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13話 私は…… (sideヘレナ)

 私はただ小さくなっていく背中をただ見つめていることしかできなかった。


 アリシアに言われたことがまだ自分の中で消化できていないのだ。

 この街に危機が迫って来ていると、現状を打破できるのはアリシアにもらったこれらだけだと……。

 そしてそれを使って、自分は手助けしないから私がこの街をどうにかしろ、そうあの不思議な少女は言った。



 あの子は初めて見たときから『特別』だと、なんとなくだけど思っていた。

 あの薄暗い遺跡の中で、彼女の黄金の髪はほのかに光っているように見えた。いつもふざけたことを言って私をからかってくるけれど、あの青い炎が揺らいでいるような瞳にはどうしようもない『力』が見てとれた。


 そしてアリシアの口調から、途方も無い量のスキルを所持しているのがありありと伝わってくる。しかもその全てが『規格外』だ。少なくとも異空間を開くスキルなんて知らないし、遺跡の時に見せた『魔眼』もありえない。さも気にしたことのないように粉々にしたなんて、あのスキルは魔力の消費が少ないのだろうか……。


 背が小さく、精神も一見幼く見える彼女は『不死』の存在で年上だそうだ。もちろん普通なら私だって簡単に信じなかったが、あの強力なスキルを見たためにありえない話じゃないな。そう思ってしまった。

 彼女の力は、長年生きていくつものダンジョンを攻略した結果なのだろうと私は予測した。


 しかし果たしてそれは正しいのだろうか……? 正しいと思っている頭の片隅で、本当はアリシアの言ってることはデタラメじゃないのか? そう考えている私がいる。


 アリシアの使う『スキル』は私の知っているそれとはなんとなく違うような気がするのだ。ただ、どこがどう違うのかが分からない……。本当になんとなくだが、彼女が『スキル』を使った時にとてつもない『気持ち悪さ』が感じられるのだ。


 それは程度は違うが魔物と対峙している時の感覚に似ていた。


 彼女が『不死』の存在で『人種』の域を外れたからなんだと、そう説明されて一応は納得できた。……しかし、もし彼女が『魔族』なら……そんな風に考えたのも事実だ。



 現在、人種は『魔王』の侵略に怯えている。ここは魔族のいる土地からかなり離れているのでそこまでの緊張感がないけれど、北上していくとかなり切羽詰まっている感じがあった。


 私は考古学が幼い頃から好きで、いつか古代の人が残した遺跡を巡りたかった。それは今回遺跡の調査をわざわざ学園に休暇をもらって行っている理由の一つではある。


 ただしそれが一番の理由ではない――


 私が遺跡調査に来た理由……それは国の指示で『人魔期』以前の魔道具や魔法式を手に入れるためだ。


 人魔期とは、その後に起こる魔王誕生、そして文明のほとんどがその魔王によって滅ぼさた『暗黒期』以前の時期のことだ。

 人魔期以前の『創世期』に神が前半でこの地を作ったと言われ、後半で『人種』である、『ヒューマン』『エルフ』『ドワーフ』『獣人』を生み出し、それぞれに知恵を与えたという。


 そして、神が地上から天界に戻って以降、そこから『人魔期』といい、『魔種』である『魔族』と『魔物』が現れだした。当時の人々はそれと対抗するために必死に力と技術を磨いたらしい。


 現在は『新世期』と呼ばれていて、『暗黒期』の際に失われた技術を復興させようとしているのだ。そして目下の課題は『勇者』をどうにか召喚することだ。

 暗黒期に人種を滅ぼそうとしていた魔王を討伐したのは異世界より現れた『勇者』と名乗る一人の青年だったそうだ。


 勇者が神によって遣わされたのか、あるいは魔法か魔道具か……いずれかは分からないが、召喚方法を見つけねば『暗黒期』の再現になりかねない。



 果たしてあの不思議で不自然な少女――アリシアはどちらなのだろうか……。人種(こちら)魔種(あちら)なのか……。味方であればこの上なく頼もしいですけれど、もし……もし敵対するというのなら絶望……ただそれだけじゃないでしょうか。


