僕、勧誘されました
「さて、どんな人が来たのやら……って、カオルちゃん!?」
「もう一人のゲストは、俺達とデュアルワールドの宣伝に出たカオルちゃんです!」
ハナさんは硬直してしまったけど、サスケさんはすぐに持ち直して紹介してくれました。
「サスケさん、ハナさん、お久しぶりです。ゲストに呼ばれましたカオルです」
二人の所に行き、自己紹介するとワンテンポ遅れて拍手がおこりました。
「カオルちゃん殆どのオファー断ってると聞いたのに、よく呼べたなプロデューサー!」
「ギャラの安い、こんな番組にカオルちゃんを呼んだプロデューサーは後で絞めましょう。取り敢えず空いている席にどうぞ」
僕でも知っている芸能人が並ぶ席の中に、一つだけ空いている席がありました。一番端の目立たない席で、新人の僕には分相応な場所です。
「カオルちゃん、そんな端っこじゃなくこっちに座りや。今こいつどけるよって」
「あっ、酷っ!俺の代わりにお前が行けや。そうすれば可愛子ちゃんの隣に座れるわ!」
二人組のお笑い芸人のネルソンさんが掛け合いを始めました。僕は何処に座れば良いのでしょう?
「狼の隣に子羊ちゃんを座らせるわけないでしょ!カオルちゃん、椅子移動させたからここに座りなさい」
ネルソンさんが牽制しあっている隙をついて、女性三人組のアイドルのアトランタが椅子をアトランタの前に移動させてました。
「えっ、皆さんの前に座る訳には………」
「いいからいいから。カオルちゃん小柄だから、前に座ってても問題ないわ!」
先輩の前に新人が座るなんて、言語道断です。でも、その先輩の指示なので従った方が良いでしょうか?少し迷ってサスケハナ
さんの方を見ました。
「あー、うん。問題ないからそこに座って下さい」
「CMで共演した仲だし、こっちに来て欲しいけど俺ら一応司会者だからなぁ。ネルソン、今回だけ代わらへん?」
「「断る」」
ネルソンの二人に速攻で断られたハナさんは、手を床について項垂れました。
「阿呆は放置して、進めよか。カオルちゃんはテレビ出演まだ二回目なんだよね」
「はい。この間別の局にお邪魔したのが初めてでした。今日は有名人の皆さんに囲まれて緊張してます」
前回は司会者の人と一対一だったし、司会者さんは芸能人というよりもサラリーマンみたいな感じでした。だからまだ緊張していませんでした。
だけど、今日は違います。サスケハナのお二人は今が旬のお笑い芸人だし、雛壇に並ぶ人達もよくテレビで見る顔ばかりです。
「カオルちゃん、緊張せんでええよ。そいつらはカボチャか苦瓜とでも思っといてな」
「おいこら、誰がカボチャやねん!」
サスケハナのお二人とネルソンのお二人の掛け合いを中心にトークが進みます。でも、だからと言って気は抜けません。ちょくちょく僕にも話を振られるのです。
「お前らは、デビュー当時から生意気やったろう。少しはカオルちゃんの初々しさを見習えっちゅうねん」
「その言葉、そのまま返したるわ!………って、おいこらアトランタ、なにカオルちゃん独り占め、じゃなかった三人占めしとんねん!」
サスケさんが突っ込んだ僕の状況ですが、左右と後ろをアトランタの御姉様方に囲まれ左右から手を握られ後ろから髪を撫でられています。
収録中に良いのかと突っ込みたくなりますが、初対面の先輩相手にそれは不味いでしょう。
収録中なので止めてとも言えず、振り払う事も出来ず。大体、別に嫌な訳ではないので、なすがままにされています。
美人な御姉様三人に囲まれて構われているこの状況、ネットの友人達が知ったら替わってくれと血の涙を流すでしょうね。
「お前らなぁ、仕事中って自覚ないんかい!」
「そっちは任せたわ。私達はカオルちゃんを堪能する事に全力を使うから」
「カオルちゃん、可愛いってだけじゃなく庇護欲を誘うのよね」
「撫で心地良くて………止められない止まらない状態なのよ。ねえカオルちゃん、私達のユニットに入らない?」
こういう時、どう反応するのが正解なのでしょうか?誰か教えて下さい。切実にお願いします。
「ゴルァ!堂々と未成年略取しようとすんなや!お巡りさん、こいつらです!」
何だか随分とグダグダですが、これで良いのでしょうか?テレビ番組の収録って、こういう物なの?