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僕、進む道を決めました

 撮影から帰ると、家族が揃って出迎えてくれました。嬉しいんだけど、会社と学校はどうしたの!


「今日は授業が少ない日だったから、寄り道しないで帰ってきた!」


 穂香は問題無さそうです。両親は、まだ仕事が終わる時間ではない筈だけど………


「薫、今の時代ネットでどこに居ても仕事が出来るんだぞ。薫が家に居ながら株式投資をやったようにな」


「それはそうだけど、お父さんの場合書類に印鑑押したりとかの仕事が多いんじゃないの?」


 会社の重役というと、立派な個室で書類に印鑑を押しているイメージがあります。それは家では出来ないのではないでしょうか。


「心配ないわ。そういう書類は、後で部下が取りに来る手はずになっているから」


「僕は今、お父さんとお母さんの部下に心から同情したよ!」


 東京の会社から埼玉のこの家まで、書類を持ってくるだけの仕事。楽と言えば楽な仕事なのでしょう。でも、それをする理由が両親の我儘というのがなぁ。


「それで、撮影はどんな感じだったのかな?」


 お父さんにせがまれ、撮影の時の話をしました。と言っても、僕はただ巫女服を着て呼ばれたらセリフを一言言い走るだけでしたが。


 その後はくっつく両親に仕事をするように促し、引き剥がした両親に代わって抱きついてきた穂香の相手をしました。訪れた両親の部下の人を労うと、遠い目で乾いた笑いを漏らしたのが印象的でした。


 翌日、迎えに来た長門さんと事務所に向かいました。これからの活動の打ち合わせということです。社長室の応接セットで、武蔵社長と向かい合います。


「まずは初仕事ご苦労様でした。クライアントは大喜びで、追加で仕事を頼みたいと打診して来ました。カオル君のカードを増やしたいとのことです。受けても構いませんか?」


「カードの増加だけならば、僕は撮影の必要とかはないですよね。仕事は会社で判断して受けてもらって構わないですよ」


 まだ一つだけしか仕事を受けていない新人が、仕事を選ぶなんて出来ないしね。仕事が来るだけ有り難いと思わないと。


「いや、リアルを追求したいから、カオル君に衣装を着て撮影させて欲しいとの事だ。特に演技等は必要ないし、受けると返事をしましょう。それと今後だが、カオル君はどの方向に行きたいかね?」


 芸能界に入って、どんな活動をするのか。それにより今後のレッスンや営業が変わります。モデルをやるのか、俳優を目指すのか、アイドルを目指すのか。


「モデルは、カオルちゃんの特殊性を考えると難しいわね。男性誌に売り込むのか、女性誌に売り込むのかもわからないわ」


 男ではあるけれど、この容姿なので女性誌向けのモデルを目指す事になりそうです。しかし、この身長とこの胸では着られる服にはかなり制限がつきそうです。


「モデルは無理だな。俳優も、出られる物が少ないだろう」


「ロリ巨乳の男の娘が出るドラマなんて、探す方が難しいでしょうね。それが女の子でも変わらないでしょうし」


「結局、選択肢はアイドル方向しかないという事ですね」


 選ぶ余地などなく、僕が進む道はアイドルしかないようです。でも、僕にそれが務まるでしょうか。


「レッスンは歌とダンス、演技も入れておくか?」


「最近のアイドルは、ドラマへの出演も増えてますからね。入れておいて損は無いでしょう。あと、メイクも指導しないと。家でのケアもありますから」


 当人である僕をそっちのけで、僕の予定が組まれていきます。まあ、僕には芸能人として何が必要かなんてわからないので、プロである二人に任せるのが正解でしょう。


「よし、これで大枠は決まったな。長門君、明日から頼むぞ。それと薫君、例のCMは明日から流れるから」


「明日からって、随分と早いですね」


 昨日撮影して明日放映って、いくら何でも早すぎるでしょう。作成スタッフの人、無理したんじゃないのかな?


「元々の予定が、明日からだったんだ。例の件で流すのが遅れる見込みだったのが、薫君のお陰で予定を崩さずに済んだんだよ」


「それでですか。しかし、心の準備をする間も無く放送ですか……」


 僕のカードが使われるけど、実際に僕が出るのは少しだけ。だから何も変わらない。そう思う事で現実逃避した僕は、二日後に考えの甘さを思い知るのでした。




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