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僕、採用されました

「コホン、では面接を始めさせていただきます」


「しゃ、社長、この扱いは酷くないですか?」


社長、何事も無かったかのように面接を始めようとしましたが、榛名室長の突っ込みがそれを阻止します。


「人はそれを自業自得と言うのだ。胸に手を当てて、よく考えてみろ」


「えっ、良いのですか?嬉しいけどまずくないですか?」


そう言う榛名社長の視線の先には、僕の分厚い胸部装甲が鎮座していました。反射的に両腕で胸を隠してしまいます。


「まずいのはお前の言動と思考回路だ!弛んだ頭のネジを締める必要がありそうだな?」


「社長、凶器は反則ですって!それ、どこから出したんですか!」


大きなスパナを手に榛名室長に迫る金剛社長。互いに隙を伺い、緊迫した空気が漂います。


「失礼します。お茶をお持ちしました」


その空気を壊したのは、僕達を案内してくれた受付嬢さんでした。会議室の異質な空気をものともせずに、全員の席にお茶を配っていきます。


「社長、お客様の前なんですから猫を被って貰わないと困ります。面接が終わらないのではないですか?」


「「「はい、すいません」」」


受付嬢に頭を下げて謝る、会社のトップたち。 もしかして、彼女が影の実力者?


「ええ、改めてカオルさんの面接を行います。まあ、容姿は合格を通り越して理想と言って良いですが。長門さん、確かにうちはロリ巨乳をと注文を付けましたが、少々盛りすぎでは?」


「社長、カオルちゃんの胸は一切盛っていません。純度百パーセントの天然物です」


今更繕うのは不可能と判断したのか、ぶっちゃけた社長の問いに対し、長門さんも飾らない言葉で答えます。間違えてはいないのですが、もう少し言いようがあると思うのですが。


「社長、イメージ通りどころか、それ以上の逸材ですから決まりですね。ところでカオルさん、お付き合いしてる男性はいますか?年上の男なんてどうです?」


「「「黙れ変態!」」」


専務二人と社長の繰り出したハリセンが、立て続けに榛名室長の後頭部を直撃。榛名室長は気を失い、机に突っ伏しました。


「す、凄い音がしましたけど、そのハリセン何で出来ているんですか?」


思わずといった感じで質問する長門さん。僕もそれは思いました。


「これはタングステン・カーバイドを加工してある」


「このハリセンはチタン合金だな」


「よくぞ聞いてくれた。これはオリハルコンを芯に使い、ミスリルで厚くコーティングしてある。それにより堅さと柔軟さを両立した逸品だ!」


ちょっ、専務二人の素材も軍事利用される物だけど、社長のハリセンの素材、何処から仕入れたの!


「お馬鹿(室長)は放置するとして、カオルさんとの契約は前の子と同様でよろしいですか?」


「はい、当社としてはそれで問題ありません」


クライアントとの契約は、僕が口を出せません。なので、長門さんが了承すればそれで契約は締結されます。


「それでは長門さん、こちらにサインを。カオルちゃんはこちらの書類にサインをお願いします」


霧島専務が長門さんと僕に一枚づつの書類を差し出しました。クライアントは武蔵芸能と契約し、武蔵芸能は僕と契約しているので僕がクライアントと契約することは無いはずなのですが……


「えっと、長門さん、これってどうすれば良いでしょう?」


面接にあたり、ハウツー本を見たり両親に面接の心構えや対策を聞いたりしてきました。しかし、これは完全に想定外です。


「え、カオルちゃんどうし……」


長門さんも僕に出された書類を見て固まりました。やっぱりこの書類、子役の採用の面接で出される代物じゃないんですね。


「霧島、お前何をやってる!どこの世界に面接に来た子役の娘に婚姻届を書かせる奴が居るんだ!」


「すいません、可愛かったからつい……」


どうやらCMには無事に採用されそうですが、室長といい霧島専務といい、この会社大丈夫なのでしょうか?

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