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僕、説得しました

「長門さん、ありがとうございました」


「いい、カオルちゃん。くれぐれも一人で出歩いたらダメよ!」


 送ってくれた長門さんと別れる際、何度も一人で歩かないよう念押しされました。あれは僕を心配してなのか、事務所に戻るまでの時間を稼ぐためなのか。

 前者だと思いたいのですが、後者の可能性を否定出来ません。僕の精神衛生の為に、前者だと思っておきましょう。


 鍵を開けて家に入ると、ガタガタと音がします。穂香が帰るにはまだ早い時間ですから、お父さんかお母さんでしょう。


「ただいま………お父さん、何をやってるの?」


「薫、お帰り。ちょっと野暮用があってな。それに使う物を準備している」


 艶消しの黒に塗装された筒状の金属は、ライフルのように見えます。


「お父さん、近接用の武器はこれで良いかしら?あら、薫ちゃんお帰りなさい」


 リビングに入ってきたお母さんの手には、金属でできたソフトクリームのコーンのような物が握られています。


「お父さん、お母さん。その手に持っているのは何でしょうか。物騒な物のような気がしてならないのだけど………」


「これは重力子を圧縮して打ち出すだけの代物だぞ」


「これは光子を物理的干渉が出来るまで圧縮する機械よ。綺麗だからお気に入りなのよ」


 お母さんがコーンの底にあるスイッチを押すと、光の棒が伸びました。黒い鎧着たお父さんと、反乱軍に身を寄せた息子の親子喧嘩な物語に出てくるアレですね。


「そんな物をどこから!って、岡部さんのお店しかないか………」


 もう入手してしまった物は諦めるとして、それを持ってどこに行こうと言うのでしょうか?


「それで、そんなアイテム(兵器)を持って何処に行くの?」


「ああ、大事な宝物(薫)に手を出そうとした愚か者が居るようなのでな。ちょっとお話(戦争)に行く必要があるのさ」


「ちょっと、副音声!そんな事したら、警察に捕まっちゃうから!」


 この様子だと相手の命が残る可能性は消費税が撤廃されるより少なそうです。どう説得しようかと頭を痛めていると、呼び鈴が鳴りました。来客のようです。


「誰か来たから、その物騒な物を仕舞って!僕が出るから!」


「薫ちゃんは出たらダメよ。拐われてしまうかもしれないじゃない」


 重力子の銃と光子力の剣で忘れていましたが、僕は迂闊に対応出来ないのでした。お母さんに言われた通り、僕はリビングに待機してお母さんが玄関に向かいました。


「どうも、A警察の那珂です」


 来たのは警察の人のようです。良いタイミングで来てくれました。お父さんとお母さんを説得してもらいましょう。


「うちの署からは二百程が参加しますので、ターゲットを取り逃がす恐れは無いと思われます。何時でも作戦を開始出来ますよ」


「警察も参加するんかい!」


 おとなしい、病弱なキャラクターという設定を忘れて突っ込んだ僕は悪くないと思います。助けが入ったと思ったら共犯だったという、この状況に突っ込まない人はいないでしょう。


「おおっ、カオルちゃんを生で見られるとはなんたる僥倖。カオルちゃんに言い寄るような不届き者は、この世から消し去りますのでご安心を」


「安心出来ないから!ライン聞かれて、食事に誘われただけで抹殺とか恐すぎるから!」


 大事に思ってくれるのはありがたいと思います。しかし、限度という物を考えて欲しいと望むのは贅沢でしょうか?


「芸能人続けたら、こんな事はしょっちゅうですから!その度に消していたら、芸能界は深刻な人手不足に陥りますから!」


 女性は心配ないですし男性も変態紳士(ロリコン)は少ないでしょうから、実際はそんな事にはならないでしょう。

 しかし、彼らを説得するには誇大広告も辞さない覚悟です。JAR○さん、今回だけは見逃して下さい。


 その後、二時間に渡る説得と僕の巫女姿の生写真という代償にて司会者さん襲撃計画を阻止する事が出来ました。


 これからもこんな事が起こるのでしょうか。芸能界、入ったのは間違いだったかなぁ………

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