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僕、現実を見ました

 事務所は電話対応で忙しいのと、僕の方向性が決まり色々な訓練に手を出す必要もなくなったので今日はオフになりました。


「長門君、カオルちゃんを送ったらすぐに帰って来るのだよ?」


「善処はします。しかし、渋滞や工事等で時間が掛かるのは不可抗力ですから」


 早く戻して電話対応をさせたい社長に対し、それをやりたくない長門さんは戻るまでの時間を伸ばす戦術に出ています。


「長門さん、僕は電車で帰っても……」


「「それはダメ!」」


 時間を稼ぎたい長門さんだけではなく、社長さんからもダメ出しを食らってしまいました。


「今注目の的のカオルちゃんが、電車になんか乗ってご覧なさい、すぐに囲まれて身動き取れなくなるわよ」


「変装しても、その胸ですぐにバレるしな。大人しく長門君に送られなさい」


 芸能人としての自覚が足りないと、お説教されてしまいました。お二人とも、僕に説教してる暇があったら電話対応しないといけないのでは?



「それではカオルちゃんを送ってきます。一緒に昼食をとる位は構わないですよね?」


「くっ、カオル君にちゃんと食べさせるのだぞ。送ったら素早く帰るように!」


 昼食の権利を勝ち取り、上機嫌な長門さんの車で寄ったのは時間内食べ放題の焼肉屋チェーン店でした。


「さあ、カオルちゃん。時間が許す限り食べるわよ」


「長門さん、時間稼ぎする気満々ですね」


 とは言ったものの、長門さんが会社員ならぱ昼休みを一時間とるのは普通でしょう。事務所の惨状を考えなければの話ですけどね。


「いらっしゃいませ、二名様でよろ……」


 定番の接客文句を言い掛けた店員さんの声が止まりました。見事に凝視されてます。


「大人一人と中学生一人で。席をお願いできますか?」


「は、はい、失礼しました」


 長門さんが出した五千円札を受け取り、お釣りを返す店員さん。作業をしながらも僕の方をチラチラと見ています。


「こちらのお席にどうぞ」


 席に案内される途中でも、周囲のお客さんからチラ見されてますね。以前ショッピングモールに行った時も見られましたが、その時よりも視線を集めているような気がします。


「変装もしてないし、矢張り注目されるわね。カオルちゃんは出歩かない方が良いわ。食べたい物とかあるかしら?」


「何があるか知らないので、長門さんに任せます。好き嫌いはありませんから」


 長門さんがお肉を取りに行っている間に、スマホでネットをチェックします。まずはいつも見ている巨大掲示板、1.41421356

チャンネルからです。


 生放送の影響がもう出ていて、あの司会者さんがかなり叩かれていました。どうやら、昼食を誘った上ラインを聞いてきたのをスタッフの誰かがリークしたみたいです。


「カオルちゃんお待たせ。掲示板かしら?」


「はい、司会者さんが叩かれてます。過剰な気がしますが……」


 手を出された訳ではないし、軽いお誘いだけでしたから、ここまで叩かなくてもという気がします。


「これは抜け駆けするなという嫉妬も含まれてるわね。カオルちゃんが気にする必要はないわよ」


 お寿司とおうどんをいただきながら話します。焼肉屋さんでお寿司とはこれいかに。


「ここは焼肉以外にも色々とあるから。これもう焼けたわよ」


 このチェーン店、焼肉の他にお寿司やうどん、スパゲッティーに揚げ物と豊富なメニューが食べ放題です。フルーツやケーキにアイスもあり、どれを食べようか迷います。


「病弱設定も広がってるわね。だから見るだけで寄ってこないのかしら」


「それはそれで助かりますけど、騙しているようで落ち着かないですね」


 しっかりと時間一杯まで使い、デザートまで堪能して店を出ました。その間ずっと注目されて、気分は動物園の珍獣です。


「僕、これからずっと注目されるのかな。芸能界入り、早まったかも……」


「カオルちゃん、その容姿なんだから芸能界入りしなくても同じよ。諦めなさい」


 長門さん、少しは現実から目を背けてもバチは当たらないと思いませんか?

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