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僕、引きこもりの理由を話します

「お兄ちゃん、私達がお兄ちゃんだと分からなかったのも無理ないでしょう?」


「これ、僕だと気付く方が凄いよね!」


イメチェンなんてレベルじゃない。完全に別人になっているじゃないか!


「薫、事情を聞きたいのだが大丈夫か?」


「お父さん、ちょっと混乱してるけど話くらいなら大丈夫」


追い付いてきた両親も共にリビングに。お母さんがお茶を淹れてくれました。絶妙な甘さの狭山茶が心の落ち着きを促してくれました。


「薫、姿を見せてくれたのは嬉しいわ。でもね、お母さんよりも胸が大きいってどういう事なの!」


予想外の追求に、僕とお父さんはソファーからずり落ちました。突っ込む所、そこですか!


「母さん、引きこもっていた息子が三年ぶりに出てきて女の子になっていたんだぞ。まず聞くのがそれなのか?」


「お父さん、これは由々しき問題なのよ。最優先で聞かなければならないわ」


「そうよ、私よりも大きいのよ、大きくする方法を聞き出すのは優先事項だわ」


お母さんと穂香の勢いに、お父さんは圧倒されて反論出来ませんでした。


「それで、薫ちゃんはやっていた事を洗いざらい吐きなさい!」


「私の胸の未来が懸かっているのよ、お願い、お兄ちゃん!…あっ、お姉ちゃんが正しいのかな?でも、私より背が小さいしなぁ」


「穂香、下も付いているしお兄ちゃんで良いからな。僕に何があったのか穂香は覚えてないだろう。始めから話すな」


ナニが付いたままなのかを理解した穂香は、恥ずかしさで顔を真っ赤に染めました。僕も多分顔が赤いでしょう。


事の始めは、僕が小三の時でした。知恵遅れの女の子が虐められていたのを止めたのが発端です。


「こいつを虐めるのは止めてやるよ。その代わり、明日からはお前が代わりだからな」


苛めっ子の言った通り、翌日から僕が虐めの標的になりました。

足を引っ掛けられ転ばされ、仲間外れにもされました。耐えていると虐めはエスカレートしていって、筆箱やノートや教科書を捨てられたり殴られたりしました。


堪り兼ねて先生に相談もしました。でも結果は最悪でした。


「虐めはなぁ、虐められる方にも問題があるんだ。お前も先生に頼る前に、虐められない努力をしたらどうなんだ?」


先生は何もしてくれなかったのです。そして、虐めを言い付けたとして更に虐めは酷くなりました。


また告げ口したら、妹がどうなるかな?


そう言われた僕には、我慢する以外の選択肢はありません。殴られ、蹴られてもひたすら耐えました。

当時の僕はかなり太っていたので、脂肪がクッションになっていたようです。

暴力に耐えられるようになると、新手のやり方をするようになりました。


「お前、ブヨブヨだよな。ほら、摘まめるぜ」


「おお、柔らかいな。おっぱいもデカイし、揉んでみようぜ!」


男子四人に拘束されて、服を全て脱がされました。その上で脇腹を力任せに摘ままれたり、おっぱいを揉まれたりしました。


「デブのおっぱいなんか揉んで楽しいの?変態!」


「じゃあお前のを揉ませてくれよ」


「揉ませるわけないでしょ。デブので我慢しなさいよ」


男子だけでなく、女子も晒し者の僕を見て笑っています。悔しくて涙が止まりませんでした。

後から思えば、それがまずかったのです。暴力よりも効くと気付いたクラスの皆は、事あるごとに僕を辱しめました。


そんな状況が終わったのは、六年生の時でした。反応が薄くなった僕にイラついたのか、かなり激しい暴力を振るわれました。全裸で血を吐き動かなくなった僕に気付いたクラスメート達は、放置したまま全員が逃げました。


夜中に巡回に来た警備員に発見された僕は、直ちに救急車で病院に搬送されました。

手足の骨と肋骨を数本骨折。折れた骨が内蔵を傷つけ、危ない状況だったそうです。


当然警察が呼ばれ、事件は発覚しました。しかし大事になれば僕の傷が酷くなると判断され、報道規制が敷かれマスコミが来るような事態にはなりませんでした。


加害者であるクラスメートの保護者からは莫大な慰謝料が支払われ、虐めを意図的に抑えなかった学校側も非を認め慰謝料の支払いと進学に対する特別措置を申し出ました。


僕は退院しても会う人が僕を笑っているように思え、外に出られなくなりました。


こうして僕は、三年に渡る引きこもりをする事になったのです。

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