再び灯る明かり
「大丈夫ですか?」
西尾 灯里は膝をつき片手で頭を抑えていた、昨日知り合った同志(自分と同じMariaのファン)に話しかけた。
彼は苦しそうにしていたが大丈夫といってスグに立ち上がった。
「どうしたんですか?見かけたんで話しかけようと思ったら急に具合悪そうにするんですもん…ビックリしましたよ…。」
灯里は心配そうに北川の具合を伺いながらそう言った。
「もう大丈夫…ホントに…。ありがと。」
あからかにまだ具合は悪そうだったが片手で心配そうにする灯里を制しながらそう答えた。
「いや、全然大丈夫そうに見えないんですけど…。応接室みたいな場所行きましょ?私も付いてきますから!」
周りから女子高校生が具合の悪そうな駅員さんを介抱しようとしている、おかしな光景になっていたが灯里は気にせず北川を応接室に連れていこうとした。
「いや、ホントに大丈夫だから…。ほらっ、ね?」
北川は灯里に具合が悪くないことを伝えるため立ち上がり両手を広げ笑顔でそう答えた。
「そうですか…。具合悪かったら言ってくださいね?」
灯里は北川を信用しそれ以上の心配はしなかった。
「え〜と、花澤さんでしたっけ?あれからバンドのメンバーは揃いました?」
北川は昨日、灯里が言っていた事を思い出しながら灯里に聞いた。
「あぁ、覚えてくださってたんですね!!」
灯里は一気に明るい表情になり、喜びを浮かべた。
「昨日、チラシを作って生徒会にお願いして掲示板に提示して貰いました!それで、今日、集まってくださった皆さんに説明会をするんです!」
「手応えありそうな感じだね。」
「はい!高校生でバンドに興味を持ってる人は多いので多分集まると思います!」
灯里は拳を握りガッツポーズを取りながらこの後の説明会が楽しみで仕方ない様子だった。150cmの小柄な彼女のそう姿はとても微笑ましいものだった。
「Maria好きな人が集まるといいですね。」
「はい!語り合いながら一緒に演奏出来るのは最高ですよね〜!」
「そういえば何ですけど、私、おにーさんのお名前聞いてなかったんですけどなんてお名前なんですか?」
灯里は北川を見つめそう聞いた。
「あぁ、そういえばそうでした。教えてもらいましたけど俺の名前は教えてなかったですね。北川 れ…。」
北川は名前を言いかけた途中で何かに気づいたように言うのを辞めた。北川は昨日、灯里にMariaのメンバーだったRENと間違われた事を思い出し、今自分が本名を口にすれば自分がRENだという事がバレてしまうと思っからだった。
「ん?どうかされました?また、具合でも…」
「いやいや!そうじゃない。え〜と、北川 蓮二!北川 蓮二って言うんだ…改めてよろしくね?」
北川は少し焦りながら、れと口走ってしまった手前、れから始まるありそうな名前を考えすぐさま答えた。
灯里は蓮二という名前を聞き、少し考えこむ素振りをした。
(いや?待てよ、蓮二って蓮とそんな変わんねぇしマズくね?ヤバイよね…、なんか花澤さん、考え込んじゃってるし…。)
「北川 蓮二さん…ですか…。」
灯里がそう小声で呟いたのを聞き、北川は息を飲んで灯里の次の言葉を待った。緊張感で冷や汗をかくなか、灯里は考え込むことをやめ北川の方へ向き直った。
「わかりました!!よろしくお願いしますね?北川さん!」
どうやら、北川は疑われることはなく事無くを終えた。
「あ、うん…。よろしくね。」
北川は少し拍子抜けだったため変な返事の仕方をしてしまった。
「北川さんってMariaに詳しいみたいでしたけど、バンドとかに興味あったりとかやってたりとかしてたんですか?」
