32話 強さ
「あなたたちは魔族をどう思いますか?」
開口1番に黒髪君がそう問うてきた。
わたしたちは今、昨日も訪れた甘味処で黒髪君たちと向かい合う形で席を共にしている。
朝起きて、並ぶのやだなぁとふて寝していたら、ヘレナに無理矢理起こされ、おぶられて連れてこられた。ただ、結果的に並ばずに入れたので気分はそこまで悪くなっていない。
なんと、黒髪君たちが先に並んでいてくれて、店に言ってわたしたちも中に入れてもらえたのだ。
そして適当に注文した後、改めて自己紹介をした。
目の前で真剣な目をしている黒髪君の名前はニシタニ・トーヤ。ニシタニは家名らしいが貴族じゃ無いそうだ。
そしてもじもじと机の下で手を組み替えしている黒髪ちゃんはアダチ・マイ。この子もトーヤと同じで貴族じゃない。あと同郷らしい
「ん〜どうって言われてもね〜。正直興味がない」
わたしは聞かれたことに適当に答える。マジで興味ないしね。
トーヤたちは曖昧に相槌を打ち、今度はヘレナに視線を向ける。
そしてヘレナはちょっと気まずそうに頰をかいて答える。
「私は……そうですね。人種に害をもたらす者は嫌……ですね」
ちらっとわたしの方を見てそう言い、なんでそんなことを? と黒髪君――トーヤに返す。
すると、彼らはお互いの顔を見合わして決意したような様子で、握りこぶしを作って話し出す。
「もうすぐ……この街に強大な魔族が攻めてくるんです」
「え⁉︎」
トーヤがそう言うと、ヘレナは口に手を当てて驚きの声を上げる。また、わたしはふーんと興味なさげに反応を返し、店員が持って来てくれたものをパクッと一口食べる。
「ん〜おいしい〜。『まんじゅう』ってのもいいねぇ〜」
『まんじゅう』白い皮の中に赤紫のなにかが入ったものだ。品書きのはじめに書いてあったから頼んだのだ。まぁ全種類食うつもりなんだけどさ。
すると、場の空気に合わないような能天気なわたしにヘレナが突っかかってくる。
「な、何をアホなこと言っているんですか⁉︎ 今この人たち大変なことを言いましたよ⁉︎」
わたしの肩をぶんぶんと揺さぶって顔を覗き込んでくる。
うざいなぁと思いながら、わたしはヘレナを引き剥がし、もう一つ『まんじゅう』を口に入れて言う。
「落ち着きなって。どうせわたしがいるんだしヘレナは絶対に死なないからさ」
「そ、そういう問題じゃないですよ!」
そう叫ぶと、もーもーと頭をぽんぽんと殴ってくる。
まぁヘレナが言わんとしているのことはわかる。どうせ街の人種たちを気にしているのだろう。
だけど……正直言ってヘレナでもどうにか出来るとは思うんだよね。魔族の集団とやらがどれくらいかは知らないけど、10文字使って範囲爆撃すればいいのだ。多分それで大抵の魔族はぶっ殺せる。
あぁうるさい! とヘレナとヤイヤイ言っていると、そこに割り込んでくる声があった。
「あの、ヘレナさんが絶対に死なないって……どう言うこと……なの?」
細々と鈴のような声で聞いて来たのはトーヤの隣に座る白い猫耳ちゃんだ。彼女の名前は……確かミュリアだった気がする。
わたしは一旦ヘレナとの取っ組み合いを止め、首を傾げているミュリアに視線を向ける。
「それは……アリ――」
「わたしがヘレナなの護衛だからだよ」
ヘレナも何か言おうとしていたようで、悪いかなぁと思いつつも遮って淡々と答える。
すると、今度はミュリアのしっぽを頻りに撫でていた銀髪エルフが口を開く。
「やはり貴女にはそれだけの実力があるのですね」
凛としてそう言い、わたしをじっと見つめてくる。
彼女の名はレイリ。ずっと思っていたのだが、トーヤやマイだけでなく、このエルフや猫の獣人、ドワーフも珍しい。
そもそも獣人には天然の白髪なんていないはずだし、エルフの髪も通常は金色だ。
