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僕、理由を語りました

「お願いします、どうか、助けると思って!」


会議室に入り、椅子に座るなり机に頭をぶつけながら叫ぶ武蔵社長。一体何があったのでしょうか。


「本人が否と言う以上、私はそれを尊重します。薫、引き受ける気は無いのだな?」


「お父さん、こんな異常事態だから忘れがちだけど……」


元々僕は三年間も引きこもっていたのです。外に出るのもおっかなびっくりという状況だったのに、疑似女体化や刑事による誘拐未遂なんて事のせいでそれが吹っ飛んでいます。

まあ、そのお陰で外への不安が感じられず普通に出歩けているのですが。


「それに、家庭崩壊の地雷原と言われる子役なんて怖すぎる!」


子役、それは我が子の芸能界入りという甘美な響きを持つ家庭クラッシャー。予備知識無しで足を踏み入れようものならば、結構な確率で家庭崩壊を起こします。


まず、子役にはマネージャーなんて付きません。売れっ子になるか大物の子息という特別な理由があれば別ですが、通常はマネージャーなんて付きません。

では、スケジュールの管理や撮影現場までの送迎を誰がやるかと言えば、子役側が用意しなければならないのです。大概は母親となります。

母親が子供に付きっきりとなれば、父親は放置状態となり家事にも差し支えが出ます。


更に、衣装の問題。子役の衣装など、学校の制服以外は制作者サイドも芸能事務所も用意しません。では、どこが用意するかと言えば、やはり子役の家庭で都合をつけるしかないのです。

役にあった服を用意するのですが、他の撮影で使った服など使えません。違う役を勝ち取る度に服を買わねばならないのです。


そして、子役のギャラなどたかが知れています。送迎や洋服にかかる出費とは到底釣り合いません。

普通ならば出費が増えれば母親がパートやアルバイトで補填して……となりますが、子供に付いていなければならないのでそれも出来ず。

結果、家計が破綻し夫婦喧嘩から崩壊というのが鉄板のパターンです。

そして、運良くそれを乗り越えた場合、上がった出演料が問題となります。余分な収入が増え、身を持ち崩して家庭崩壊。


「……うちはそれに当て嵌まらないと思うけど、子役同士や親の嫉妬とか、問題山積みな業界らしいですね」


うちは裕福だからマネージャーを雇えるし、洋服の用意も問題なし。両親の収入が多いから、僕に収入が出来ても生活は変わらないでしょう。

だけど、だからと言ってこのお話を受けるかどうかは別です。


「薫さん、何で業界の内部事情にそこまで詳しいのですか?」


「え、ネットの世界では有名な話ですよ?」


武蔵社長、否定しませんでした。ネットで語られていた内容は、事実だったようです。


「確かに、薫さんの言われた問題は事実です。ですので、薫さんにはマネージャーを付けますし、撮影に使用する衣服は当社で用意します。なのでお願いします!」


再び頭を下げる武蔵社長。勢いが余り、盛大な音をたてて机と額が激突しました。


「そこまでするとは、余程の事情がありそうですな。それをお話して貰えませんか?」


「そうですね。何分恥ずかしい内容ですので、他言無用でお願いします」


スマホ用の新たなソーシャルゲームがリリースされるのですが、その宣伝に武蔵芸能事務所から子役を出す事が決まっていたそうです。

しかし、その子役の両親が刃傷沙汰を起こして逮捕。それを知ったクライアントが、子役を変えるようにと激怒したそうです。


しかし、事務所に所属する子役はクライアントのお眼鏡に叶わず、この分だと他社に仕事を取られてしまう。この仕事だけならば問題ないのですが、他の仕事も他社に流れる可能性も大なので死守しなければならない。


「今日警察署に来たのも、子役の仕事量に問題があったかの聴取を受けに来たのです。それが終わり、駐車場で頭を抱えていた所に大和取締役とお会いした訳です」


因みに、刃傷沙汰の原因は子役の収入が増えて父親がそれを当てにし仕事を辞めたからだそうです。

このお話は、あくまでフィクションです。


実際の芸能界の内部事情とは一切関係ありません。


………多分。

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