78話 戴冠式 (sideヘレナ)
この二月の間、かなり大変だった。
周辺諸国に勇者たちの後始末についての説明。
新しい国ができたことについての説明。
新しい体制の制定。
各種設備の新装。
家屋の建て直し。
といっても、それのほとんどを私は関わっていない。いや、関わってはいた……。いたんですが……ほとんどへリック様やガイン様たちに丸投げしていた……。
ここにアリシアがいたのなら、ヘレナは王様だよね? って笑われていると思う……。
あぁでも、アリシアは終戦後姿を見せない。元奴隷を転移させてきたが、その時も手紙だけを残しているだけ。
彼女は何をしているのでしょうか。
それと、魔王が倒されたということもあり、私も王都での祭りに貴賓として招待してもらった。
呼んでくれたのはもちろんレティノア様。まだ戴冠式も済ましていないのに、トーヤやマイたちに祝いの言葉を言わされました……。
そう私の国では戴冠式を行っていない。別にしていなくても、私は王なのだが……。締まりが悪い、みたいな感じだ。
ここのところバタバタしていたので、後回しになっていた。
「――レナ様! ヘレナ様!」
「ひゃ⁉︎ ひゃい!」
「もう。ですからどちらをつけますか?」
ぼーっと物思いにふけっていると、最近侍女にしたテスカに声をかけられた。
心ここに在らずの私にやれやれといった様子で首を振り、テスカは両手に持ったものを見せてくる。
右手には青い宝石のついた首飾り。
左手には赤い宝石のついた首飾り。
それの意味するところがよく分からず、テスカに尋ねる。
「えっと、私がつけるんですか?」
「もう! 何をいっているんですか! 今日は戴冠式ですよ! ちょっとは着飾りませんと!」
いつも地味なんですし。と余計な一言を添える。
ちょっとした小言はなるべく無視して、そういえばそうだったなぁと壁の方に目をやる。
そこには真っ白なドレスがかけられている。レティノア様が送ってくれたものだ。滑らかな肌触りの布や、ふんだんにあしらわれたレースを見るに……うぅ……。
また、テスカが持つ首飾りはアギル様からの贈り物だ。
「もうですか……。明日に延長とかできないでしょうか」
「出来るわけないじゃないですか! もう町の人たちは集まってきているんですよ⁉︎」
「あはは〜。そうですよねー」
テスカはプンプンと怒っているけど……。正直荷が重い……。荷以前に、緊張で押しつぶされてしまいそう。
もともと私は大勢の人の前に立つのは苦手だ。トーヤたちに祝いの言葉をかけるのだけでも胃に穴があきそうだったのに……。
うぅ……とお腹を抱えてうずくまっていると、テスカがまた声をかけてきた。
「あの、本当に時間がないのでどちらにしますか?」
そう言って目の前に掲げられる二つの首飾り。赤と青。衣装は白。
どちらがいいかあなぁ、と少し考え、結局青にすることにした。
すると、テスカはやっぱり、と言いたげな表情を見せる。
「なんですか?」
「え⁉︎ ああいえ、やはりヘレナ様はあの方の色を選ぶんですね」
ニヤニヤしてテスカは言うが、それは当たり前のこと。
私が今こうしてここにいられるのは全て彼女のおかげだ。
もしアリシアに会わなければ――私はあのくらい遺跡の中で死んでいた。
もし支えてもらえなければ――いつかつまずいていた。
彼女といた時間はそう長くない。それでもかなり濃い時を一緒にした。アリシアにとっては違うかもしれないけど、私にとっては病気になりそうなほど濃かった。
恩も感じるし、好感だって持つ。そんな彼女の特徴的な色を好むのも当たり前だ。
「そういえばテスカはアリシアに会ったことがあるんでしたっけ」
「はい。あの方の城で」
テスカは元奴隷だ。彼女を含め、デプリシオの館から救出した奴隷たちを、アレイシアは自分の城へ送っていた。