そして、のでーと半目で天井を見上げているドワーフ。彼女の名はアネスと言って、鍛治や裁縫、製薬などなど……なんでもこなせるらしい。わたしよりもちっこくて、そしてまだ若いだろうにそれだけ出来るのは珍しい。何せドワーフは一生をかけて一つのことに打ち込むような性質だからだ。
わたしはそんな彼女らを、うふふんと声を上げながら見る。
「まぁ、強いよ」
「そうですか」
そうだよ。なんたってわたしだからね。そうやって胸を張るが、レイリの言ったことで気になる点が一つあった。
わたしはおもむろにそれを訪ねる。
「ねぇ、やはりって言ってたけど……感とかじゃないよね?」
スッと目を細めてレイリに問うと、身を硬くする彼女に代わりに、今までもじもじしていたマイが口を開く。
「あ、あの……えっと……。わたしと冬夜は他人の『ステータス』を見ることが出来るんです。それで昨日貴女たちのも見てしまって……。で、でもアリシアさんのだけ見れなかったんです」
だから相当お強いのかなぁと。そうマイは曖昧に笑みを浮かべながら言う。
マイの言った『ステータス』はあのアホの魔法の影響下にあるものにしか持てないものだ。だからわたしやルミエなんかは『ステータス』がない。
まぁ裏返せば、ステータスがない=強い、ってのはあながち間違っていない。
「へぇ……そんな『スキル』もあるんだ。知ってた? ヘレナ」
わたしはマイを細目で見つめたまま聞く。
するとヘレナはふるふると首を横に振って、知りませんよそんなのと答えた。
ヘレナは学者だし、色々なスキルを知っているだろう。しかしそのヘレナが聞き覚えないとなると、きっと珍しいものなのだろう。それに昨日魔法が使われたような感じはなかったし、『スキル』なのは確実だ。
全く……奴はそう言う小細工は群を抜いて上手いからなぁ。すごい変化球でビックリだよ。
わたしはがしがしと頭をかいて、まぁいいよと小さくこぼす。そしてやっと運ばれて来た『どらやき』にパクついてむしゃむしゃしながら彼らにのほほんと聞く。
「で? 強いって分かったからこうして場を設けたの? あと悪いなんて思ってないけど、わたしは魔族の襲撃云々には関わらないよ。まぁヘレナはどうかは知らないけどね」
言って熱いお茶の入ったコップを傾け、口の甘ったるさを流し込む。
それからしばらく沈黙がおり、次は何食べようかなぁとメニューを眺めていると、横から肩をトントンと突かれた。
「なに……?」
わたしはそれにちょと不満げになりながら、メニューから顔を上げてヘレナの方に視線をやる。
するとヘレナは困ったように眉を下げていた。
「あの……どうにかなりませんか? アーレンキーでも助けてくれましたし」
彼女は、どうですか? とでも言いたげに瞳をゆらしながら、じっとわたしを見つめてくる。
ヘレナが内心思っていることはわかる。しかし、わたしはあくまで中立をうたっている。アーレンキーの時にヘレナに手を貸したのは、イライラしていたのと酔っていたこと、それとヘレナの魔力量を考慮していなかったからだ。
曖昧な認識で護衛対象を危険な場に放り込んでしまったことへの代価として、わたしは手を出したのだ。
だけど今回の件はそんな手を貸す理由がない。この甘味処がなくなるのはイタイことだけど、王都に行けば本店があるらしいしそれでいいんじゃないかなぁ。
ちょっと考えてみたけど、結局はそんな答えにたどり着き、わたしは『どらやき』を完食してからヘレナに言う。
「うーん、やっぱり今回は手を貸さない。アーレンキーの時はわたしの失敗があったから手伝っただけ」
「そんな……いえ、すみません」
ヘレナはわたしの言葉を受け深くうな垂れる。そして謝罪の言葉を口にしたのは、魔族であるわたしに同族殺しを依頼してしまったからだろう。
もう何度目になるかだけど、わたしは別にそんなことは興味がないし忌避もしていない。
