僕、お持ち帰りされました
「お前ら、デビューしたての新人をかどわかすなや。市中引き回しの上磔獄門にされんで。大体、事務所が違うやろが」
「今は別の事務所の子ともユニット組む時代よ。それに、いざとなれば移籍すれば問題ないわ」
移籍って………僕は武蔵芸能事務所以外に所属するつもりはないのだけど。
「おいおい、注目された新人引き抜くなんて鬼かお前ら!」
「そんな阿漕な真似はしないわよ。私らが武蔵に移籍すれば良いだけの話でしょ」
「お前らの事務所の社長、泣くんちゃうか」
珍しくボケ役のハナさんが突っ込みました。僕もそう思うので、それに対して突っ込みを入れるつもりはありません。
「でも不思議よね。コマーシャル見た時は、可愛いとは思ったけどいかにもなソシャゲーのキャラだったし好感度低かったのよ」
「なのに、実際に会ったら愛でたいというか、撫でたいというか………」
「庇護欲が止まらなくなるのよね」
これは誉められているのでしょうか?だとしてもコメントに困ります。
「ああ、わかるわ。無性に守りたくなるんよな。拐って行って一日中愛でたくなるわ」
「それは勘弁して下さいね。また警察で事情聴取は嫌なので」
「「拐われる事より、その後の事情聴取が嫌なんかい!」」
二組のお笑いコンビの突っ込み役から、同時に突っ込み頂きました。
「いやいや、突っ込む所そこちゃうやろ。カオルちゃん、拐われた経験あるんかい!」
「未遂ですけど。拐われる前に両親が阻止してくれました」
またもやボケ役のハナさんからの突っ込みです。ハナさん、ボケも突っ込みも出来るんですね。
「ご両親、ファインプレーね。カオルちゃんが何処の誰とも知れぬ変態に汚されるなら、いっそ私が………」
「今は防犯グッズ持ってますよ。拐われるような事はないですから、正気に戻ってくださいね?!」
背後から頭を撫でていたお姉さんが抱きしめる形に移行してきました。前に回した手で揉むのは止めて欲しいです。これ、放送出来るのでしょうか?カットしてくれますよね?
「時雨が何かヤバそうだし、そろそろ時間なんで今週はこれで仕舞やな。カオルちゃん、お持ち帰りされんように………って無理か。成仏するんやで」
「サスケさん、諦めないで助けて下さい!ハナさん、合掌してないで助けて!」
このまま収録が終わったら、僕はどうすれば良いのでしょうか?まさかこのままアトランタの新メンバーにってならないですよね?
「さて、アトランタは四人組となるのか?時雨達は未成年略取で御用となるのか?結果は来週の放送で!」
「お仕事終わりよ。タップリと愛でるわよー!」
な、何だか収録終わったみたいですけど、これで良いのでしょうか?
「カオルちゃんお疲れ様。アトランタも収録終わったし離してもええんやで?」
「もう少しこのままで。と言うより、ずっとこのままで。抱き心地も揉み心地も最高なんだもん」
収録終わったからか、揉む手つきが大胆になってます。本気で止めて欲しいのですが………
「羨ま………公衆の面前でんな事すんなや!」
「じゃあ、公衆の居ない所でやりましょう」
そのまま僕を抱き上げようとする時雨さん。しかし、横合いから伸びた手が僕を抱き上げる。
「この胸は私のものなので。悪しからず」
「いやいや、長門さんのものでもないからね?」
僕の胸はいつから長門さんのものになったのですか!ついでに、穂香のものでもお母さんのものでもないですからね!
「カオルちゃんのマネージャーさん?ちよっと控え室でお話でも」
「O.HA.NA.SHIの必要がありそうね。受けて立つわよ」
僕の意思を聞く事なく、アトランタの控え室に行く事が決定したようです。
果たして、僕はこのテレビ局から無事に帰る事が出来るのでしょうか?