか取れなくなり、乗り過ごした事も何度か………


「お姉ちゃん、初詣に行ったら何処でも人の波に飲み込まれるわよ?」


「それは諦めてる。だけど、せめてそこに行くまでは平穏を守りたい」


 混雑した境内に入ってしまえば、背の低い僕は埋没して目立たなくなるでしょう。問題はそこに行くまでなのです。

 合議の結果、近くに駐車場があるそこそこ大きな神社に行く事になりました。


 道中はトラブルもなく、一時間足らずで神社の駐車場に到着しました。参道を歩くのですが周囲からの注目を集めまくっています。


「思った通り、二人ともよく似合うわ。着付けを覚えた甲斐があったわ」


 家を出る前、僕と穂香は問答無用て着物に着せ変えられました。


 僕と穂花の少し前を歩くお母さんは、後ろ向きになって僕らを動画撮影しながら歩いています。お父さんはお母さんが他の人にぶつからないよう露払いを務めています。

 普通、そんな迷惑な事をしながら参道を歩けば文句を言われそうなものですが、気付いた人が僕と穂花を見ると道を開けてくれるのです。


「ちょっ、後ろ向きに歩くなんて迷惑な……」


「あれ、あれ見て!あの子凄く可愛いわ」


「………あれは仕方ないわ。私も撮らせて貰おうかしら?」


 道を開けてくれた人達が、お父さんに断りを入れてからスマホで撮影しています。

 一応芸能人だから、肖像権とか引っ掛からないかな?事務所に聞こうにも、お正月でお休みだからなぁ。


「きゃっ!」


「大丈夫か、穂花。ほら、掴まって」


 転びそうな穂花を支えて、転ばないよう腕に捕まらせます。


「お姉ちゃんも着物は初めてよね。何で上手く歩けるの?」


「ネットで見たことがあったからね。歩幅は小さく、足先を内側に向くように歩くんだ」


 ネットの力は偉大です。部屋に居ながらにして、あらゆる知識を吸収出来ます。


 程なくして、僕らは特設されたお賽銭入れの前に着きました。本当ならばもっと時間が掛かる筈なのですが………

 まあ、拘っても仕方ないのでお参りしてしまいましょう。僕は財布から五千円札を取り出します。


 神様、どうか今年は男らしい体型になれますように


 心を込めて祈りを捧げていると、一陣の風が吹いて僕の顔に紙が張り付きました。


「うわっ………これ、僕が入れたお賽銭?」


 顔に張り付いた紙は、僕が投げた筈の五千円札でした。もう一度投げ入れ、祈願のやり直しです。


 神様、どうか今年は男らしい体型になれますように


 再び風が吹き、先ほどと同じように紙が張り付きました。恐る恐る確認すると、間違いなく投げ入れた五千円札です。念のために折っておいた端っこがその証拠です。


「お姉ちゃん、お賽銭返されるなんて何をお願いしたの?」


「男らしい体型になれますようにってお願いしたんだけど………」


「「「それ、無理だから」」」


 穂花と両親に揃って無理だと言われました。神様、そんな事はないですよね?


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