そもそも『死』についてもあまり頓着がない。何せ人種は死んだところで転生するのだ。また魔族や魔物などの『魔種』はとどのつまり死ぬために発生するのだ。魔種にとって『死』とは早いか遅いかの違いしかない。
わたしはヘレナに声をかけることなく、次は『ようかん』なるものに手を出す。
「ん〜これもいい甘さで美味しいよ〜」
そうやって呑気に楽しんでいると、目の前のマイがバンッと机を叩き、うつむいて大きな声を出す。
「あ、あなたは、人が大勢死んでもいいと言うんですか⁉︎」
肩を震わしてそう言うマイをただぼーっと眺め、ようかんを少し切って口に運ぶ。
そして半分くらい食べた頃に、わたしはそっと口を開く。
「まぁヘレナには悪いけど、全く興味がない。放っておけばすぐ増えるし、そもそも魔族に個人的な恨みなんてないしね。殺す意味がない。まぁこの甘味処がちょっと惜しいけど……王都に行けばいいしね」
パクッともう一口して、それにねと話を続ける。
「所詮この世は強きものが笑うんだよ」
ただ淡々と……当たり前のことをこの席に座る皆に言う。トーヤたちとヘレナは歯を食いしばり耐えるようにわたしに言葉を聞き、言い返す言葉を探している。
そんな中ヘレナがバッと顔をあげ、震える声で問うてくる。
「な、なら……。力がないものはただ泣く事しか出来ないのですか……! そんなの……酷すぎます⁉︎」
ギュッと拳を作り、強張らせながら苦しげに顔を歪ませ、ヘレナは唇を噛む。
それを見て、なんて言おうかなぁなんて考えながら『ようかん』を小さくしていく。そして皿の上に何もなくなったとき、わたしは襟元を掻きながら言葉を出す。
「ん〜どうなんだろうね」
言って、わたしは目元に涙を浮かべているヘレナと、うつむいて歯を食いしばっているトーヤたちを見据え、出来るだけ柔らかい声をだす。
「『強い』ってさ、肉体や魔法の『強さ』を指さないと思うんだよ」
「……どう言う……ことですか?」
言葉を受けたヘレナはそっと涙を拭き、途切れ途切れにそう言った。そして、トーヤたちも顔を上げ、わたしの方へ視線を送っている。
わたしはそっとみんなを見渡し、ゆっくりと話し出す。
「わたしって一回だけ完敗したことあるんだよ。ヘレナは知ってるよね?」
「……はい。胸に杭を打たれたのですよね?」
そうそうとかるく笑みを浮かべながら、それでねと継ぐ。
「わたしを負かしたのって、わたしがその気になれば簡単にひねり潰せる程度のやつなんだよ」
「そ、そうなのか?」
驚くようにトーヤが言う。
うんうんとわたしはそれに頷く。
「ただ手先が器用でなだけ。まぁあれも君らと比べれば相当『力』は強いんだけどさ。わたしから見たらすっごく弱いわけでね……でも負けた。それもただの負けじゃなくて、完全な敗北」
あの時は本当に悔しくて悔しくて……絶対泣かしてやろう! って思ったけど、あのアホを負かすイメージが全く出来なかった。
そんなことを懐かしむように思い出しながら、わたしは彼らに『強さ』ってのを教えてあげる。
「わたしは確かに『力』は強いよ? でも、『強くない』。多分……わたしはどうあがいてもあのアホには勝てないと思う。そう言うのが本当の『強さ』ってものだよ」
言うと、彼らは深く考え込む様子を見せる。
まぁ曖昧にしか言っていないからね。きっちりと理解するのに時間がかかっているのだろう。
ただ……なんだ。並ばずこの甘味処に入れた礼として、ちゃんと分かりやすく言ってあげよう。
わたしはトーヤたちに向き直り、しっかりと目を見て言葉を紡ぐ。
「君たちは開口1番に助けを求めようとした。わたしが強いだろうからってね」
「それは……」
トーヤは何かを言おうとして、しかし言い淀み、視線を下げている。マイたちは何か言うことがないのか? と彼女らをみるも、同じくうつむいてしまう。