もちろんそれは治療目的であり、つい先日、『治したからそっちで世話して〜』と手紙を添えて転移させられてきた。
彼女らの処遇をどうするかへリック様たちに相談した結果。都合もいいから私の侍女にしてしまおう、と言うことになった。
カレンから指導を受けていたらしく、結構手際がいいので助かっている。でも主人――つまりは私に厳しいのは泣きそうだけど……。
「さて、そろそろドレスに着替えましょう」
「……どうしても、ですか?」
「どうしてもです!」
嫌だなぁ、嫌だなぁと思いながら椅子から腰を浮かせる。
するとテスカを含め、周りについていた侍女たちが私に群がってくる。
そしてあれよあれよと服が脱がされて行く。
「う……苦しい……。あ、あの、これ付けないといけませんか?」
ぎゅうぎゅうとお腹を締め付けてくるコルセットを忌々しく思いながらテスカに聞く。
「はい。運動不足で脂肪がついたお腹は隠さないとみっともないので」
「ちょ、ちょっと! これでも王様なんですよ⁉︎ もっと言い方ってものが……」
「知りませんよっ! 締める側の気持ちになってくださいっ! ふぅ、これ結構しんどいんですよ」
「わ、私の方が苦しいです……」
内臓が潰されるんじゃないの? そんな感覚に陥る。ぎゅうぎゅうに締められたコルセットは非常に危険だ……。最果ての島で戦闘を繰り返す方が楽かもしれない……。
いい仕事した〜と汗もかいていないのに額を拭うこやつは後でお仕置きです。
うぅ……と何度も唸りをあげ、昼に食べたおむらいすとおだんごを口から出ないように我慢していると、ようやく着付けが完了したようだ。
「これで終わりですね。着飾れば誰でも綺麗になるものなんですね」
「どう言う意味ですか⁉︎」
「そんなことよりも移動してしまいましょう。あともう少しで開式です」
問いただしてやろうと思ったが、大声を出してしまったことで口からなにかが……。
私は口をそっと抑えながら、テスカに先導されて道を歩く。
ダメです。ちょっと動くだけでもお腹が苦しい……。四方八方からお腹が圧迫され、非常にムカムカしてきます。
「あの、もっと堂々と歩けないのですか?」
「う、うるさいです……。こ、これでも精一杯なんです」
むしろ褒めて欲しいくらいです。たしかにお腹を抱えて、前屈みで歩いている姿というのは、少し……ほんの少しみっともない気がしないでもないです。
ですが、歩いているだけでもましです。
コルセットを破壊したいのを我慢しているだけでもいい方ですよ。
「……分かりますが、もうすぐ民衆の前に出ます。その時くらいは我慢して下さい」
「わ、分かりましたよ……」
そうして私は作りかけのお城から外に出る。
するとそこには――
「なっ⁉︎ お、多すぎませんか⁉︎」
「何を今更。ヘレナ様はあの方たちにとって勇者と並ぶ英雄なんですよ?」
「そ、それでも多すぎやしませんか⁉︎」
私に与えられたこのお城の前にはかなり大きな広場があった。
あったのだが、今は人でその広場が埋め尽くされており、戴冠式を行うのであろう台までの道が、その人の群れが割れるように出来ていた。
そして私が姿を現した瞬間――
「お、おい! ヘレナ様だ! ヘレナ様が出てきたぞ!」
「うぉぉぉおおお!」
一斉に、示し合わせていたように自分を喝采する声がそこら中から上がってくる。
「さ、ヘレナ様」
テスカの小さな呼びかけで、私はハッと意識を浮かび上がらせる。どうにも想像のさらに上をいった光景で、気が動転してしまっていたらしい。
私はその祝福の道を歩きながら、どうにかこの激しい鼓動を抑えようとする。
でもそれは叶わない。どうしても嬉しく思ってしまうのだ。
今までやってきたこと。もちろん自分だけの力だなんて思っていない。色々な人に支えられて、ここまでやってこれた。自分一人では見れなかった景色だ。
この道の側には沢山の見知った顔がある。
