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学園入学編Ⅵ

ようやくの戦闘回です!

もう次話のストックが・・・

開始の鐘が鳴ってから約10分後。

俺達4人のグループの周り360度を大勢の生徒が取り囲んでいた。

ざっと見て全1年生徒の半分はいるのではなかろうか。

その目はギラギラしていて今にも飛び掛かろうとしている。


(さてそろそろ集まってきたし頃合いか)


俺はグループ4人の中から数歩前に出ると声を張り上げ、先ほどの条件を周りの奴らに提示、というか一方的に叩きつけた。


「……っという訳だからこの条件が呑める奴らは4グループだけ相手にしてやる。もし今、呑めないってのがいるなら10分だけ時間やるから俺に触れてみろ。触れられたら無条件でプレートは譲る。ただしできなかったら条件に従う事。それと俺はここから動かないし攻撃もしない。ただし能力は使わせてもらうけどな。じゃあ考えてみてくれ。はい、スタート!」


そう言って手をバチンと打ち鳴らす。

するとさっきの俺の挑発に乗ったチンピラ風の男が走り出した。

手には刃渡り15cm程のナイフを持っている。


「おいおいぁ。そんなこと言っても大丈夫かぁ?俺の能力は投げたもの(ナイフ限定)が必ず当たる能力なんだぁ!今はお前の頭に照準を合わせたぁ!死人を出したら違反なんてルールもないから殺して奪わせてもらうぜぁ!」


チンピラ男がなにやら喚いている。

そしてその喚きに同調したかのようにもう一人が群衆の輪から躍り出てくる。


「ナイフがなんだって?ちっちゃい「ぁ」が気になって内容が入って来なかったわ。当てられるもんならやってみ。俺は動かんから」

「てめぁ…なめやがって。全身めった刺しにしてやらぁ!」


そう言うとナイフを投擲する。すると不自然な軌跡をたどってまっすぐに頭に向かって飛んでくる。

今度はそのナイフの数が2本になり更に4本になり8本になりと次第に増えていく。その本数は一瞬で100を超える数にまで増えていた。

その能力を使ったであろうチンピラ男の仲間が丁寧に説明してくれる。


「俺のぅ能力はぅ、無機物(ナイフ限定)でぃ数をぅ倍々にしていく能力ぅ。兄貴のぅ能力と合わさればぅ最強だぜぅ!」

「さすがだ弟だぁ!来てくれると信じてたぜぁ!」

「当たり前だよぅ兄貴。俺もぅやってくれると信じてたぜぅ!」


兄弟愛と言う名の茶番をたっぷりと見せてくれたチンピラブラザーズ。わざわざ能力の説明までしてくれた。

っていうか今度は「ぅ」がうざい!チンピラって何でこうナイフとか大好きで口調が変なのばっかりなんだか!

だが…


「…それじゃ届かない。」


そう言って間もなく、飛来するナイフは俺の10メートル目前で消滅した。

俺にとっては見慣れたものだが周囲の奴ら(久人以外)は皆、絶句していた。

するとチンピラブラザーズが先にも増して喚き散らす。


「おい!なんだ今のは!バリア系の能力か。なめやがって!だからお前は攻撃しないんだな!ってか出来ないんだろ!バリアの中でこそこそ時間稼いで卑怯だぞ!正々堂々と戦え!」

「そうだそうだ!でも兄貴、バリア系統の能力は時間制限があって長くても1分が限界だったはずだ。次にバリアを張れるのは効力が切れてから2分後」

「ほうほう。それはそれは難儀な縛りだな!ならあと30秒ってとこか。じゃあ躱すしかないな、この必中のナイフを!ぎゃはっはっはっ!」


なんか勘違いしてるが、まぁいいか。それに卑怯ってなんだよ。

2人で襲い掛かってくる方がよっぽど卑怯だろうが!

ってかそれよりなにより語尾の小文字たちが口調から消え失せてるぞ。

キャラ作りしてたんだな…ああでもしないと覚えて貰えないからか…

なんか不憫になってきた。

ちょこっと泣けてきて目を擦っているとまたまたチンピラブラザーズが勘違いしてきた。


「兄貴見てみろよ!あいつ泣いてるぞ!時間切れが怖くて動けないんだ!」

「ざまぁねぇな!大見得切ったのは単なるビビり隠しだったんだろうよ!せめて一思いに殺してやろう!それが終わったら貰った特権で買ったアイスの棒で墓でも建ててやる……よっ!」


