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僕、引きこもりになっていました

人が怖くなった僕は、両親と会うのも苦しくなり部屋から出なくなりました。

食事はお母さんが部屋の前に置いてくれて、トイレは誰もいない昼間や深夜に済ませます。

お風呂も昼間に無人になったのを確認して入りました。

その時に鏡を見なかったのかって?太った自分が嫌いだったから、見ないようにしてましたよ。


両親はそんな僕を目捨てる事もせず、辛抱強く待っていてくれました。


僕だって馬鹿じゃありません。いつか外に出られるように、インターネットを使って色々な事を学びました。

慰謝料が沢山入ったと聞きましたが、両親に何かをしたくてお金も稼ぎました。


太っている事でまた虐められないように、ネットで見た体の各所を引き締める体操をしてダイエットも敢行。体重はかなり減りました。


暴力を振るわれても反撃出来るよう、武術も練習しました。対戦はしたことが無いので、どれだけ使えるかは未知数な所が悩みの種ですが、相手がいないので確認も出来ません。


散髪だけはどうにもならないから、長くなった髪は後ろに回して紐で括る事に。自分で切ろうとしたら、鏡を見ないといけないからね。


そんなこんなでニートと言われないようにお金を稼ぎ、太った体を鍛えて、座禅を組んで精神も鍛えて外に出る日を目指して努力を重ねました。


そして今日、勇気を振り絞って両親や穂香がいる時間に部屋を出るという大冒険を決行したのです。


その結果が、妹と両親に息子だと認識されないという笑えない結果でした。


まあ、鏡で見たあの姿でわかれと言う方が無体な話だし、それはいいのだけど。


お母さんも穂香も、僕の一点を親の仇のように睨むのは止めて欲しいと思うのは贅沢でしょうか?


「改めてお兄ちゃんから話を聞いて、お兄ちゃんが悪くないというのは判ったわ。私の為に虐めを耐えてくれたのは感謝しかないわ。だけど、私よりも胸が大きいのが納得出来ないわ!」


「僕だって、好きで大きな胸になった訳じゃないよ。男なのにこんな胸じゃ、虐めの原因になるじゃないか!」


「いらないのなら、私に頂戴!喜んで貰うわよ!」


いや、頂戴と言われても、あげる方法がないからね。僕だって要らないから、あげられるならあげたいけど。


「穂香ちゃん、順序から言えばお母さんが貰うべきだと思うわよ。穂香ちゃんは、まだ大きくなる余地があるのだから」


「いやお前、胸論議の前に話し合う事があるだろうに」


お父さん、今はあなただけが頼りです。


「薫、お前はこれからどうしたいんだ?義務教育はあと一年残ってはいるが、行きたくないなら行く必要はない」


「えっ、お父さん、義務教育って受ける義務があるんじゃないの?」


胸を譲られる権利を巡って論争していた穂香が会話に入って来ました。


「穂香、親には義務教育を受けさせる義務があるけど、僕達には受けなくちゃいけない義務はないんだよ」


誤解している人は多いけど、義務が生じるのは保護者だけで子供には義務は発生しない。


「薫、よく知っていたな」


「ネットで色々と勉強したから」


役に立つか立たないかは別として、色んな事を覚える事が出来ました。


「正直、薫は働く必要がない程に稼いでしまったわけだが。父さん、落ち込みそうだぞ。三年で父さんの生涯賃金超える額を稼がれたからな」


「お兄ちゃん、一体何をやったらそんなに稼げるのよ!」


貯まっていたお小遣いを使っての投資が主なんだけどね。運が良かったということかな。


「外見の変化で怖さがぶっ飛んだけど、三年も人に会っていなかったからね。少しづつ人に慣れていくよ」


将来の事よりも、まずは外に出られるようになるのが優先だと思う。


「何はともあれ、薫が出てきてくれて嬉しいわ。薫、おめでとう!」


こうして、僕の大冒険は終わった。予想外の事態で驚いたけど、僕は一歩目を踏み出した。


「あっ、薫ちゃん。胸を大きくする方法、ちゃんと教えてね」


「お母さん、最後に台無しだよ!」


変な意味での不安が胸を占拠しているような気がします。僕は外に出るのが早すぎたのでしょうか?

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