以前はあんなにも憔悴していた者たち。笑顔のえの字もなかった者たち。ただひたすらに死を待ち続けていた者たち。
もちろん見知らぬ顔だってある。
私たちの勝手のせいで王国を裏切らせた。それなのに私に向かって手を振ってくれる。笑顔を向けてくれる。祝福の声を上げてくれる。
――あぁ……私はここまでこれたんだ。
階段を一つ。また一つ登る。この台を登りきれば、後は流れに身をまかせるだけで私は『王』になる。
――不安はある。疑問だってある。自分よりももっと相応しい者がいると思う。
私はまた一歩階段を踏みしめる。
――この選択が本当に正しいのか……今でもそれを考えると怖くなる。
でも私はもう決めたのだ。王になると決め、幸せで包まれた国を作ると決心したのだ。
この胸に渦巻く感情は、そうアレだ。お祭りの前とか旅立ちの前とかで眠れなくなってしまうのと似ている。
つまりは興奮しすぎて、嬉しすぎて、私は感情がはっきりと定まらないのだ。
ここまで来るのには相当苦労し、様々な葛藤もあった。それらが脳裏をすごい速度でよぎっているのだ。
この階段の先は私の終着点。一先ずのと付くが、それでもゴールはゴールだ。
だから早く彼女に会いに行こう。
「やぁ。馬子にも衣装だね〜。ふふん、似合ってるよ」
「どういう意味ですか、それ……。褒められてないってことだけは分かりますよ」
そこにはやはり彼女がいた。
普段のあり合わせの格好ではなく、式典に合わせた白いローブを羽織った彼女。
アレイシアは楽しそうに微笑みながら、階段を登ってきた私を迎える。
「ほら、見なよ。ここに集まってきている奴らはみんながみんな君を祝いに来てるんだよ?」
「そうですね。今すごく緊張しています」
「そのようだね。なんかお腹苦しそうにしてるけど大丈夫? 回復魔法いる?」
「うっ、い、いらないですよ〜。う、うふふ、だいじょうぶですから〜」
さ、流石はアリシア……。うまく隠せていると思っていましたが、バレますか……。
「そ、それよりも、やっぱり戴冠式はアリシアが行うんですね」
「まぁね。どうしてもってヘリックとかマイに頼まれたし、お菓子もくれるって言うからね〜」
「……アリシア。あなたへリック様やマイとは顔を合わしていたのですか? 私は? 結構さび――心配だったんですよ?」
なにせあの戦争の後から姿を見せないのだ。それは心配になるし、不安にもなる。
以前長く姿を隠すのなら言ってくれと頼んだのに……。
当の本人は気にしてな風に軽く手を振っている。
「あはは〜ごめんごめん。めんど――だるかったから仕方ないよね」
「ちょ、言い直してそれですか⁉︎」
「だって本当のことだし。あ、へリックが早くしろって」
「はへ?」
アリシアの視線の先を見てみると、この台の端の方に置いてある椅子に腰掛けているへリック様の姿が見えた。一見ニコニコと穏やかに笑っているけど……。アレは知ってる。私が変なことをした時に見せる起こっている時のニコニコだ……。
町の人たちもいつのまにか声を鎮めている。どうやら私がこの台に登ったことで、始まるんだと、騒ぐのをやめたらしい。
それに気づき、私はクッと意識を引き締める。アリシアがいたからつい気が緩んでしまったが、もうここはそう言う『場』なんだと理解したからだ。
そして私の変化を悟ったアリシアは異空間を開き、そこから何かを取り出した。
「よし、じゃあ始めようか。ヘレナ、ちょっとそこに片膝ついてくてる?」
「え? あ、はい? え? あ、あの、そ、それはなんですか?」
ちゃんとしようと決意したのもつかの間。
私はアリシアが取り出したソレに目がクギ付けになっていた。
「ん? 何って王冠だけど。あぁそういやヘレナって分かるんだったね」
そういってニコニコ笑って、その『王冠』をみんなに見やすいように掲げる。それに町の人々やヘリック様たちが感嘆の声を上げる。トーヤもマイもキレイだとか言っている。