最後の言葉と同時にナイフを投擲するチンピラ兄。そしてその数を増やすチンピラ弟。

ナイフの数は次第に増えていき目の前にはナイフ製の銀の壁が出来上がっていた。


「これが俺達最大の攻撃!ナイフ銀壁シルバーウォールだ!避けられるもんなら避けてみろや!」


それを見ていた燐がさすがに今回ばかりは黙ってはいられなかった。


「あれはまずいよ!能力の隙間を狙われたらさすがに秋くんが死んじゃうでしょ!助けに行かないと!」


そう言うと走り出す。だがその目の前に久人がすっと立ちはだかる。


「久人くん。今回はまずいと思うの。だから行かせて。今なら間に合う!」

「ダメだよ。秋が条件付けてやっと何とかなりそうなのに水の泡になっちゃうでしょ?それに今行ったら怒られるよ?」

「怒られるって…久人くんは心配じゃないの。幼馴染なんでしょう!なんで行かないの!」


激昂する燐を飄々と躱していく久人。

後先にしこりを残してはさすがにまずいと思ったのか仁が仲裁に入る。


「燐、落ち着け。さすがに取り乱し過ぎだ。それと久人、秋が無事だと分かっているのならはっきり大丈夫だと言ってやれ。このままじゃ誰も納得はしないぞ」


一旦クールダウンした燐は久人に早く説明しろと目で訴えかける。

最悪何かあった時、いまなら間に合うからだ。

久人も悪気があったわけではなかったのですぐにそれを伝える。


「そうだね。燐さんごめんね。説明が足りなかったよ。秋なら大丈夫だからここで見てようよ。あの能力ちからとそれを扱う秋は間違いなく最強だから」

「あの能力ちから…バリア系統ではないの?」

「違うよ。僕から言うのはいけない気がするからこれが終わったら直接聞いてみてね。燐さんと仁くんにはきっと教えてくれるよ」


そう言うと燐、久人、仁は銀の壁が押し寄せつつある秋の方に向く。

燐は久人の言葉にもう安心したのかその場で黙って見守っている。

そして……久人の言う通り、秋の手前10メートルで銀の壁はすべてが消滅した。

そこには真っ白な空間に、まるで銀の雪が舞っているような幻想的な美しい風景が広がっていた。

ロマンチックな演出に燐は心配していたことも忘れ銀の雪に見入っていた。

しかし、燐とは対照的に呆気にとられるように銀の壁があった空間を見つめる周囲の生徒達。

やがてようやく意識を自分の中に戻すことが出来たのか、ひねり出す様にチンピラ兄が口を開く。


「どうやった…どうやったどうやったどうやったどうやったどうやった!!答えろぉ!」


電池切れ寸前のおもちゃの様に言葉を繰り返し突如、秋めがけて走り出した。

自らの最大の攻撃を宣言通りそこから全く動かずに消されたのだ。

完全なる敗北を知り、プライドをズタズタにされ、それでもそんな事は認められないという言わば完全な精神の暴走状態になってしまっていた。

だがそんな相手の姿を見ても秋は冷静だった。というか初めからずっと脱力したままだった。


「おーい。そのまま突っ込むと今度はお前がチリになっちまうぞ。手っ取り早く言うと死んじまうぞ」

「ダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレ!そんなことあるか!これだけの大規模な能力を無償で使えるはずないんだ!だったら俺が死ぬことでお前に致命的なリターンが発生するはず!人ひとりの命が掛かってるんだ!だからお前も死ねぇ!!」


そう言って走るスピードを上げ、腕で俺を掴もうと前に突き出してきた。


「そうか…。お前は死ぬのか。だったらいいか」


冷めた…どこまでも冷め切った秋の声と、腕が消滅していくチンピラ兄の狂気の声だけが響き渡る。


「ぎぃがぁぁぁ!ぐ、ぐそっ!死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!!」


肘から先まで消滅しているが一向にやめようとはしない。徐々に徐々に塵になっていき肘のあたりまでが消滅したあたりで巨大な何かがチンピラ兄に激突し真横に吹っ飛ばした。

飛ばされたチンピラ兄は意識の外からの攻撃に気を失って地面に転がっていた。


「仁か。助けちゃっていいのか?」

「助ける助けないではない。やりすぎだ秋。あいつはもう少しで死ぬところだったぞ!」

「それはそうだろ?その気できてんだから」

「たかがクラス決め程度でそこまでする必要もないだろう。だから今のやりとりはこれで終いだ。それにお前が言っていた10分もすぎているぞ」


そう言われ制服の内ポケットに入れていた時計を見る。


「うぉ!確かに…悪いな仁。俺がルール違反するとこだった」


このいつもと変わらない様子に毒気を抜かれた仁はさっさと戻ろうと提案する。


「ルール違反以前に言いたいことはあるが、まずは後回しだ。これからどこかのグループと奪い合うんだからな」

「はいはい。どうせさっきの事だろ?同じグループだし後でゆっくり話すよ」


チンピラ兄を抱えた弟の横を通り過ぎ仲間のもとへ戻ろうとする背中に、チンピラ弟から声が掛かる。


「おいお前。兄貴の腕は直るのか?」


ここで黙っていてもいつかはわかる事だ。だから真実だけを伝える。


「消えた腕は直らねぇよ」

「てめぇ!よくも兄貴を!兄貴の腕を奪いやがったな!こっちの腕がなきゃ能力も使えなくなるんだぞ!どうしてくれんだ!学園にもこの社会にも居れなくなっちまったじゃねえかよぉ!!」


涙を流し激昂するチンピラ弟。無理もないだろう。

腕は消え失せたから直らないと言われれば納得できるだろうが、能力も消えましたと言われたらこの時代に生きる意味も失ってしまうだろう。

さすがに俺もそこまでするつもりはなかった。大きく息を吸いため息として盛大に吐き出す。


「はぁ~。わかったよ。俺なら元に戻せる」

「本当か?嘘じゃないだろうな!なら今すぐ直せ!早く!」

「今すぐはダメだ。そいつに直す意思が無ければ直さない。それに俺を殺そうとしたんだ。せめて俺に何かしらあるべきじゃないのか?」

「何かしらって…これ以上何を奪うんだよ!」

「人聞きの悪い事言うな!ただ俺に謝ってくれればいい。ごめんなさいってな。それと今後俺を襲わない様にって言っておけ!」


そう言い切って立ち去る。

後でチンピラ弟が声を上げて泣いていた。

悔しいのか嬉しいのか…どちらでも構わないがこれで後味は良くなっただろう。

次は本番だな!さっさと始めるか!


っていうかすんごい今更感だが、チンピラブラザーズの名前がいまだに分からん…

あとで教えて貰うか…

戦闘回でしたがいかがでしたでしょうか?

今回もご一読頂きありがとうございました。

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