「え?いや、まぁちょっとやってた事も無くはないけど…。」
北川はこれぐらいはいいだろうと思い、バンドやっていた事は伝えた。
「でも、どうして?まさかとは思うけど勧誘じゃないよね?」
北川は冗談っぽく笑いながらそう聞いた。
「まさかぁ〜!勧誘じゃないですよ〜!流石に学外の人と組むのは…、確かに目指してるのはMariaみたいなバンドを作ることですが、まずは学園でみんなで楽しくやってみたいなぁ〜って思ってて…えへへぇ〜。」
灯里はまだ見ぬ仲間と学園でライブしている姿を想像しながらデレた顔をしてニヤけていた。
「だよね…。でも、本気でMariaみたいなのを目指してるなら早うちから坂木原に進出した方がいい。坂木原は無名のバンドも多いからスグに入り込めると思う、その代わり無名のバンドが多いってことはライバルが多いってことと有名になっていくのは相当難しいことだけど。」
北川は真面目な顔で夢みている灯里に悪いと思いながらも真実をキッチリ述べた。灯里はそんな北川を見て一瞬驚いた顔をしたが、スグに目を輝かせ北川を尊敬するかの様な眼差しで見つめた。
「凄いです!その通りだと思います!やっぱり北川さんはお詳しいですね!Mariaも無名の頃はよく路上でゲリラ的にライブしてたって言ってましたし、少し恥ずかしいかも知れないですがやってみます!」
「うん。その意気だよ!頑張ってね!路上ライブする時は言ってね、見に行くからさ。」
北川はなんでこんな2回しかあったことの無い女性にここまで肩入れするのか自分でも不思議だったが灯里には肩入れしたいと思えるそういった雰囲気があった、そしてそれはMariaのボーカル maiもそのような雰囲気を持っていた。maiと似たようなものを感じたからなのか北川はまだバンドすら結成していない灯里に成功して欲しいと心からそう思っていた。
その時、とっても聞きなれた調子のいい男の声で呼ばれた。
「お!蓮じゃん!!昨日ぶり!!」
北川がその声を聞き振り返るとそこにいたのは昨日「舞姫」であった成瀬 隆だった。北川は成瀬の顔を見るなり最悪だと言わんばかりに嫌な顔をした。
「ちょ!なんでそんな嫌な顔すんのよ!!」
「いや、朝からお前はキツいわ…。」
「うっわッ!ひっっどッ!」
成瀬は北川に露骨にいやがられガッカリした。
そんな2人を見て灯里は不思議そうに見ていた。その灯里に成瀬は気づき成瀬もまた仕事中の親友、北川と見知らぬ女子高校生が2人で今まで話していたのを見ていて不思議に思った。
「えっとぉ、蓮?これはどうゆうこと?俺は警察に連絡した方がいい感じ?」
「アホ。」
北川はふざけた答え方をした成瀬の脇腹を小突いた。
「お2人はお友達か何かでしょうか?」
その状況を見て綾音は2人が友人のように見え、そう聞いた。
「ん?そうだよ〜!蓮と俺はタメで友達〜!お嬢さんは?蓮とどうゆう関係?」
蓮にこんな小柄で可愛らしい友人がいたことなんて知らなかったため成瀬もまた関係を聞き返した。
「え〜と、最近知り合ったんです!北川さんがMariaのRENさんに似ていたんで話しかけたのがキッカケです!!花澤 灯里っていいます!よろしくお願いします!」
そう言った灯里を見て成瀬は目を見開き驚いた、そして、北川の方を向きアイコンタクトを取った。北川はそれに気づき、首を横に振った。
(あぁ〜、なるほどね。偶然ってわけか…。それじゃあ、RENだってことは知らないわけだね…。)
成瀬は状況をすぐさま理解し、地雷を踏まないよう気をつけた。
「俺は、成宮 悟って言うんだ…。よろしくね?」
成瀬は成宮と名乗り、笑顔で自己紹介を終えた。その時、2番線に電車が来るとアナウンスが入った。
