閑話 カボチャの祭典 中編
絶対に空を飛ばないよう念を押された穂香は、渋々歩いて学校に向かいました。
「では母さん、俺達も行こうか」
「そうですね。書類を捌くのは嫌だけど……」
いやいやお母様、重役なんだから書類仕事は必要不可欠でしょうに。
「では行ってくる」
「留守番お願いね」
後ろ髪引かれながらも出社のために駅へと歩き出すお父さんとお母さん。両親は重役ですが、車で通勤などしたら渋滞に填まるので電車通勤をやっています。
「ちょっと待って、そのまま電車に乗るつもりなの?」
二人とも、朝食を食べた時のままの格好。つまり、ウェアウルフとサキュバスのままなのです。
「薫、今日はハロウィンだぞ。何の問題もない」
「そうよ。お土産楽しみにしていてね」
当然のように言われましたが、大丈夫なのでしょうか。渋谷とかには仮装した人達が集まると聞いていますが、ここは埼玉のベッドタウン。騒ぎにならなければ良いのですが。
二人を送り出した後、暫くテレビやネットのニュースをチェックしていましたが、ウェアウルフとサキュバスが捕まったというニュースは無くて一安心。
十時になったので、駅前の商業施設の本屋で予約した本を購入。一階の食品売り場で昼食にサンドウィッチとジュースを買って帰りました。
買って来たものを部屋に置き、部屋着に着替えます。トイレ以外に立たなくて良い環境を作って本に没頭しました。
「この挿し絵、狙いが分かりやす過ぎる。けしからん、もっとやってください」
王女様の入浴シーンを挿し絵にする、出版社側の狙いは正しいと思います。僕も体はこんなですが、心は思春期の男ですから。
熱中して読んでいると、何やら胸元に違和感が。本から目を離し、胸元を見ると二つの手の甲が見えました。
何者かが背後から手を回し、胸を揉んでいます。何者かなんて、悩む必要もありません。
「穂香、一体何をやっているのかな?」
「イタズラしてるだけだから、気にしないで。ささ、お姉ちゃんは読書に勤しんでいて下さい」
「それじゃあ遠慮なく……なんて言えるわけないだろっ!」
という掛け合いをやっている最中も手を休めない穂香。何が楽しいんだか。
「お前、人のを揉まなくとも自前のがあるだろうに。他人の胸なんて揉んで楽しいか?」
「私のはこんなに大きくない。この絶妙な柔らかさと張りが癖になるのよ。お姉ちゃんも揉んでみれば?」
「自分の胸を揉む趣味はないよ。くすぐったいだけだし」
お風呂に入った時に胸の裏側まて洗う為に持ち上げる必要があります。それで持ち上げたのと、洗う時に揉むように触っただけで違う意図で触った訳ではない事を明確にしておきます。
「なら、私のを揉んでみる?お姉ちゃんの胸、更に大きくなったみたいだし揉んで貰ったら私のも大きくなるかな?」
「馬鹿な事を言ってないで部屋に戻りなさい。お兄ちゃんは本を読みたいから」
穂香、なんという事を言い出すのか。外見はこれでも、中身は歴とした男なんだからね。
「それじゃあ、続きは本を読み終わったらね。あっ、お風呂一緒に入る?」
どこまで冗談なのか、とんでもない事を言って穂香は退散しました。
穂香は顔は可愛いし、スタイルも同い年では群を抜いて良好な発育をしています。理性を総動員してる兄を、これ以上刺激しないで欲しいと思うのは贅沢でしょうか。
くっ、穂香との絡みで分けざるを得ない事に……
後編は十一時頃を予定しています。