 彼女の苦戦する姿が全く思い浮かばない。それこそ勇者を召喚できたとして、あの子が手をかざしてそれらを鼻歌交じりに消し去る姿がハッキリと想像出来てしまう。


 アリシアはこのただの棒のような魔道具と神の知識を、まるで嫌なものを見る目で渡してくれた。

 それは彼女が言ったことが本当だからなのか、それとも魔族だからなのか……。


 そして魔族だった場合、彼女はそれらが人種に渡ってもなんら問題ないことを示している。


 いつもからかってくる時や、ご飯を美味しそうに食べている時は危険な感じが全くしない。……ただ時々見せる底を見せない態度が……もしかしたらと思ってしまう。


 ――もしかしたら現代を『暗黒期』に導くのが……



 そこまで考えた私は首をぶんぶんと振って、違う、とそう思う。


 あんなに無邪気に笑う彼女だ。遺跡で見も知らない私を助けてくれた彼女だ。今のこの街の現状をどうにかするキッカケをくれた彼女だ。

 彼女はあの強さがあって、多分この街のことも片手で終わらせられるのだろう。だというのに手は貸さないと冷たく言ってふらっと街中に消えて行ったけれど……。最後に見せた甘さを私は信じたいと思う。アリシアの優しさを信じたいと思う。


 アリシアがどうであろうと……きっと、あの子には笑ってご飯を食べている姿が一番似合っている。



 だから私は歩き出そう。とりあえずは彼女の期待に応えられるように、そしてこの街をどうにかするために。


 カーコフ家は代々人助けを一番とする家だ。そのせいで今では男爵位になってしまったけれど、それでもよかったと、胸を張れます。


 私は石畳の街道を強く踏み出した。



 ***



 決意を決めた私は、とりあえず拠点を確保しようと宿屋に向かったがそこは無人であった。

 申し訳ないと思いながら、私は少なくないお金をカウンターに置いて宿の一室を使わせてもらうことにした。


 そして解析用の魔道具を収納ポーチから机の上に取り出していき、最後にアリシアからもらった短いただの棒に見える魔道具と、神の知識である宝石が飾られた無骨な指輪を取り出した。



「よし、では始めましょうか」



 気合を入れるように言い、腕まくりをして机に向かう。


 まず解析するのは棒状の魔道具だ。といってもアーレンキーの街に来るまでに作業をしていて、途中途中でアリシアに、何か話してー、と邪魔されて心苦しく思いながら無視を決行し、その結果八割がた解析を終えることができた。


 解析が八割もいくと大体どんな効果を持っているのかが分かる。

 このタクトのような棒の魔道具は、どうやら空中に文字や図形を書いて固定できる魔道具らしい。そして、その際の消費魔力を抑えてくれる効果があるらしいが、そこのところよくわかっていない。多分解析器の質が悪いせいなのかもしれない。


 ただ、使い方や主な効果は知れているのでそこまで問題は無いと思う。



「問題があったらアリシアに泣きつきましょうか……。探せば持っていそうですし」



 そう思いこの魔道具のことは一先ず終わりにする。

 落ち着いて再度調べれば新たに何かわかるかも知れないと思ったけれど、やはりダメだったみたいだ。

 ……しかし、空中に文字や図形を固定する魔法は既にあるのですけれど……私も使えますし。……どうなんでしょう?



