表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/113

閑話 カボチャの祭典 終編

談笑しているグループに交ざる勇気はないので、単独でいる人に話しかけようと伺っていました。しかし、逆に声をかけられてしまいました。


「おや、可愛いお嬢さん。私の眷族にならないかね?」


背後からの声に振り返ると、二本の牙を覗かせたダンディーなおじ様がグラスを片手に微笑んでいました。


「こんばんは。折角のお誘いですが、誰かの眷族になるつもりはありません。友人では如何でしょうか?」


「はっはっは、伯爵が振られたか。ならば俺と海底の散歩なんかどうかな?」


バンパイアのおじ様の誘いを断ると、顔を鱗がびっしりと覆った青年が話しかけてきました。耳の所にエラらしきものが付いているから、マーマンかな。


「私は人間なので、海底では息ができないのです。御免なさいね」


「ええっ、貴女人間なの?ドワーフだと思ってたのに!」


僕の断り文句を聞いたのか、エルフの女性が声をあげました。お約束通り耳が長くスレンダーな美人さんです。


「人間って事は、まだ成人してないのよね。それなのにこの胸なの!」


ああ、矢張りそこにこだわるのですね。僕も好きでこんな大きさにした訳ではないのですが。


「それと、ついでに僕は男なんです。そんな体型と格好してますが……」


考えてみたら、僕は男なのですからこの格好、すなわち女装が仮装とも言えますね。


「あら、こんなに可愛いのに男の子?お持ち帰りしたいわねぇ」


「本当に。ねえ、爬虫類系の女って好みかしら?」


右腕を下半身がお魚の女性に。左腕を下半身が蛇の女性にしがみつかれました。マーメイドさんとラミアさんですね。街中なら十人中十人が振り返る美人さんなマーメイドさんは貝殻で、ラミアさんは柔らかい鱗で豊満な胸を隠しています。

それが両の肘に押し当てられ、理性が崩壊の危機に晒されています。何とか意識を別に移さないと。


「そ、それにしても見事な尻尾ですね」


マーメイドさんもラミアさんも、各々の尻尾が滑らかに動きとても作り物とは思えません。本職の人が作ったのでしょうか。


「あら、ありがとう。このヒレは自慢なのよ」


「私の鱗は触り心地もいいわよ。好きに触ってもいいわ」


ラミアさんの尻尾が伸びて、僕の足に絡みつきます。本物だと言われても信じてしまいそうな感触です。


「ねえねえ、私はどう?今は小さいけど、もう少ししたら大きくなる魔法も使えるようになるわよ」


可愛いピンクのドレスを着た妖精さんにもアピールされました。僕、モテ期到来です。しかも、妖精さんも含めて皆最上級の美人さん。

まあ、妖精さんは身長十五センチ程という欠点がありますが。その代わり、空を飛べるという特典があります。


「岡部店長、説明お願いします!」


これ、絶対に岡部店長の所の超科学が絡んでるに違いありません。他の人はまだしも、この妖精さんは仮装ではあり得ません。


「あはは、何処でも行けるピンクのドアを作っていた班がミスってね。異世界に繋がったのよ。友好的な人達だったし、今日はハロウィンだから招いても問題ないかなぁって思ったの」


そ、それじゃああのサイクロプスやジャック・オー・ランタン、コボルトも本物ですか。


理性の限界を越えて、僕は目の前が暗くなり意識を手離しました。この体だけでも受け入れるのに精一杯なのに、異世界からの御客様とか無理です。


「ん……ふあぁっ」


目が醒めると、見慣れた天井が目に入りました。何の変哲もない朝の風景です。


「ラミアさんやマーメイドさんに気に入られるなんて、変な夢を見たなぁ」


これが漫画や小説ならば、夢オチなんて読者に非難されそうです。


顔を洗いに洗面所に行くと、風呂場から水音が聞こえます。何かと思いドアを開けると、バスタブにマーメイドさんが浸かっていました。


「あ、長時間陸上にいられないのでお風呂場お借りしてます」


「あ、そうなんですね。ごゆっくり」


ドアを閉めた僕は、頭を抱えて座り込みました。どうやら夢ではなかったようです。


「考えても仕方ない。なるようになるだろう」


現実逃避という選択を選んだ僕は、二度寝する事に決めました。次に目覚めた時は、この夢から覚めている事を願って。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