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僕、警察に行きました

翌日、僕たちは家族全員で警察署に事情聴取を受けに行きました。事情聴取を受けるのは初めの被害者の僕と、次に被害にあったお母さん。そして変態を阻止したお父さんです。


穂香はトイレに隠れていてこの件には関与していませんが、穂香一人だけ学校に行かせ、下校後一人で留守番させるのも不安だと一緒に行くことに。

学校を休ませる事になりますが、学校側がうちに何かを言ってくる事はありません。学校も教育委員会も、僕の件で多大な負い目を負っていますから。


警察署に入り、中を見渡します。初めて見た警察署は、働いている人達が警官の制服をきている点を除けば普通の会社や役所と変わらないように見えます。


「すいません、大和さん御一家でしょうか?」


「はい、昨日のショッピングモールの件で事情聴取を受けに来ました。担当の方を呼んで貰えますか?」


近寄ってきた婦警さんにお父さんが応対します。それを漏れ聞いた周囲の警官がざわめきました。


「と言うことは、あの子のどちらかが被害者なのか!」


「どちらが被害者としても、あんな可愛い子を毒牙にかけようとしたとは……奴を死刑にする方法は無いものかな?」


「ロリータ巨乳と聞いてるから、背の低い方の子じゃないか?可哀想に、怖かっただろうなぁ」


その声は被害者である僕に対する同情と、加害者であるロリコン刑事に対する怒りが占めていました。


「どちらでも可愛いって、私も可愛いのかな?」


「穂香は自慢しても良いほどに可愛いよ。それは僕が保証するよ」


兄バカフィルターの分を差し引いたとしても穂香はかなり可愛いと思います。なのでそう言って頭を撫でると純真無垢な笑顔を見せてくれました。


「僕っ子だと?絶滅したと言われる僕っ子が、今目の前に!」


「それにあの子のあの笑顔!あの姉妹の笑顔の為なら、私なんでもするわ!」


何だか、警官の皆の注目を集めているみたいですが、皆さん仕事はしなくても良いのでしょうか?


「お待たせいたしました、どうぞこちらへ!」


奥から転げるように駆けつけた、小太りのオジサンが担当の人みたいです。

案内されて入ったのは、サスペンスもののドラマで見る取調室ではなく、豪華な応接セットが設えられた応接室でした。


「ささ、お座り下さい。私は当A警察署を預かります、榛名と申します」


僕達全員に渡された名刺を見ると、何と署長さんでした。刑事ではなく署長さんが直に事情聴取するなんて、ありえるのでしょうか?


促されるままソファーに座ると、すぐに紅茶とケーキが運ばれて来ました。これはどう考えても事情聴取を受ける人への対応ではありません。


「この度の不祥事、真に申し訳御座いませんでした!奴は徹底的に余罪を洗いだし、出来うる限り重い罪に問う事とします」


不審に思っていたら、署長さんが見事な土下座を披露しました。驚く僕と穂香でしたが、お父さんとお母さんは平然としていました。


「署長さんの謝罪、確かに受け入れました。二度とうちの家族に被害が及ばないようにお願いしますよ」


お父さんの言葉に、署長さんはあからさまな安堵の表情を見せ頭を上げました。その後署長さんの幾つかの質問にお父さんが答えて、 事情聴取は呆気なく終了しました。


「何だか、思ってた事情聴取と違うね」


隣に座った穂香が小声で僕に言いましたが、署長さんにはしっかりと聞こえたみたいです。


「体裁上、事情聴取を受けていただいたという事実だけが必要だったのです。我が署の不祥事の被害者である大和さん一家に失礼な真似は出来ませんよ」


そう言えば、この署はストーカー被害を訴えた女性に塩対応をし、その女性がストーカーに刺し殺されたという事がありました。

それに加えて、刑事が職権を濫用して少女とその母親を拉致しようとしたなんてマスコミに漏れたら……致命傷になりますね。


こうして僕達は、終始平身低頭していた署長さんの事情聴取を終えたのでした。

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