はぁ、と小さく息をついて、わたしはまた皿に手を伸ばす。
「まぁ君たちは敵方の魔族にでも会いでもしたのかな? それで力の差を知った……合ってるよね?」
わたしは『みずようかん』を口に運びながら、昔見た頑張り屋さんを懐かしく思いそう言う。
すると一行は皆驚いたような表情を見せ、マイがなんで分かったんですか? と気後れしながら聞いてきた。
わたしはうふふんとわらい、それはねぇ〜とにやにやする。
「君たちって、人種のクセに結構強い部類だよね。それこそ、そこらの魔族くらい簡単にぶっ殺せるくらいには」
聞くと、トーヤは苦笑いを浮かべ頰をかいて答える。
「まぁ……そうですね」
「ふふん。まぁ全力出したヘレナのが強いんだけどね〜」
「はへ⁉︎」
なんかヘレナがすっごい面白い顔をしているけど……知らない。どういうことですかー! と詰め寄ってくるが……知らない。
今はヘレナを構う場合じゃない。わたしは纏わりつくヘレナを剥がし、彼らににこっと笑みを向ける。
「そんな強い君たちがかなり上位の魔族にあってボコボコにされて、どうせあがいて見せろ! だなんてその魔族に言われたんでしょ? その時襲撃のことを知った。……違う?」
「あ、合ってます‼︎ な、何故全部分かったんですか⁉︎」
おっと、トーヤ君……君もヘレナタイプでウザくなりそうで困るって……。まぁなんで分かったかだなんて……そりゃぁ――
「魔族ってそう言うのがメッチャ好きなアホなんだよ。なんかすぐ威張って傲慢になるし、てか大体の行動原理が共通しているからね」
「そ、そうなんですか?」
「うんそうともさ。マイ君。『力』が強い魔族ほどそんな傾向にある。……まぁ一定の域を超えると、逆にすっごく適当な性格になるんだけどねぇ」
そっとそんなことを付け加えると、ヘレナがあぁ〜とやけに大きく納得したような声を漏らしていた。わたしはそんな失礼なヘレナを締めつつ、彼らにそっと告げる。
「確かにその魔族って強いんだと思うけどさ。君たちでも十分に勝てるとは思うよ。まぁでも、今の君たちでは無理だけどさ」
言うと、トーヤたちが顔にハテナマークを浮かべている。
わたしは仕方ないなぁなんて思いながら、ちょっと笑って言う。
「君たちは逃げてしまっている。その魔族から……戦いからね」
「そ、それは……」
「まぁ最後までね。君たちはもう『心』が弱くなってしまっている。それじゃあ勝てないよ。勝ちたいなら『心』を強く持たなきゃね」
少なくとも、あの子は絶対に諦めたりはしなかった。どんな強敵に出会っても、どんな困難にぶち当たっても……たたった一人で小さな剣をがむしゃらに振るっていた。
わたしは、それにねとふっと楽しむように笑みをこぼし、話を続ける。
「トーヤは神から祝福をもらっているでしょ? あいつは『心』ってのが好きみたいだからさ、必至にすれば……きっと手を貸してくれると思うよ」
そう優しく微笑みながら言って、心の中では、絶対に手を貸してやれよ? とあのアホにわたしの声を届けていた。いやね? いざ戦闘になって何もありませんでしたー、ってなればわたしの面目丸つぶれじゃん? だからしょうがないよね、うん。
わたしはそっとコップに口をつけ一息吐く。
「まぁどうせヘレナも戦いに出ると思うし、正直苦戦しないと思うよ?」
「そ、そうなのか!」
「あの! 過大評価過ぎませんか⁉︎ 私戦闘経験そこまでないんですけど⁉︎」
「あはは〜マジで大丈夫だって。その気になればヘレナが12文字使えば解決だよ〜」
言って、彼らが相談し合うのを静かにして待ち、しばらくして、頑張ろう! って結論が出たらしい。
わたしはそれを見届け、ふふーんと鼻を鳴らし、そろそろ真剣な話もこれでおしまいと言って、次々に運ばれてくるお菓子に手をつけていく。
