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僕、感心しました

防具が決まり、とりあえず身を守れれば良いからと武器を拒否。穂香もあの武器の威力には引いたのか、僕の意見に賛成してくれました。

いくら銃刀法違反にならないとしても、家数件を軽く消滅させられる代物なんて持ち歩きたくありません。


「店長さん、ちょっと疑問に思ったんですけど」


「はいはい、可愛いお客さんの質問には何でも答えますよ」


店長さん、こういう言動が残念過ぎます。まあ、こんなお店をやっている人がまともとは思いませんが。


「これらって、お店で売るよりも技術を公開した方が儲かるのでは?」


慣性制御だけでも、莫大な利益が得られる筈です。なのに、何故それをしないのでしょう。


ここ二十年ほど、航空機の最高速度は更新されていません。新たな技術が開発され、更新が可能であるにも関わらずです。それは、機体を操縦する人間が耐えられないからです。

実際、世界最速の航空機ブラックバードは宇宙服のような耐Gスーツを着ないと搭乗出来ません。


しかし、慣性制御を使えばその問題が解決され、航空機は更に発展するのです。それでどれだけの利益を得られるのか、想像もつきません。


「それだけは絶対にしないわ。私達はハンス・ヴェルナーになる気はないの」


「ハンス・ヴェルナー?誰それ」


僕はその一言で納得してしまいましたが、穂香は彼の事を知らないようです。


「昔のドイツの科学者でね、月にロケットで行くのが夢だったんだ。その研究費用を稼ぐため、軍にロケットを売り込んだんだ」


その結果作られたのが、イギリスを苦しめたV2ロケット。戦後もその技術は連合国に没収され、ロケット開発競争へと繋がる。


「私達の目的は、漫画やラノベのアイテムを再現すること。その崇高な目的を軍事利用なんかさせるつもりはないの」


店長さん、軍事利用させないという意志は確かに崇高だと思うけど、その目的はどうかと思いますよ。


「……つまり、理性は失っていないオタクの集団なんですね」


「科学者なんて皆オタクよ。だけど、作った物を使わないのは作り手として納得出来ない。だからこうして限られた人にだけ使ってもらい、感想や意見を聞いているの」


成る程、このお店はお客が来ないのではなく、来ないようにしているんですね。


「という訳で、このお店や商品に関しては他言無用よ。もしも漏らしたりしたら……」


店長さんはそこで言葉を切り、愛想笑いを浮かべています。何も言われなくても、他言しようなんて気持ちは吹き飛んでしまいます。

元々他言するつもりはありませんけどね。これが世間に漏れようものなら、大騒ぎになるのは目に見えています。


「科学者は時に好奇心に駈られてとんでもない物を生み出すわ、原子爆弾のようにね。私達はそれを熟知しているから、何処の国や組織にも属さずに研究をしているの」


中学生にあんな破壊兵器を持たそうとしていた人が、こんな自制された考えをしているとは夢にも思いませんでした。感心して、店長さんを見直してしまいます。


「とりあえず防御力は上がったから、明日警察に行っても大丈夫そうだな」


「えっ、明日警察に行くの?」


今日は警察への同行を拒否しましたが、事情聴取はどうしても必要らしいのです。なので、念のため身を守るグッズを僕と穂香に持たせたかったらしいです。


「お父さん、気持ちはありがたいけど警察に行くのに強力な破壊兵器を持っていくというのはどうなの?」


「薫、そんなのバレなければ問題ないんだ。いざとなれば、いくらでも揉み消す事もできるしな」


お父さん、凄く黒いです!頼もしいのですが、ちょっと引いてしまいます。


「さあ、事情聴取の打ち合わせもしたいし、そろそろ帰ろうか」


「大和さん、何かあったら連絡下さいね。援軍を出しますから」


送り出す店長さんに手を振って店を出るお父さん。僕達も続いて店を出ます。


明日の事情聴取、何事も無ければ良いのですが。店長さんの援軍が来たら、警察署どころか埼玉県が地図から消えそうな気がします。


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