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閑話 その頃の警察では

薫と長門が面接を行っていた頃、A警察署の署長は埼玉県警に呼び出されていた。


「前にも言ったが、くれぐれも大和家への配慮を怠らぬように頼む」


「はっ、それはもう遺漏なく万全の体制で臨みます」


埼玉県警の本部長は、念には念を入れA警察署の署長を呼び出しだめ押しをしていた。


「しかし本部長、なぜあそこまで大和夫妻に気を使うのですか?」


大企業の重役とはいえ、埼玉県の全警察を束ねる本部長がそこまで気を使う理由がわからず署長は質問した。


「交通課の使う速度測定器や、鑑識の特殊機材の納入とメンテは五菱だぞ。しかも、彼ら夫妻が担当重役だ」


「それは承知していますが、何か言ってくるようならば業者を替えれば済む話なのでは?」


県警本部長ともあろうお方がおもねるのが気に入らない署長は、尚も質問を重ねた。それに対し、本部長はため息を吐いた後に答えた。


「機械なんて物は、早々壊れない。だからメンテナンスの契約料金なんて安くなる。だから引き受けてくれる業者なんてほぼいないんだよ」


殆ど壊れないから料金は安いが、壊れた場合は二十四時間三百六十五日即応を要求される。そんな赤字確定の仕事を喜んで受ける奇特な企業などありはしない。

しかも、全国規模での対応を迫られるのだ。それだけでも行える企業は限られる。


「で、大和夫妻が契約を切ったらどうする?事は埼玉県警だけでは済まないぞ」


もしも埼玉県警のせいでそれらの機器のメンテナンスが出来なくなったら。故障しなければ問題ないが、未来予知でも出来ない限り絶対に故障しないとは誰も断言できはしない。


「わかりました。副署長に署員を集めて周知するよう命じて来ましたが、私からも署員に言い聞かせます」


ちなみに、五菱がそういったサービス込みでの機器納入を企画・実施したのは三年前からである。


それは言うまでもなく、あらゆる物から……例え警察権力からでも我が子を守る手段を得るという大和夫妻の決意からであった。


その頃、当のA警察署では、副署長が手を離せる署員を会議室に集めていた。


「先日起きた例の事件だが、被害者家族に対し格段の配慮を行うようにとの本部長からのお達しである」


集められた署員は、「例の事件」を思い返し顔をしかめた。市民を守る警察官が、いたいけな少女とその母親を連れ去ろうとしたのである。

その後ナニをしようとしたかは、誰でも容易に想像がつく。その被害者家族のケアをするようにとの命令は、警察の職務から少し外れているものではあったが誰もがそれを受け入れた。


「副署長、被害者家族の映像を見せて頂く訳にはいきませんか?私は当日非番でして、事情聴取の時も外回りをしていましたので」


「対象の顔を知らぬでは支障もあるか。これが署内の防犯カメラから取り出したものだ」


副署長の背後のスクリーンに、大和一家の姿が映る。


「被害にあったのは、あのご婦人と娘さんか。とち狂う気持ちはわからないでもないな」


「この旦那、こんな美人を好きに出きるのか!もげてしまえ、禿げてしまえ!」


散々薫の事を褒めているが、薫の母親と妹も超がつくほどの美人である。ただ、薫のキャラが濃すぎる為に隠れる形になっているだけであった。


「娘さんって、どっちの娘が被害者なんだ?」


「背が小さくて巨乳の方らしい。俺、今ならロリコンと罵られても否定出来ない……」


副署長を含め、薫が男の娘だと気付いた者は居なかった。薫の顔とプロポーションで、男と気付けと言うのは無茶というものである。


「副署長、彼女の家や行動半径を重点的に巡回すれば宜しいのですね」


「副署長、俺をその任の専属に!」


「ちょっと、男なんてあいつの二の舞になる可能性があるわ!私が専属で守ります!」


どうやら薫の身の回りの安全は、本部長の思惑以上に確保されそうな勢いである。

ただ、彼らや彼女らがストーカーと化す危険性は、現段階では否定することができないのであった。

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