僕、打ち明けました
「ちゃんと自己紹介してなかったわね。私がアトランタのリーダーの時雨よ」
「私は有明。この抱き心地、止められないわ」
「私は夕暮よ。有明、早く代わってよ!」
アトランタの控え室に連行された僕は、有明さんの膝の上でアトランタメンバーの自己紹介を受けています。
「改めまして、カオルです。早速質問なのですが、何故に僕は膝の上に座らされているのでしょう?」
「「「「それがカオルちゃんの定位置だから」」」」
アトランタの三人に加え、長門さんまで声を揃えて返答を頂きました。いつの間にそんな事になったのでしょう。
「えっと、椅子に座らせて貰えると嬉しいかなぁ………」
後ろから有明さんに抱き締められて、両横で時雨さんと有明さんが頭を撫でたり手を握ったりしているというのが僕の現在の状況です。
売れっ子アイドルのお姉さん三人に囲まれたハーレム状態で、彼女らのファンに知られれば恐ろしい事になるでしょう。しかし、僕は一刻も早くこの状態から脱出しなければなりません。
何故かって?僕だって思春期の男なんですよ。背後から当たる柔らかい感触とか、煩悩を抑えるのに四苦八苦しているのです。
「カオルちゃん、私の膝の上は嫌なの?」
「ならば私の膝に!有明、カオルちゃんを私の膝に!」
夕暮さんの膝に移動しても、解決にはならないのです。アトランタの皆様、かなり立派な胸部装甲をお持ちですから。
「有明さんの膝が嫌とかいう訳ではありません。と言うより、気持ち良すぎて困った事に………僕、これでも男ですから」
この状況を打破する為に、性別を明かす事にしました。アトランタの三人が、時を止められたように動かなくなりましたね。
その隙をついて、長門さんが僕を自分の膝の上に移動させました。僕は膝の上から逃れられない運命なのでしょうか。
「は?え?カオルちゃんが男の子?」
「嘘でしょ?私より大きな双球を持ってるのに!」
「私はカオルちゃんが男の娘でも………と言うかむしろご褒美です!」
驚きを隠さないアトランタの三人。夕暮さんだけは予想の斜め上な反応してくれました。要警戒かな。
「あの揉み心地は、シリコンなんかの紛い物じゃないわよね」
「とすると、ホルモン注射?その年でその大きさって、幾つの頃から射ってるのよ?あれって凄く痛いって聞いたわよ?」
「しかも、値段も高いらしいわ。間違っても子供のお小遣いで受けられる治療じゃないわね。だとすると、親が強制した?」
何だか変な方向に推理が迷走しています。このままだとあらぬ疑いを両親にかけられそうなので、こうなった顛末を話しました。
「カオルちゃん、そんな辛い目に………」
「妹さんを守りきったのね。本当に偉いわ」
「まだ子供なのに、自分の居場所を自分で作ろうとするなんて………お婿さんに欲しいくらいだわ。と言うか、お婿さんにならない?」
「それはお断りさせて貰います」
床に膝をつき項垂れる夕暮さん。美人だし悪い人ではないと思うけど、今日会ったばかりで求婚されても「はい」とは言えませんよ。
「夕暮、気持ちはわかるけど焦りすぎよ」
「まずは距離を縮める事からやらないとねぇ………」
呆れ顔の有明さんと時雨さん。どう反応して良いかわからないので、聞こえなかった事にしましょう。
「カオルちゃん、真面目な話アトランタに入るつもりはない?事務所はそのままで大丈夫だから」
「私達、元々は四人組でデビューするはずだったのよ。だけど良いメンバーが見付からなくて、とりあえず三人でデビューしたの。白露としてアトランタに来ない?」
僕の事を知っても誘ってくれるのは嬉しいですが、僕が加わるのはあれこれと問題があると思います。女性三人の中に男が一人だけという時点で大問題です。
「僕は引きこもっていたので、体力もありません。皆さんの足を引っ張るのが目に見えています。なのでお断りさせて頂きます」
三人とも凄く残念そうな顔をしていましたが、こればかりは仕方ないですね。