「あ!ヤバイ、時間…。ごめんなさい!もう行きますね!また、お話しましょ!?」
「うん。それじゃ、説明会頑張ってね!」
北川は優しい表情を浮かべ微笑みながらそう言った。そんな北川をみて灯里もニコリと笑みを浮かべ昨日と同じように大きく手を振り階段を登っていった。
「いい子だね。あれは蓮のお気に入りかな?」
「ちげーよ。あんな純情無垢な子に前科持ちは最悪だろ…。Mariaみたいなバンド作りたいんだって…。なんか応援したくなってさ…。」
北川は灯里が登っていった階段をぼおっと見つめながらそう言った。
「ふ〜ん。確かに応援したくなるような子だったね。それに、性格は違うけど雰囲気は舞と似てる…。」
「お前でもそう思うのか…。つか、やっべ!仕事しないと!じゃな!」
北川は話を切り上げ仕事に戻っていった。そんな北川を成瀬は見送った。
(蓮はどうやらあぁいう雰囲気を纏った女性と縁がある、星の下生まれたんだろな…。)
成瀬はクスっと笑いながら、そんな事を考えながら2番線に乗り込んだ。
時間は移り、夜の7時。坂木原駅。
北川は今日の分の勤務を終え、仕事帰りに夕食を取っていなかったので昨日に引き続き「舞姫」に訪れていた。夜の7時ということもあって昨日よりもまだ夜更けではないためお客がたくさん入っていた。北川はお店の外に置いてある食券の自動販売機から豚骨ラーメンを買って店に入っていくと聞きなれた元気な声が戸が開くと同時に聞こえてきた。
「へい!らっしゃ〜い…って!蓮じゃない!!昨日に引き続きくるなんてアンタも暇だね〜。」
「お客に暇とか言うなよ…。これ、食券。お好みとかはいつものでいいから。」
北川はちょうど空いていたカウンター席に腰をかけ、食券を早苗に渡した。
「お!?蓮じゃねぇか!仕事、上手くいってっか?」
たまたまカウンターに腰掛けた横にはMaria時代からいろいろとお世話になっていた中川 祐二郎の姿と舞姫によく通いつめてる最上 賢治の姿があった。
中川 祐二郎 30歳 独身で新聞記者だった。容姿はメガネを掛けていて頭の良さそうに見えるがどこか胡散臭さがにじみ出ていてどうにも信用ならないような感じがしていた。中川自体は優しくMaria時代にはとても助けて貰ったりしていた。それというのも中川は新聞記者を務めると同時に趣味でラジオのパーソナリティも務めていたりしていた、そのラジオというのがとても有名で坂木原で流行っていたりしていた。中川に小さなコラム記事のネタにしてもらったりラジオで曲を流してもらったりといろいろお世話になっていたりしていた。そして、蓮は麻薬使用をした時、わざと大きく記事を書いてもらったりRENを悪く書いてもらい舞が悲劇のヒロインとなり世間から同情をかうように計らってもらったり、出所した蓮に知り合いを通じて職を提示したりしていた。蓮にとって頭の上がらない人の1人であった。
最上 賢治 30歳 独身で建築会社に務めていた。現場仕事のため流石のガタイでとても大柄な男だった。ちょっと30にしてはオヤジ臭いそのしゃべり方は現場の先輩達の影響を受けているのだとか…。とっても男らしく北川や成瀬などのMariaのメンバーはよく無名だったころ奢って貰ったりしていたりしていた。実は早苗の事が好きだったりするのだか、早苗以外の舞姫の常連(祐二郎やMariaのメンバー)にはバレていた。
「あ!祐二郎さん、賢治さん!お疲れ様っす!仕事はまぁぼちぼちって感じです。やっといろいろ覚えてきて面白くなってきました。」
「かぁぁあ!お前もすっかり社会に染っちまったなぁ。Mariaのころは社会なんてクソくらえみたいな歌ばっか歌ってたくせによぉ〜。」
