閑話 サスケハナのCM撮影
少々長いです。
「はい、大丈夫です。では、明後日撮影ということで」
事務所で移動の準備中、マネージャーの携帯に電話が入った。明後日撮影と言っていたから、急に仕事が入ったのだろう。久々の一日休みと喜んでいたが、仕事なら仕方ない。
「マネージャー、飛び入りの仕事かい?」
「飛び入りと言うより、延期になっていた仕事だな。サスケが楽しみにしてるゲームのCMだよ」
相棒のサスケは、重度のゲーマーだ。今度正式にリリースされるソーシャルゲームのCMの話が出た時は、一も二もなく飛び付いてマネージャーに説教をされていた。
「降ろされた子の代役、漸く決まったんだ。いきなり延期になったから驚いたよなぁ」
「ああ、でもあれは仕方ないだろう。降ろされた子が可哀想だけどな」
子供に非がないのに、親の不祥事で子が降ろされたんだからな。だが、軽傷で済んだとはいえ刃傷沙汰を両親が起こした子役なんて、企業イメージを考えたら使える訳がない。
可哀想ではあるが、仕事を干されるなんて芸能界では日常茶飯事。俺達だって今は仕事があるが、いつ無くなるかなんて誰にもわからない。他人事ではないのだ。
「次の子は巨乳ならいいなぁ。前の子はそんなに大きくなかったからなぁ」
「無茶言うなよ。小学生高学年辺りなんて、やっと膨らみかけた程度だろ。ロリ巨乳なんて、二次元にしか存在しないって」
戯言を言う相方をばっさりと切って、移動を開始する。俺達の仕事が無くなるとしたら、こいつが青少年保護条例に違反して逮捕されるからかもしれない。
「頼むから逮捕されるような事はしないでくれよ?」
「Yesロリータ、Noタッチ!その辺は弁えてるって」
何だかんだ言っても子役に手を付けた事はないし、根っからの二次コンだから心配ないか。その時はそう思ったのだが、二日後に覆される事になる。
「監督、リハーサルしなくていいの?」
「リハーサルするような難しい内容じゃないし、問題ないだろう?カオルちゃんのカードや本人を見た時の、自然な行動を撮りたいんだ」
代役の子はカオルという子らしい。今回撮るCMは単純な内容だし、監督の言う通りリハーサルは無くても支障はないだろう。最悪、撮り直せば済む話だ。
「では始めます。………スタート!」
屋外のベンチに二人で並んで座る。サスケはスマホでソーシャルゲームをしているふり。
「サスケ、コスプレイベントに来たのにゲームかよ」
「女の子は二次こそ至高。現実にはロリ巨乳な可愛い子なんて居ないだろう?おっ、シークレットレアがキター!」
サスケのスマホには、スタッフから子役の子の画像が転送されて来た筈。CMではカードの画像が流れるシーンだな。あれ、サスケが「この子スッゲー可愛い!」って言うんだろ?仕方ない、フォローするか。
「サスケ、なに固まってるんだよ。どんなカード引いたんだ?」
サスケのスマホを覗くと、ちょっと胸元が開いた巫女服の少女が恥ずかしげにはにかんでいた。盛り上がった小山に目が吸い寄せられる。
「はい、カット!二人とも良いリアクションだったよ」
はっ、そうだ、今は仕事の最中だった。流石は期待のソーシャルゲーム、カードのクオリティが半端ない。
「監督、このカードは凄く可愛いけど子役の子とのギャップが激しくなりませんか?」
もう一本の内容は、カードによく似た子に俺達が驚くって内容だ。カードとの差が激しかったら成り立たない。
「その辺は大丈夫だろう、向こう(クライアント)もそんな事は承知してるからな。じゃあカオルちゃんを呼んで次の撮影に入るぞ」
次の撮影と言っても、特に準備する事などない。カチンコが鳴り撮影が再開される。
「カードの子が可愛いのは認めるが、折角来たんだし見に行かないか?」
「見に行ったって、この子みたいな子は居ないだろう?」
画面では、ここで先程のシークレットレアのカードが映される。
「そりゃあ、そんな子二次元の世界にしかいないだろ」
そう俺が答えた所で子役の登場だ。女性のスタッフが呼んで、子役の子が走って目の前を通り過ぎるんだよな。
「カオルちゃん、こっちこっち」
「ちょっ、待ってよ!この格好恥ずかしい!」
子役が走ってくる方向に目を向けた俺達は、その子から目を離せなかった。
中学生くらいの可愛い子が、恥ずかしさからか少し顔を赤らめて走ってくる。その顔はカードの絵と変わらない。と言うか、カードよりも可愛い。
大胆に改造された巫女服はカードの絵そのままで、豊かな膨らみがプルンプルンと揺れている。あれは決して上げ底なんかじゃない、天然物の揺れ方だ。
「「………嘘だろ?」」
仕事中という事も頭から抜けた俺達は、そう言うのがやっとだった。