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18話 レッツ工作! バイバイ!

 ヘレナの反応を見て頭がすっかりと冷静に戻ったわたしは、これでヘレナとの旅は終わりかなぁと思っていた。しかし盗賊たちを縄で縛り終え、わたしの方まで戻ってきたヘレナの態度は普段通りであった。恐怖も拒絶もなく、いつものようであった。


 ヘレナの中でどんな会議をし、そしてその結論がどんなものだろうか……。その態度が答えだとしたら受け入れてくれたのだろうか……。

 わたしは彼女の『答え』を知らない。もしかしたらまだ『答え』が出ていなくて、とりあえずはいつも通りにしているだけなのかもしれない。彼女の頭を覗けば分かるけど、それはしないでおこう。いつか話をしなくちゃならないだろうからね……その時でいいよね。


 だからヘレナが平常であるのなら、わたしもそうするべきだ。


 盗賊の方へ目をやり、隣に立ってわたしを見ているヘレナに声をかける。



「気絶させたのはいいけどさ、どうやってあの人数を街まで運ぶの? わたし触りたくないよ?」



 言うと、ヘレナはハッとした表情を見せ、あわあわとしながら口を開く。



「そ、そうでした! どうやって運んだらいいのでしょうか⁉︎」

「いや……わたしに聞かないでよ。ヘレナってやっぱりケチでアホね」

「なぜ今のでそうなるのですか⁉︎ アホ発言はまだいいにしてもケチではないでしょう!」



 そうやって肩を震わすヘレナはやっぱりアホの子だなって思うよ。

 普段ならもう少し頭が働くんだろうけど、目の前にお金をチラつかせたらそのことばっかにその頭を使ってしまう。だからそんなヘレナはケチだねって言ったんだよー。


 うふふんと笑みを浮かべていると、なにかいい案を考えついたようだ。



「そ、そうです! 盗賊たちの馬車が近くにあるんじゃないでしょうか!」

「は? そう都合よく持ってないでしょ。あっても馬だけとかだよ、たぶん」

「いいえ、盗賊たちは私たちを奴隷にするつもりでした。きっと私たちを誰かに見られないようにするために馬車とかありますよきっと!」



 そう自信満々に言うヘレナをジト目で見返しながら言われたことを考える。


 たしかに馬車が近くにあるかもしれない。ヘレナはわたしたちを見られないようにするためにだと、そう言っているけど抵抗されないようにするためだろうね。

 まぁどっちにしろ馬車はあると思う。……だけど馬車って30人も乗れるものなのかな?



 わたしは顎に手を当て、首をひねりヘレナを見つめる。



「うーん……。まぁとりあえず馬車を探そうか」

「はい! アリシアはあちらをお願いします!」



 ヘレナは森の方を指差してそう言い、自身はその反対側に向けて走り出そうとした。

 それを待って、と声をかけて止め、手を振ってこっちに来いと伝える。



「何ですか? ここはあまり危険のないところですし、自衛もできるので護衛は必要ないですよ?」

「そうじゃなくて、スキルで探した方が早いんだよ」



 言うと、ヘレナは感慨深そうにホッと息をつく。



「……本当に貴女は便利ですね。一家に一人アリシアが欲しいですね」

「うるさい! もう、アホなこと言わないでよね。……ちょっとぞくっと来るから気おつけてね」

「へ?」



 首をコテンと傾けるヘレナをよそに、魔力を円状に薄っすらと放出していく。

 そして魔力の円を徐々に大きくしていき、ヘレナはそれが体を通り抜けるとびくっと一瞬肩を震わせた。



「な、何ですか今の⁉︎ ぞくっときました!」

「わかりやすくと言うと純粋な魔力だよ。魔力を円状に薄く放出していって通過したところを把握するもの。さっきはスキルって言ったけど、これはただの技術だよ。まぁ言葉的には同じ意味なんだけどさ」

