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生活保護課長・森山直樹  作者: 泉北亭南風
13/24

13 横山さんが障害年金を受給した

 暦は10月に入った。季節はもうすっかり秋である。そんなある日…


 「森山課長。ちょっとご相談が…」


 岩本主任が私のところにやって来た。


 「九重病院のグループホームに入っている横山正志さんなんですが、障害年金が支給されることになりました。等級は2級で、2015年10月に遡及して認定が下りています。今月13日に、遡及分もひっくるめて一括支給されるようです」


 横山正志さん…58歳単身の統合失調症の男性である。九重病院での入院を経て、今年の4月からグループホームに入所している。


 南大阪町の近隣には大規模な精神科病院が多く、地域のサポート体制も充実しているため、他地域から入院し、快復後病院系列のグループホームに入居したり、居宅を構えたりするケースも多い。そのため、南大阪町福祉事務所の「障がい者世帯」の割合は、他の福祉事務所よりも高い。


 ちなみに入院中は、元の居住地を所管する福祉事務所が保護の実施責任を負うが、グループホームや居宅に移行すると、その現在地を所管する福祉事務所が実施責任を負うことになる。したがって、横山さんの生活保護は、南大阪町福祉事務所では、今年4月1日から開始されている。


 「岩本主任。遡及支給額はいくらくらいでしょう?」


 「九重病院の西村PSWからは、約160万円と聞いています。収入認定…でしょうか?」


 「いや。『ロクサン』と収入認定両方の処理が必要ですね」


 「ロクサン」=生活保護法第63条…保護費返還の根拠規定である。横山さんの場合、本来的には2015年10月から、月額約6万6千円の障がい年金がもらえていたはずのところ、その分を福祉事務所が立て替えていたことになる。南大阪町福祉事務所で返還請求できるのは、保護開始の今年4月分からである。したがって、約6万6千円×7ヶ月=46万2千円を横山さんに返還請求することになる。なお、2017年3月以前…大阪府南部福祉事務所時代の過支給保護費・約114万円は、便宜上収入認定処理をする。


 「ウチが余計に支払った46万円は、『ロクサン』で返してもらいます。で、残りの114万円は収入認定処理。横山さんの最低生活費は、月約13万5千円ですから、114万円あれば、8ヶ月間は生活ができることになります。医療費も、自立支援医療で賄われてますから、保護は11月1日付けで一旦廃止になりますね」


 私は岩本主任にそう告げた。


 生活保護を廃止すること…これは、生活保護法や保護の実施要領で、その要件が厳格に定められている。ケースの死亡や管外転出はわかりやすい廃止要件であるが、ケースの収入が最低生活費を上回った場合でも、概ね半年程度は最低生活が維持できるかどうかを検討した上で、廃止決定を行う。


 横山さんの場合は、遡及年金の残額で8ヶ月間は生活ができることになるため、一旦は保護廃止とせざるを得ない。しかしながら、そのお金が尽きれば再び要保護状態になるため、改めて生活保護の申請をしてもらい、保護を再開することになる。


 「九重病院の西村PSWとよく相談して進めてもらえますか? ちょっとややこしい処理になるので、横山さんが理解できるかが問題ですねぇ…。ましてや、一旦保護廃止となれば、怒られるかもしれません。岩本主任、説明大丈夫ですか?」


 「…とりあえずやってみます。難しいようなら、課長にSOSします」


 岩本主任は不安げな表情を浮かべながら、そう私に返答した。


 数日後、岩本主任は九重病院に出向き、西村PSW同席の元、横山さんへの説明を終えた。横山さんは、保護費を返した上に保護を切るとは何事か! と、かなり抵抗を示したようであるが、年金が尽きればまた保護を受けられることを聞き、最終的には納得したとのことである。

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