なるほど。確かにアレはキレイだ。全てが金のようなもので作られ、色とりどりの宝石が散りばめられている。
その中でひときわ目立つのは、彼女の瞳と同じ色の宝石だろう。
それは一見水のように王冠の周りを漂っている。しかし、私の感覚ではあれは宝石だと告げている。
そして、ただならぬ『力』を感じる。そう、それこそ私の内にある『力』と同じようなものが。
アリシアはその得体の知れない王冠を掲げ、自慢げに語る。
「これは私が作ったものだし、おまけに魔法も付与しておいた。まぁでもそれだけじゃ味気ないし、あのアホから魔力ぶんどって付けたしておいた」
だから神の祝福でもかかっているんじゃね? と彼女は惚ける。
なんでだろう。一瞬アレイシア様の泣いている姿が脳裏をよぎった……。大方アリシアは不意打ち気味に魔力を奪ったのだろう。おはよ、魔力もらうね? みたいに出会い頭やられたに違いない……。
心の中でアレイシア様を労わりつつ、私はあの王冠に込められた『力』に恐々と身を震わせる。
そんな内心を知らずか無視してか、アリシアは再度片ひざ付くように言ってくる。
お腹の圧迫感すら忘れ、身を震わしていた私だが、今が式典中だと言うことを思い出し、強引に身体に命令しゆっくりとした動作でひざをつき、目を伏せてアリシアに頭を垂れる。
それにアリシアはよし、と小さく頷く。
そしてなにかの魔法を発動したかと思うと、アリシアは集まった者たち全員に聞こえるように声を拡散させる。
「この者――ヘレナ、ヘレナ……ヘレナ、なんだっけ?」
「カーコフですよ! カーコフ!」
「いや、それは前のでしょ? そうじゃなくてほら、人種も自分の国の名前を自分の名前に入れるでしょ? ここってカーコフ王国なの? 私まだ名前知らないんだけど」
「な⁉︎ た、確かに言ってませんけど、アリシアならそれくらい調べられるでしょ!」
「いや、今まで寝てたし知らないよ。めんどいし」
す、すごく悩んだのに……。国の名前を決めるだけで8日くらいかかったのに……。というか知らないんだったら、開式の前にでも誰かに聞いていて欲しかった……。
あぁ笑われてる……すっごい笑われてる。
なんで知らないんですか……。そう文句を垂れるも、アリシアはごめんごめんとちっとも反省した様子が見られない。
「ん? あぁそんな名前なんだ。なんかわたしを意識しまくってるのがおかしいけど、まぁいいんじゃない」
そう言ってくすくすと微笑むアリシア。大方カレンやルミエとかに聞いたのだろうけど……。なにも笑うことはないじゃないですか。
アリシアはひとしきり笑ったのか、また私に片ひざを付くように言ってくる。
今度は大丈夫なんですよね? と懐疑の目をアリシアに向けつつ、しぶしぶと膝を付く。
そして私がその体制をとったことで、町の人々はピンッと糸を張ったように静かになり、行く末を固唾を呑んで見守っている。
そうさせるのは私のことだけじゃないのだろう。現に私も少し汗をかいてしまった。
「ヘレナ。君は今日をもって本当の王になる」
彼女の雰囲気が先程までと一転したことが――この式典を氷が張ったようにさせる。
少しでも動いてしまうと咎められるような……そんな感覚。
そんな感覚が今、会場全体を包み込んでいた。
その中でアリシアは普段見せない『王』の風格を前面に出す。
「もう甘ったれたことは言えない。逃げることも許されない。君は君の国に住む全ての命に責任を持つことになる」
「――はい」
なんとか、なんとかその短い言葉だけは出せた。でもこれが私の限界だ。もし、今私が跪き、頭を垂れていなかったとしたら……。立った状態でアリシアに言葉をかけられていたら……。
その重く重い言葉は再度私の身にのしかかってくる。