「ど、どう言うことですか?」

「ん〜。また今度でいい? 馬車見つけちゃったよ。あぁあと、この探査方法はヘレナにも練習すれば比較的簡単に出来るようになるものだよ」



 言い終えると、まだ首を捻っているヘレナをよそにわたしはとてとてと森の中へ入っていく。


 待てくださいよ! と駆け寄ってきたヘレナと共に馬車の元へ向かっていった。



 そして、わたしたちは少し奥に入って開けた場所に停めてある二台の馬車と、木に繋がれた十数体の馬を見つけた。


 ヘレナは馬車に寄って行き、何人までなら乗れるのかを測っている。


 わたしが馬に適当に草などをやって暇つぶしをしていると、計測し終えたのかヘレナが側に来る。



「……あの馬車は良くて8人がでしょう。馬は十分な数がいるのですが……肝心の馬車が足りません……」



 どうやら最大で16匹しかあのヒューマンたちを運べないらしい。

 ただこれは馬車を見るまでなく分かっていたことだ。1、2台なら並んで走っていても違和感は少ないが、何台も馬車が並んでいたらかなり目立ってしまう。それはあいつらの本意ではないだろう。それにわざわざ馬車を使うより馬に乗って移動した方が身軽だろう。

 きっと数人で商人を装って次の街に入ってわたしたちを売るつもりだったのだろう。だからその数人を残して、他のヒューマンどもは馬でアジトか何かに帰る手筈になっていたんだと思う。


 さて……どいしようかな?



「ねぇヘレナ? 16人で我慢しない? あとは首でいいじゃん」



 とりあえずの案を出す。これが一番手っ取り早い方法だ。どうせ首だけでも人種は金を払ってくれるのだから問題はないだろう。

 しかしそう思っていたのはわたしだけだったようで、ヘレナは目をすーっとそらした。



「え、ええ。そ、それでもいいのですが、お金――じゃなくてわざわざ人殺しなんてしたくないので」



 わたしはヘレナとまったく目が合わないが、無視してジッと見つめる。



「分けるのが嫌ならわたしがしようか? 別にそれでもいいんだよ?」



 冷静に淡々と……快感を思い出さないようにそう言うと、ヘレナは考えることなく返してきた。



「だ、ダメです! それだけは絶対に! 貴女が――いえ……すみません大声を出してしまって……」

「うん別にいよん。うーん、それじゃあ馬車をもう二台作ろうか?」



 わたしは気にしてない風にそう言い、話題を変えるために決定案を出した。



「え? あ、あの……アリシアって馬車も作れちゃうのですか? 便利すぎですよ!」

「だからうるさいって! ……別に見本がって材料があるから作れるんだよ。そうじゃなかったらできないよ」

「へーそうなんですか。って! それでも十分にすごいですよ!」



 一人で盛り上がってるヘレナはひとまず横に置いておいて、わたしは馬車の方に近づいていく。そして材料として何が必要かを考察する。


 主に使われているのは木だ。だけど所々に鉄が使われているが……確か盗賊たちが剣を持っていたからそれを代用しよう。あとは天幕なんだけど、これは無しでいいよね。あんな奴らにかける慈悲は生憎持ち合わせていないからね。



「それじゃ、始めますか……」



 言うと、ひとりでにため息が出てしまった。


 だって魔力を素材にして作った方が早いからだ。しかしそうすると人種にとっては謎物質で出来た馬車になってしまうので却下だ。質問ぜめは嫌だからね。



 わたしはスキルを使ってますよアピールで両手を大きく広げる。


 はじめに持ってきたのは盗賊たちの武器だ。これは留め具などにする。

 次にそこら辺に生えている木を切り、車体や車輪を二台分加工する。それらが完成したら魔法で強制的に乾燥させる。

 そして次にそれらを組み合わしていくと……もう完成だ。


 なんと驚きの6工程だ。我ながら無駄がないなと感心しつつ、ヘレナも相当驚いてくれているようだ。

 ちなみに魔力で馬車を作るのは1工程で済む。魔力で形取る。これだけだ。やっぱり人種に合わせるとなると面倒くさいね。


 二台の馬車を作り終えたわたしはまず戸惑いまくっているヘレナを落ち着かる。


 落ち着きを取り戻したヘレナの指示に従って馬車を二台ずつで連結させ、それに馬を4体ずつで引かせる。余った馬はわたしの魔法で強制的に操り、あたかも馬自身がヘレナの指示に従って後をついてくるようにさせた。

