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僕、地方予選に挑みました

すいません、予約に失敗していました


 米国横断スーパークイズは、イッテレが誇る大掛かりなクイズ番組です。参加者が予選を戦って生き残り、米国を横断して自由の女神の下で決戦を行うというものです。


 司会者の掛け声「自由の女神に行きたいか!罰ゲームは恐ろしくないか!」は有名で、司会者は変われど毎年行われる年中行事のような番組です。


 参加は申し込めば誰でも出来ますが、地方予選を勝ち抜くだけでも一苦労です。芸能人や有名人が招待枠で参加しますが、カメラが付くだけで特別扱いはされません。


「自由の女神に行きたいかー!」


「「「オオーッ」」」


「罰ゲームは恐ろしくないかー」


「「「オオーッ!」」」


 そして今、米国横断スーパークイズの埼玉予選が開催されようとしています。会場となった荒川河川敷の飛行場は、異様な熱気に包まれています。


「知力、体力、時の運。全てを使って勝ち抜いて下さい。では、埼玉予選の第一問を発表します」


 予選はマルバツクイズで、会場は川に向かって右にマル、左にバツが大きく書かれています。


「問題。この河川敷には軍の学校がありました。その学校は空軍の学校であったマルかバツか!」


 一問目だけあって簡単な問題です。僕は殆どの人と同様バツの方に走りました。


「カオルさん、迷いもせずにバツに走りましたが、自信はありますか?」


「勿論です。これを間違える人は少ないのでは?」


 僕に付いているカメラマンさんが質問してきました。僕は自信タップリに答えます。これで間違えていたら大恥をかくことになりますが、正解していると確信しています。


 スタッフの人がマルとバツの間にロープを張っていきます。マルに走った人は少ないようでした。


「殆どの人がバツに行きました。正解は大空に表示されます!」


 頭上にはいつの間にか飛行船が浮いていました。その気嚢部分にはモニターが取り付けられていて、そこに真っ赤なバツマークが映し出されました。


「正解はバツです。日本には空軍は存在せず、ここは陸軍飛行隊の学校でした」


 沸き上がるバツの正解者に対し、マルに走った人達はトボトボと会場から離れていきます。その姿は少し後の僕の姿かと思うと浮かれてはいられません。


「第二問。埼玉県の名前の由来は、行田にあるさいたま古墳群である。マルかバツかどっち?」


 マルとバツの間を隔てるロープが解かれると、約半数の人がマルに行きました。僕は動かずにバツのままです。


「正解はこれだ!またしてもバツです」


 あの古墳群、漢字は埼玉ですが読みはさきたまなのです。ちょっと意地悪な引っかけでかなりの人が脱落しました。

 その後も地元に関わる問題が続きました。僕は何とか正解を重ね、生き残る事が出来ています。


「そろそろ国内予選出場者が決まりそうです。問題、世界一大きな水車があるのは埼玉県である。マルかバツかどっち?」


 マルとバツ、半数づつに別れました。僕は迷わずにマルの陣営へと移動します。


「これに正解すれば国内予選に出られそうですが、自信はありますか?」


「多分大丈夫だと思います」


 マルの解答者もバツの解答者も、祈るような気持ちで飛行船を見上げます。僕らにとっては長い時間の後、モニターに運命の正解が表示されました。


「正解は・・・マルです!寄居にある川の博物館に設置された大水車が世界最大の水車となっています」


 互いにハイタッチをして喜び合うマルの解答者達。対称的にバツの解答者は項垂れ、手にいれる寸前だった国内予選出場を逃した事を悔やんでいます。


「今、マルに立つ君達が埼玉の、俺達の代表だ!国内予選出場、おめでとう!」


 敗れて見守っていた人達や見学に来ていた人達から拍手が沸き起こりました。僕らはそれに手を振って応えます。


「お疲れ様でした、これで地方予選は終了です。国内予選出場の皆様はこちらにお願い致します」


 スタッフさんに誘導されて、僕らはスタッフ用の天幕の中に連れてこられました。そこで名前を登録した僕らは、国内予選出場者の証であるプレートを渡されて本戦の日程を説明されました。


 もしも勝ち進めば、長い期間拘束される事となります。学生は良いでしょうけれど、社会人の場合休暇を取らねばなりません。幸い、残った人の中で大人の人は予め有給休暇を申請してあったそうです。


「負けたら帰り次第出社しろと念を押されたけどな」


「私は会社の宣伝してこいとしつこく言われましたよ。これで国内予選で落ちたら顔向け出来ませんよ」


 大人の人達は、娯楽であるはずのクイズ大会も純粋に楽しめないようです。僕ら未成年は、彼等の分まで楽しませてもらいましょう。

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