 まぁいいかと、魔道具は片隅に置いて次は指はの方を解析することにする。


 アリシアから調べて方は聞いていたけれど、一度解析器の方で調べてみましょうか。


 私は解析器に指輪を乗せ起動させる。

 そして解析器から魔法陣が現れ、ぐるぐると指輪を中心にして周り、次第に指輪を包み込むように光が現れる。


 そして――



「な⁉︎」



 パリン! という甲高い音と共に光の球が割れ魔法陣も消えて、指輪がぽとりと解析器の上に落ちた。

 私はその現象を見て素直に驚愕する。



「あの子は本当に規格外ですね……。こんなモノをいとも簡単に御しただなんて……」



 私は魔法陣が割れるという現象に聞き覚えがあった。

 新世期の人種は魔法を新たに多く生み出してきたが、魔法陣を含め魔法は神が伝えたものであり、多くは失われているが今もなお少しは残っているのだ。

 その数少ない神から伝えられた魔法陣が『解析』だ。人種が作ったものならばともかく、神によって与えられたものを『割る』だなんて、同じくらいの力あるモノでなければいけない。


 この『神の知識』はやはり――いや、当然のごとくその類なんだろう。あの時アリシアが必死になって止めたのがわかったよ……。

 アーレンキーに来るまでに聞いたことだけれど、キチンと手順さえ踏めば私でもあの青い光の球に触れていいらしいんだけどね。その手順を無視して触れて見せた彼女は一体何者なんでしょうね?



「ともかく魔道具が無理だって分かったので、自力で調べるしかないですね」



 少し息を吐き、気持ちを落ち着ける。

 これから神の遺物に触れるのだ。当然緊張する。



「ふぅ、ふぅ……ふぅ……よし!」



 平常心になり気合を入れ、アリシアに教えられた通りに指輪に魔力を通す。



「⁉︎」



 魔力を通した瞬間、私の意識は暗い闇底に沈んでいき、そのままばたりと机に倒れふす。


 わけが分からない! 取り乱しそうになる心をどうにか落ち着けさせ、真っ暗闇を見渡す。


 すると、闇の中の一角だけ青い光を発しているところがあった。



「あの光はあの時の…………行ってみましょう」



 決意をし、予想外に軽い身体に四苦八苦しながらそこへ向かった。


 そして青い光のもとにあったのは、一冊の本だった。


 この本を見た時の感想が、高そう、だったのは本当に自分の貧乏性が嫌になったが、それも致し方なかっただろう。


 その本は厚さが人差し指の関節一つ分くらいしかなく、貴族がよく買っている本の半分以下のサイズしかない。

 ただその表表紙や背、裏表紙の装飾が豪華すぎるのだ。

 主に使われているのは謎の青い光を放っている青い宝石だ。その宝石をふんだんに使い、表表紙には神様であろう美しい女性が形取られていて、裏表紙には見知らない見事な花が表現されてあった。

 そしてそれらを金のようなものと、緑の宝石、赤の宝石、などなど様々なもので彩られていて、神々しさがにじみ出ている。



「……」



 私は一体どれだけこの本に魅入っていたのだろうか? 手に取って数秒だけかも知れないし、数時間経っているかも知れない……。

 これをアリシアは嫌な顔をして渡してきたのかと思いと末恐ろしく思う。


 しかし、今はそんなことよりもこの本を読むことが先決です。


 私は本を開けようと表表紙をめくり……めくり……



「って! 開けられないのですけれど⁉︎ あれ? あれ? あっれ?」



 ぺりぺりと爪を使ってみるも一向に開けられそうにない。



 私は一体どれだけ格闘していたでしょうか……。



「あ゛あ゛あ゛! もう何が何だか分かりません! どうやって読めっていうのですか!」



 気づけは私は神の知識が書かれているであろう本を地面に投げ捨てていました……。


 そもそも開けない本が悪いのです。

 もういいです。ふて寝します。



「この本ってちょうどいい高さですね……服でくるめばいい枕になりそうです……」



 私は上着を脱いで本を包み込み、ゴロンと寝っ転がり、頭の方にそれを持って行って目を閉じます。


 幸いここは真っ暗です。服から漏れ出る光が邪魔くさいですが……大丈夫でしょう。

 ここから出る方法すら知りませんし……アリシアは助けてくれるでしょうか?



 満面の笑みを浮かべる彼女の顔を思い浮かべながら眠りに入りました。

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