 次に作った馬車を森からせっせと盗賊たちのいるところまで出し、ホイホイとわたしが馬車に積み込んでいった。


 そして積み終えてようやく、街に向かいましょうとヘレナが言った。

 正直なんでこんなことをやっていたんだろうと、今思い返せば馬鹿らしくなった。だってお金ならわたしがあげた赤い宝石を売ればいいからだ。たぶん……いや絶対にそっちの方が盗賊たちより多くお金がもらえるよね。


 そこまで思い至ると、はぁとついつい息をついてしまう。

 わたしの前を行くヘレナはなぜそんなにガメツイのだろう。お金なら望めばいくらでもくれてやるのに。


 そんなどうでも良い事ばかりを馬車を動かしながら考えていた。



 ***



 道中の経験則でヘレナのもう少しです、があてにならないと思っていたのだが、今回ばかりは違ったようだ。


 盗賊をボコったあの木々で囲まれた細い道を少し進み、抜ければ遠目に街が見えた。


 街が見えたとなるとすぐにその姿が大きくなっていき、街中に入る列も見えた。

 今回も並ぶことになるのかな? とうな垂れていると、どうやら盗賊の引き渡しがどうたらとかで並ばずに済むそうだ。


 そしてヘレナはその手続きを門番としている。少しすると、キッチリと武装したヒューマンが数人出て来て馬車の中にいる男たちをどこかに運び出していく。


 武装した男の一人と話しているヘレナと運び出されていく盗賊たちをわたしはぼーっと眺めている。


 ヘレナは気づいているのかな? まぁあのにやけ面は気づいていないんだろうなぁ。


 武装した男からお金の入っているであろう小袋を受け取ってヘレナはホクホク顔だ。


 どうしてわたしたちの行く先々でこうも『何か』が起こるのかな。

 そんなのもいいけど、わたしはのほほんと楽しみたいんだよね〜。



 つらつらと考えていると、ようやく手続きを終えたヘレナは手に持った小袋を掲げて嬉しそうに近づいて来た。



「アリシアー! 見てください! すっごい沢山もらえました!」

「よかったね〜。あぁわたしはいらないよ? 金になるものは腐るほどあるからね」



 言うと、ヘレナは今までの興奮から一転して、ぐったりと肩を落とした。



「う、うぅ……。全部貰えるのは嬉しいですけれど……その理由が……。私もそんなこと言ってみたいです……」

「まぁまぁ、いいじゃん今に始まったことじゃないし、これからも同じなんだからさ」

「一生貧乏ってことですか⁉︎」



 おどけたように言うと想像通りの反応を返してくれた。これだからいじり甲斐があるんだよね〜。それと、この旅を最後まで……王都に着くまでわたしから離れていかなかったら、ヘレナを一生困らないように今度はわたしが雇ってあげよう。お話係とかかな?