最上はもう既に何杯か酒を飲んでいて、すっかり出来上がっていた。
「いや、そんな曲歌ってないっす…。反社会的じゃないだから…」
「そうだぞ!蓮はまだ初体験も終えていないピュアなんだから、そんな歌作れません!」
中川も何杯か付き合ったようで出来上がっていた。
「早苗さん、2人はいつから?」
「ん!?あぁ、ちょっと待ってな。へい!醤油2丁!おまちどう!!」
早苗は作り終えた醤油ラーメンを他のお客に出し、それから北川の方へ歩いてきた。
「え〜と、今7時だから、二時間前?つか、アンタら家は飲み屋じゃないだから!2時間もいるなよ!」
早苗は思い出したように2人を注意するとまだまだ注文が入っていたようでラーメンを作るため戻っていった。
「早苗ちゃん冷たいぞ〜!!そうやって扱うと賢治くん泣いちゃうんだぞぉ!!」
賢治は厨房へ戻る早苗の後ろ姿にそう呼びかけたが早苗は酔っ払いを無視していった。
(だめだ…。完全に酔っ払ってるしこりゃ潰れるまでコースだな…。)
「ほら!お前も飲め!蓮!!」
そう言って中川は近くにあったグラスを持ち、頼んだのだろうビールビンからお酒をついだ。
「いや!!まぁ…明日休みだしいいか…。」
北川は否定しようとしたが明日が休日だということを思い出しお酒を貰った。その時、また舞姫に新たな客が入ってきた。
「ウースッ!」
そういって入ってきたのは成瀬 隆だった。
「お!?隆!!お前も来たか!ってお前!!女連れかよ!!」
成瀬は後ろに女を2人連れていたが、北川はその女性を知っていた。その女性達もまた舞姫の常連で仲良くしていたりしていた。そして、舞の親友でもあった。
「うわ!賢治さん!酒くさ!!もう飲んでんの!?ちょっとあたし達にも奢ってよ!」
「って、美香と朝日かよ!!座れ!座れ!」
南條 美香と神木 朝日はキャバ嬢で2人ともよく仕事終わりか出勤前に舞姫に来ていたりしていた。常連がカウンターを占拠しうるさくなってきたので早苗はたまらずこちらへ酔ってきた。
「ちょっとアンタら!商売の邪魔だから座敷に移ってくれる?」
「ッ!!早苗!!賢治さん!泣いちゃうでしょ!!ほら!もう泣いてる!!」
祐二郎は涙目になって目を拭っている賢治を見せるように両手を持ち自分の方に引き寄せそう訴えたが早苗は手をあっちへ行けと言わんばかりに振り渋々、奥の座敷に移った。
「なんか、飯くいに来ただけなのに。急に宴会に変わっちゃったんだけど…。」
「俺もだよ…。まぁ、外で美香と朝日に捕まった時点でやな予感はしてたけどな…。」
北川と成瀬は前で既にドンちゃん騒ぎをしている4人を見て呟いた。
「おい!お前ら!ノリ悪いぞ!!もっと飲め!叫べ!!」
「あんま騒ぐと座敷でもうるせぇって早苗さんに怒られっぞ〜。」
「ばっか!隆!お前いつからそんな腰抜けになりやがった!ホストなんてぬるま湯使ってるからそうなったんだな!女はいつでも出来るってか!賢治に殺されるぞ!!」
中川は立ち上がり成瀬にそう熱く言った。
「もう!祐二郎さん!飲み過ぎ〜!!めんとぐせぇよ!」
成瀬はそんな中川に遂に音をあげた。
賢治はもう、飲み過ぎで一周まわって大人しくなってしまっていた。後から来た美香と朝日は出勤前だと言うのにガンガン酒を煽り祐二郎と一緒に騒ぎ立てていた。
「美香と朝日も飲み過ぎ。お前ら仕事あんだろ?もう辞めとけ。」
北川はそういってまずは近くにいた朝日の酒を飲もうとする手を止めた。
「え!?蓮くん!?ちょっと、いきなり手なんて…。大胆…。」
「は?」
朝日は頬を染めながら色っぽくそう呟いた。それを聞き逃さなかった美香が今度は騒ぎ立てた!
