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僕、事情を明かしました

「薫さんが引き受けていただけるのなら衣装全ての用意はこちらで行いますし、専属のマネージャーもお付けします。懸念は全て払拭出来ると思うのですが……」


「何故にそんな優遇まで?僕をクライアントが気に入るという保証は無いのですよ?」


どんなコマーシャルを作るのかは知りませんが、僕が採用される保証は無いのです。例え僕が受けても、仕事は失うという可能性もあります。と言うか、その可能性が高いと思います。


「その心配はありません。今度撮る内容が……」


二人組の人気コメディアンが、喫茶店で入ってきた女の子を見て盛り上がる。


「あの子、可愛くないか?」


「お前、ロリコンだったのか?女の子は胸だろ胸!」


二人が注目してる中、女の子が席でコートを脱ぐ。現れたのは、身長からは想像がつかない巨乳。


「「……あれは反則だろ」」


意外性が詰まってる!美少女満載カードゲーム!


とのナレーションが入って終わるらしい。確かに、それなら素でやれるけど。


「降ろされた子は、詰め物をして嵩上げする予定でした。しかし、薫さんならばその必要がありません。顔といいスタイルといい、薫さん以上の適役は居ないのです!」


「確かにそうかもしれんが、そのクライアント通報した方が良くないか?」


お父さんの言う通り、何だか危ない人のような気がします。でも、僕は他の事に気を取られて頭を抱えました。


「新作ソーシャルゲームの宣伝の内容なんて、間違いなく機密事項ですよね」


武蔵社長、結構腹黒いみたいです。部外者の僕がそんな事を聞かされてしまったら、断り辛くなります。社外秘を聞かせて取り込む目論みは、悔しい事に効果が高いと言わざるを得ません。


「それでも、お断りします。社長、これから話す内容を絶対に他言しないと誓えますか?」


「これでも会社を運営する身です。守秘義務は守りますよ」


そう返した社長ですが、たった今社外秘を漏らしたのは誰でしたっけ?


「武蔵社長、他言したら私らが総力をもって潰しにかかりますよ。会社だけで済むとは思わないでいただきたい」


うちの両親を敵に回せば、五菱商事を敵に回すも同義となります。中規模の芸能事務所など軽く倒産させられるでしょう。そして、その後の社員の行く末に干渉することも容易いと思われます。


「き、許可なく他言することは絶対にしないと誓います!」


顔を青くして誓う武蔵社長。会社を守る為に僕を口説いているのに、両親の怒りを買って会社を潰されたら本末転倒だもんね。


両親が話して良いとアイコンタクトで伝えてきたので、僕の事情を話します。

虐めを受けて引きこもった事、本当は男だけれど虐めによるホルモンバランスの異常が原因と思われる体型の変化で胸が大きい事。心は男だけれど、見た目を自然にするために女装させられている事。


「この格好は、僕が望んでしている訳ではないですからね。そこはお間違えのないようにお願いします!」


「はい……しかし、どこからどう見ても美少女ですねぇ」


武蔵社長、あれだけ熱心に説明したというのに半信半疑な模様です。両親と穂香は僕に加勢するどころか、武蔵社長に同調している様子。


「我が子ながら、その大きさに嫉妬するくらいですもの。信じられない武蔵社長に罪はありませんわ」


「お母さんの言う通りね。本当に分けてほしいわ」


くっ、僕に味方はいないようです。しかし、ここで引く訳にはいきません。


「男なのに、女の子の振りをしてコマーシャルに出る訳にはいきませんよね?」


「いや、それはそれで美味しい……と言うか、その方が美味しいかも」


「ちょっ、お父さんどっちの味方してるのさ!」


お父さんの会社人間としての顔が出たみたいです。確かに、意外性をテーマにしたコマーシャルならば僕は打ってつけでしょうけど。


「薫さん、助けると思ってどうか、どうかお願いします!」


再び頭を下げる武蔵社長。僕はどうするべきなのでしょうか。断るのがベストなのでしょうけど、助けてあげたいとも思ってしまっています。


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