 わたしがそれ以降黙ってしまい、ヘレナがどうしたことか悩んでいたが、さっさと街に入ることにしたそうだ。

 ヘレナはぼーっとしているわたしの手を取り、行きますよと言って進んでいく。


 列の横を通り門をくぐると、アーレンキーの時のように閑散しているとだなんてことがなく活気があって少し騒がしい。


 内心で良かったと思いつつ、出店の料理を見ながら石畳を歩いていると、前の二つの街では見なかったモノがあった。いやわたしが見落としていただけなのかもしれない。なにせ、さも当たり前かのようにそこにあるのだから。



「ねぇ……アレはなに……」

「気になるものでもあったのですか? あぁ、アレは――」



 わたしが低く震える声で指差した先。街の表通りの……さっきの屋台がある同じ通り――



「――ただの奴隷売り場ですよ」



 ――数個の大きな檻に入れられ、粗末な服に大仰な首輪と手枷、それを鎖で繋がれている様々な人種の少年少女、成人した男や女……。そして彼ら彼女は皆一様に目が死んでいる。もはやわたしの知る――いや、教えられた人種の『それ』ではなくなっていた。



「どうしたのですか? 大丈夫ですか? …………アリシア? アリシア⁉︎」



 もうわたしはどうにかなりそうだった。それこそ人種を滅ぼそうかと本気で思うくらいに……。

 檻の中にいる人種たちを見たとき、そしてヘレナが何なのかを説明してくれたとき、わたしは頭の中がぐちゃぐちゃにされるような感覚を受けた。

 そのせいで少しでも見たくないと頭を抱え、またひどい目眩がして思わず立っていられなくなってしまいヘレナにバタッと倒れかかってしまった。


 突然倒れるように寄りかかって来たわたしをヘレナはとても心配したようにしている。こんな街中だと言うのに、取り乱して頭を抱えているわたしの肩を強く揺さぶり、肩を叩いて大声でわたしに名を呼び正気に戻そうとしてくれている。


 だけど今のわたしにはその全てが聞こえていても頭に入ってこなかった。


 今のわたしの頭ははもうどうしようもないほどにめちゃくちゃのぐちゃぐちゃだ。盗賊を蹴散らした時に感じた快楽なんて比じゃないほどに怒りで満たされていた。



 あぁ、本当にどうしてくれようか……。ゴミから聞いて存在だけは知っていた。だけどそれは裏の人種がしている『罪』なのだと思っていた。だからこそわたしは『まだ』許せた。

 だけどなんだ……アレは。檻をの前を平然と横切る住人、さも当たり前のように『奴隷』といったヘレナ。

 人種の世界では『あんなモノ』が一般的なものなのか! 同じ人種に枷をつけ鎖でつなぎ、檻の中に入れて商品に。

 そして、その檻の中の人種たちは…………もう取り返しがつかない。


 世界と同等のわたしをもってしても『それ』だけは手の施しようがない。

 唯一と言ってもいいわたしが出来ないこと。どんな魔法――奇跡を使っても『それ』だけは無理なのだ。


 きっと彼らは何かをされたのだろう……その結果で『感情』がなくなっている。それはつまり『それ』が壊れてしまっている……。


 わたしがあの子から教えられた『それ』。普段はアホで仕方がないあの子だけど……『それ』のお陰でこうしてわたしは生きていられる。


 彼女は一体何をしているんだろうか……見ているんだろ? この世で一番見晴らしのいいそこでこの惨状を見ているんだろ? ならどうにかしてやれよ……。

 わたしにしたように、哀れんでそうしたように救ってやれよ!


 ――彼らの『心』を救ってやれよ!



 次の瞬間わたしの意識がプツッと消えるのを感じた。これはわたしが発生してから2回目の本当の気絶だ。


 暗くなっていく視界の中思う。


 わたしがこんなに衝撃を受けたんだ。あの子はどれだけなのだろうか。

 わたしよりも長い時間この光景を見ていたはずのあの子はなぜ動かないのか……。


 いや、忘れていたけど動かないではなく『動けない』だったっけ……そういえばわたしのせいでそうなったよね。



 ……ほんと、わたしはダメダメだよね。

……えーっと、なんだか展開するのが早すぎて置いて行ってる気しかしませんね……。


なぜでしょうか? どうしても早くなってしまいます……。もうちょっとゆっくりにと思えば思うほど早くなってしまう……。


うぅ……精進あるのみですね。

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