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僕、属性が決まりました

 初出演を終えて事務所に帰ると、事務所中の電話が鳴り響いていました。前にもこんな風景を見たような覚えがあります。


「長門さん、こんな風景、どこかで見たことあるような気がしませんか?」


「そうね。カオルちゃん、少し早いけどお昼ご飯食べに行きましょうか」


 長門さんと二人で踵を返しましたが、背後から長門さんの肩を掴む手に阻まれました。


「長門君、どこに行こうというのかね?」


「カオルちゃんとお昼ですよ。タレントの健康管理もマネージャーの仕事ですから。食事抜きは健康に良くないですからね。カオルちゃんは食べ盛りですし、まだまだ大きくなりますから」


 基本的に長門さんの言葉には賛成ですが、二人の視線がある場所に集中しているのは何故でしょう?


「まだまだ、大きくなるのか。どれだけの破壊力になるのか想像もつかないな」


「全くです。少し分けて欲しいですよ」


「そこは大きくならなくても良い場所ですよ!そして長門さん、分ける方法なんてないから無理ですからね!」


 大きくなって欲しくない胸は大きくなるのに、大きくなって欲しい身長は大きくなりません。世の中ままならないものです。


「冗談はともかく、初出演ご苦労様でした。見ての通り、反響はかなりあったよ。社長室で話そうか」


 変な事は話していないし、僕としては及第点のできだと思うのですが。あれを見た世間様の反応はどうだったのでしょう。


「今のところ届いた声だと、カオルちゃんへの悪い意見は皆無だ。同情の声や励ましの声が大多数で、後は婚約の申し込みも数件来ていたよ」


 ちょっ、その最後の奴は要りませんよ!全て丁重にお断りして欲しいです!


「そして、うちの事務所を批難する声も来ている」


「事務所を非難ですか?カオルちゃんは事務所について何も言っていませんでしたよね?」


 精々、コマーシャルの為にスカウトされたとしか言っていなかった筈です。それのどこに非難する要素があるのでしょうか?


「病弱なカオルちゃんを過酷な芸能界に引きずり込むなんて、悪魔の所業だそうだ。儚く可憐なカオルちゃんに無理をさせるなとさ」


 社長は苦笑いしながら説明してくれました。僕が儚く可憐?どこをどうしたらそんなイメージになるのでしょうか?


「カオル君は評価に納得していないみたいだな。本人だからわからないのか。録画した動画を見るかい?」


 社長さんのタブレットで、僕が出た番組を再生して貰いました。画面で見ると、ゆっくりと話す僕はどこか危うげで儚く見えます。


「これ、発言する内容を考えながら話していたからゆっくりになっただけなんですよ。傍目だとこんな印象になるんですね」


「これに体の問題で高校に行かないという話が加わるからね。カオルちゃんは病弱なのに、うちが無理を言って芸能界に引き込んだ事になってるよ」


 司会者さんと同じ誤解を、世間の皆様もしていると。そして、そんなに病弱な僕を芸能界なんて過酷な世界に入れた社長や事務所が叩かれてるということですか。


「ご迷惑をお掛けしてすいません。どうにかしてその誤解を解かなければいけないですね」


「いや、態々と解く必要はないよ。カオルちゃんの仕事量を制限する理由になるし、ごり押ししてくるテレビ局は非難されるから自重するだろうからね」


 非難の声を薄めるために僕に注目を集めたいのに、僕を出す事で非難されたら本末転倒です。


「カオルちゃん、そこまで計算して……恐ろしい娘!」


「長門さん、そんな事ないですから!全部成り行きの偶然ですから!」


 兎に角乗り切ろうと思い取った行動が、予想を越えて良い効果になってくれました。これでキャラを作る時間を稼げるかな?


「これでカオルちゃんの路線も決まったな」


「そうですね。儚く可憐な合法ロリ巨乳男の娘。属性山盛りですね」


 ああ、あの放送で僕はそう世間に認知されてしまったのですね。ちょっと勘弁して欲しい設定です。


「僕は、ずっと儚げなキャラを演じないといけないんですか?」


「「カオルちゃん、ガンバ!」」


 そうなってしまった物は仕方ないです。今からそれを覆すのは難しそうですから。でも、家族は何と言うでしょう……

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