表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

53/113

僕、踊りました

「カオルちゃん、動きやすい服装をとは言ったけどそれは色気がなさ過ぎるわよ」


「長門さん、ダンスのレッスンに何を期待してるのですか?それに、僕は男です。色気なんてありません」


 今日は一日ダンスのレッスンをする事になっています。なので、予約を入れたダンススタジオでジャージに着替えて講師の方を待っています。


「カオルちゃん、寝言は寝てから言うものよ。ジャージの上からでも強烈な存在感を主張する、この霊峰に色気がないと言うのかしら?」


「ちょっ、わかりました!わかりましたから、揉むのは止めて下さい!」


 下から掬い上げるように、両手で揉まれると変な気分になってしまいます。


「えっと、私も参加したいのだけど片方譲ってくれないかしら?」


「ダメです。カオルちゃんの胸は両方私の物なのです」


「これ、長門さんの物じゃないからね?僕の物ですよ。いらないけど」


 最後の一言を聞いた長門さんと乱入者の女性から、冷たい視線を投げ掛けられました。男の僕には不要な物なのだから仕方ないでしょう。


 乱入した女性は金髪碧眼で、整った顔立ちはエルフを彷彿とさせます。胸部装甲の厚さも、テンプレなエルフに似ていました。


「カオルちゃん、この人が今日の講師のリシリューさんよ」


「はじめまして。ダンスの講師をしているリシリューです。一時間でいいから揉ませてもらえないかしら?」


「「お断りします」」


 大きいとはいえ、男の胸ですよ?こんなの揉んで楽しいのでしょうか。僕には理解出来ません。


「残念ですが、また後でお願いします。カオルちゃんはダンスを習った経験はありますか?」


「いえ、ありません。初めてです」


 引きこもっていたので、ダンスを習う機会などありませんでした。ネットの動画では色々なダンスを見てはいましたが、それだけなので言う必要はないでしょう。


「では基本からいきましょう。ダンスには、体の柔らかさが重要になります。動かない体で無理をすると怪我をしますからね。私の真似をしてみて下さいね」


 リシリューさんが両手を床につけたので、僕も同様に手を床につけました。続いて両手を背中で合わせたり、爪先を頭まで上げたりしましたが全て同じ動作をこなせました。


「カオルちゃん、随分柔らかいわね。かなりのトレーニングをしたでしょう?」


「友人(掲示板仲間)に勧められてやりました。何をやるにしても柔軟は役にたつからと」


 時間はいくらでもあったので、柔軟しながらネット小説を読んだり動画見てたりしていました。その成果が出たようです。


「では次にいきましょう。実際に踊ってもらいます。踊れる物はありますか?」


「踊りと言えるかは微妙ですけど、やりますか?」


「どれくらい体が動くのかの確認なので、どんな物でも構いません」


 体が動くのかの確認とはいえ、今僕ができる全力を出しましょう。目を閉じて、動画で見た動きを思い出します。

 足の運び、体幹の移動、腕の動きを制御して、爪先から指先まで無駄のない動きを意識します。


「………こんなところです。リシリューさん、長門さん、どうかしましたか?」


 踊りを終えると、二人は呆けていて反応を返してくれませんでした。暫し待つと、リシリューさんが再起動しました。


「カオルちゃん、ダンス習ったこと無いって言ったわよね?」


「はい。あれは以前に見た動画を真似しただけですから。習った事はありませんよ」


 真似をしたのは剣舞で、本当は両手に剣を持って踊ります。今回は持っていないので、手刀で演じました。


「本当は剣舞なので双剣を使うのですが………無いですよね?」


「双剣を備品として置いてあるダンススタジオなんて、日本には無いと思うわよ?」


 でしょうね。僕もそう思います。だから素手で演じたのです。


「カオルちゃん、踊れる事もわかりましたし、レベルも高そうですけど………この後はどうします?」


 困った顔で長門さんを見るリシリューさん。どうやら、今日やる予定日だった内容は終わってしまったようでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