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僕、車に驚きました

「穂香、先生に何と言って休んだんだ?」


「そのまんま、家族とのコミュニケーションをとるので休みますと言ったわよ」


買い出しの当日、しっかりと学校を休んだ穂香が僕の左腕に抱きついています。


「ちょっ、穂香当たってる当たってる!」


僕の左の肘が、穂香の柔らかい物に当たっています。穂香は僕の胸に嫉妬するけど、十分な大きさと柔らかさの物を持ってます。


「こうしないとお姉ちゃんのを堪能出来ないでしょう、お互い様ということで」


妹ととのラッキースケベを喜ぶべきでしょうか?そもそも、これをラッキースケベと言って良いかが疑問なのですが。


「薫ちゃん、穂香、そろそろ行くわよ」


お母さんに促され、靴を履いて車庫に出ます。車庫には灰色のワゴン車が停まっていました。


「あれ、うちの車ワゴン車だったっけ?」


「一年位前に買い換えたんだ。注文出したのは二年半前だったんだけどな」


お父さんがスライドドアの鍵穴に鍵を差し込んで回すと、プシュッという音を立ててドアが開きました。僕はその光景に違和感を覚えました。


「今時電子ロックじゃなく機械式の鍵なの?」


僕が引きこもる前から、車の鍵は全て電子ロックになっていました。鍵を持って近付けば開き、離れれば閉まる便利な物です。

それなのに、買い換えたばかりの車に旧型の機械式の鍵が付いている。

車屋の手抜きや間違いとは思えません。態々機械式の鍵を付ける方が面倒だからです。


「これって、お父さんがそう注文したって事だよね。何でなの?」


「これはEMP対策だよ。当然エンジン周りの対電磁波対策も万全だぞ」


予想外の返答に、呆れて声も出ませんでした。お父さんは核戦争を想定しているの?


「ねえ、EMPってなんなの?」


「高高度で核爆発を起こすと、地上に強烈な電磁波だけを浴びせる事が出来るんだ。それで電子機器を壊す戦術さ」


嘘か本当か、自衛隊車両の一部は、この対策が施されているそうです。


「それだけではないぞ。対ABC兵器対策も万全で、窓は20ミリ機銃に耐え、装甲は120ミリの直撃を跳ね返す!」


「それで注文から納品まで間が空いてるんだ。車屋さんも、こんな無茶な注文によく応じてくれたなぁ」


お父さんの無茶な注文に四苦八苦したであろう車屋さんの苦労を思うと、涙が出そうです。


「本当は45口径46センチ砲に耐えられるようにしたかったんだが、車屋さんに土下座で泣かれてなぁ」


「お父さん、ランドサット(陸上戦艦)でも作るつもりだったの?!」


「家族の安全を確保するには、それくらいしないとな」


東京湾から戦艦主砲で狙撃される事態でも想定しているのでしょうか。


「それって例え作れて砲弾を弾いても、衝撃で車体が吹き飛ぶから意味がないと思うんだけど……」


「それは気付かなかった!」


お父さん、大企業の重役なんだから頭は良いはずなんだけど……


「はいはい、もう買ったんだから不毛な討論はしないの。早く乗りなさい」


お母さんに腕を引かれ、二列目の真ん中に腰を下ろします。三人掛けのシートで、奥がお母さん。真ん中に僕が座り、ドアの方には穂香が座りました。


「防弾性能は置いといて、安全性は高いから安心してくれ。トラックやバスにぶつかられても大破するのは相手になる」


街中で、と言うより日本で必要かと疑問に思う位の安全性だよな。まあ、害にならないし考えたら負けか。


車のトンでもな性能に驚いた僕は、外出の緊張が欠片も残さずに吹き飛んだのでした。

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