「君は『王』だ。その自覚はあるか?」
「――あります」
「君には『力』がある。それを正しく使えるか?」
「――使えます」
当たり前だ。私はずっと前から心に刻んできた。それこそ物心がついた時から。あの街の……人々の姿を見た時から――
アリシアはそうか、とただ頷く。
そして、次が最後だと言って言葉を紡ぐ。
「君はこの国をどうしたい? どんな国にしたい?」
あぁそれこそ元より決めていること。ずっとずっと夢に描いてきたこと。
だから私は胸を張って答えられる。アリシアに気圧されずに、堂々と顔を見て宣言できる。
私は垂らしていた頭をあげ、アリシアに真っ直ぐに視線を合わせる。
「私は――みんなが本当の笑顔を浮かべられる国にしたい。――そして魔族とだって笑い合えるような、そんな国にしたいです」
「へー、遊んでたわけじゃないんだね」
アリシアは集まったみんなを一瞥し、感心したように声を上げる。
私の言葉に動揺する民はいない。
ずっと、ずっと……。分かってもらえるまで、分かり合えるまで……私はみんなに語り続けた。
ルミエに協力はしてもらったけど、それでも彼女の力は使っていない。ただ『魔族』である彼女に手伝ってもらっただけだ。彼女に協力を取り付けるのにアリシア並みの食費がかかったけど……。
「よし。ならヘレナが王になることをここにわたし――アリシア・ラスフィーナが承認しよう!」
そういえばアリシアの名前ってそんなでしたっけ。初めて会った時に聞いた以来なのですっかり忘れていました。
ということはアリシアの国の名前って――
「この者――ヘレナ・キレリア。この者はこの瞬間より王となった! その証としてこの冠を授けよう!」
「ありがとう、ございます」
感極まって、ではないが、返す言葉が少し震えてしまった。
しかしアリシアは気にすることなく。そっとわたしの頭に冠を乗せる。
その瞬間――眩い光が当たり一面を覆い隠す。
そして私の中の『力』と王冠に内包された『力』が結びつくのを感じた。
なんてことないなんてない。確かに王にとってこれは必要な力だ。必要だけど、些か過剰すぎないか?
光が収まると、ぼーっとどこかを見つめる私と満足げに頷くアリシアの姿があった。
「よしよし。結構適当に作ったから不安だったけど、どうやらちゃんと繋がったようだね」
「な⁉︎ 急ごしらえのものを渡さないでくださいよ! これ、失敗したらヤバいやつですよね⁉︎ ヤバイやつですよね⁉︎」
「え? あ、大丈夫だよ。死にはしないからさ。死ななきゃ安いよ」
「安くないです‼︎」
「そう? あ、そういえおめでと〜。堅っ苦しいのも終わったし、うちくる? 宴くらいなら開いてあげるよ?」
「あなたは温度差が凄すぎますよ‼︎」
さっきまでの風格は何処へやら。
住民たちは呆気にとられ、へリック様はやれやれと頭を抱えている。来賓として来てくれたレティノア様はクスクスと小さく笑ってらっしゃる。
そういう私も解放されたように笑い声を上げている。
終わった。色々なものが今日をもってひと段落。
さりとてこの瞬間より始まる。
まだまだ問題は山積みだし、やりたいことだってある。魔族との関係も心配だ。
でも差し当たっては美味しいものを食べるのがいいと思う。
空腹ではなんとやら、だ。あれ? 腹が減っては、だったかな? まぁアリシアが言ってたことだし、どちらでも意味は通るでしょう。
「あ、ちょっとそんなに揺らさないでください⁉︎」
「うふふん。それは運動せずにぐーたらしてたヘレナが悪いよ」
「で、でもぉ〜」
締め付けられて苦しいと分かっているくせして、アリシアは私を揺さぶってくる。
にこにこの満面笑みがカチンと頭にくるが……。アリシアが戻って来たんだな、と深く実感して嬉しく思ってしまっている……。
うぅ……今日は食べまくってやるので覚悟していて下さい……。