「ん〜この店のお菓子って全部美味しいんだね! この『なまがし』はすっごく綺麗だし、『もち』とか『だんご』もすっごく種類があって最高だよ! もうこれを開発したこの王国をたたえて魔王を消しとばしてきてもいいくらいだよ!」
『なまがし』の乗った皿を掲げ、讃えるようにそう言うのと、トーヤがあはは、と何か吹っ切れた様子で笑みを浮かべていた。
「そうだな。これは『和菓子』って言って、俺や舞の故郷での伝統的なお菓子なんだよ」
「あれ? そうなの? なんだ、パクっただけななんだ。……くっそう、褒めるんじゃなかった」
ふへ〜とうな垂れてそう言うと、今度はマイが面白そうに声を上げ、涙をそっと拭う。
「あはは、アリシアさんはなんだか、不思議な人ですね。それと、和菓子は王国が真似たんじゃなくて、私たちのクラスメイトの誰かが伝えたんですよ」
「へー……」
楽しげな声で話したマイの言葉に、わたしは少し引っかかりを覚え、ついマイをジッと目を細めて見てしまう。
『くらすめいと』だなんて……そんな言葉、わたしは知らない。『わがし』や『だんご』みたいに新しい商品名ならば知らなくても疑問に思うことなんてないだろう。
しかし『くらすめいと』なるものはマイの話し方から察するに、多数または少数の者たちを指す言葉だろう。それはマイの造語か? と疑ったがトーヤには通じているようだ。わたしが知らないだけかとも考えたが、ヘレナ、それとミュリア、レイリ、アネスたちにも伝わっていないように思えた。
わたしは『なまがし』を口に運びながら深く考え込む。……しかしらちがあかないので、その疑問をトーヤとマイに問う。
「ねぇ『くらすめいと』って、なに? どこの言葉?」
「そ、それは……!」
マズイことを聞かれた。とトーヤとマイが揃って一瞬顔を強張らせ、そしてなんでもないように装ってマイが言葉を出す。
「わ、私たちの国で使われている言葉ですよ。こっちでは珍しいですよね〜」
取り繕って出てきたそんな言葉には一応嘘は含まれていないようだ。
「何か気になったことがあるのですか? その国独自の言葉なんて知らなくて当然ですよ」
トーヤたちに厳しい視線を送っているわたしに疑問を持ったのか、不思議そうな顔をしてヘレナが問うてきた。
確かに嘘はなかった。知らない国の言葉かもしれない。……だけど、やはり何かが胸につっかえるのだ。
だから一つ、聞いてみたいことがある。
「ヘレナはちょっと黙っててね。……トーヤ、マイ。君たちの国って……さて、何処にあるんだい?」
嘘偽りは許さない、と視線に意思を込めてトーヤとマイを見つめる。
そして、トーヤがひたりと汗を一筋垂らして、ゆっくりと口を開く。
「東の、島国……ですよ。小さいので、知らないと思いますよ」
聞いて、わたしはふふっと口元を吊り上げて笑みを浮かべる。
そして、立ち上がって、心底可笑しそうに……楽しそうに、高らかとヘレナに声をかける。
「ヘレナ! 魔族襲撃の対応はもうしなくていい! わたしがぶっ殺しとくからね!」
「はへ? どうしたんですか、急に……。ちょっと引きます……」
「え、あの……ヘレナさん……?」
なぜかマジな顔でドンびかれたけて、ちょっと勢いがすごく削がれてしまった。しかし、ブンブンと頭を振って心機一転して、再度高らかに笑う。
「うふふん。ヘレナ、どうやら旅はもうとっくに終わっていたらしい! だから今からそれについて語り合うよ!」
言って、戸惑いまくっている他の者たちを余所に、ドンと勢いよく座ってるんるんと鼻歌を歌う。
そして、その話し合いの手始めとして……。
「この店にあるお菓子、全部持ってきて‼︎ 今日はわたしの貸切にする‼︎ 文句は絶対に言わせん‼︎」
多分これが一番大事だと思うよ。うん。