「あぁぁ!!!蓮が!朝日を妊娠させてる!!ちょっと!順序違うでしょ!!デキ婚なんて!おかーさん認めません!!」
「うるせぇな…。今度はなんだよ。」
北川はもう呆れながら美香を見つめそう言った。
「ごめんね!おかーさん!でも、私産みたい!!」
「ッ!朝日!!お前こんな無職の男の子供を産むのか!!」
「はぁ…。もう勝手にしてくれ…。」
北川は2人のテンションについていけず、お酒を止めることを諦めた。
「蓮!お前遂に妊娠させたか!!やったな!朝日なんて料理も出来るしなんといっても可愛い!!将来安泰だな!!に〜んしん!に〜んしん!蓮と朝日がに〜んしん!!」
中川ももうテンションがおかしく小学生のように2人をおちょくっていた。
その時座敷の戸が勢いよく開き、お玉が中川の頭に直撃した。
中川はそのまま倒れからだをピクピクさせ痙攣していた。
戸の方向を見ると鬼の形相で仁王立ちする早苗の姿があった。その姿を見て一気に美香と朝日は静かになり自分の席へと戻り正座した。早苗はその姿を確認すると何も言わずに戸を閉め、厨房に戻っていった。
「ヤバイよ…美香ちゃん…!殺されるかと思った。とゆうかたぶん中川さん死んじゃった…。」
「うん。死んだね…!確実に…。そしてあたし達も殺されるあと1歩手前だった…。」
美香と朝日は完全にビビり縮こまってしまった。
「だから、言ったろ…。今はまだマズイって…。もっと夜更けじゃねぇとドンちゃんは…。」
北川は反省する2人を見てそう言った。
「はい…。すいません。もうしません。」
二人は頭を下げ、2度と騒がないことを神(早苗)に誓った。
数分後、お玉を投げつけられた中川が意識を取り戻し頭を抑えながら起き上がった。
「いっつぅ〜。あれ?俺、寝てた?なんかすげぇ頭いてぇけど飲み過ぎた?」
「あぁ、飲み過ぎで倒れてたぞ。」
北川は知らぬが仏だと思い、真実は伝えず飲み過ぎで寝てたことにした。
「そうか。って隆!!お前いつからいた?」
「はぁ!?そっからもう記憶ねぇのかよ…。」
「悪い、蓮が来たところまでは覚えてんだけど…。」
中川は頭を抑えながら必死に記憶を辿ろうとするが思い出せずにいた。
「お玉で記憶飛んでんな…。」
「うん。飛んでるね…。早苗さん本気で殺す気だったね…。」
北川と美香は改めて早苗の恐ろしさを感じながらそう呟いた。
「つか、隆いるならちょうどいいな!ほら!これいってこい蓮も!」
中川はポケットを漁り二つの紙きれを北川と成瀬に渡した。それは何かのチケットのようだった。
「なんだこれ…。ま…いライブってこれ!舞のか?」
北川はチケットに書いてあるローマ字を読み上げながらそれが誰のライブか確認すると驚いたように顔をあげ中川をみた。
「そ!取るの苦労したんだそ〜。お前ら2人は今の舞、あんま知らねぇだろ?見てこい!」
「いや、俺ら別にこんなの行かないっすけどつか、仕事…。」
成瀬は断ろとしたが中川はそれを遮った。
「ダメだ!行ってこい!仕事は休み取れ!1回いって何も思わなれりゃそれでいい。もう俺は何もしねぇし諦める。俺が前々から言ってることあるよな?お前らはもう1度バンドをやるべきだ!」
中川はもう、酔いが覚めているのか真面目な顔で2人を見つめそう言った。
「えぇ〜舞のライブ??いいなぁ〜あたし達にはないの〜?」
美香と朝日は物欲しそうに中川を見たが中川は両手を合わせ悪びれるように持ってないことを伝えた。
「悪いな…。2枚しか取れなかった。美香と朝日にはまた今度持ってきてやる。」
そういって謝ると中川は再び2人に振り返った。
「必ず行け!蓮も隆も俺に貸しがあんだろ?貸しを返すつもりでも構わねぇから行ってこい!」
北川と成瀬は互いに見つめ、その後手にしたチケットに視線を落とした。そして数秒考え、顔をあげ中川を見つめた。
「考えさせてくれ。」
2人は一緒に同じ答えを中川に伝えた。




