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学園生に、破壊と救いと無敗の力を  作者: サトウ
夏 ~戦闘編~
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アトラ&リプル

 アトラとリプルと呼ばれる女の子たちも久人と同様にフワフワと宙に浮き何やらごちゃごちゃともめている。


「えっ? もういいの?アトラもうちょっと自己紹介したいな~、カミカミさんもあたしたちがいきなり出てきて、んん?ってなってるでしょ?」


「ふんっ! 別になってないんじゃない?」


「ええっ!! なってないの!? なんで? アトラわかんない!」


「あの女は戦えればそれでいいんじゃない?」


「えぇ~!! 教えてあげようよぉ、自己紹介しようよぉ~」


 なんでなんでと駄々をこねるアトラとは対照的に、リプルは冷め切った様子でバッサリと切り捨てる。

 そんな様子を眺める久人はやれやれと首を振る。


「ねぇリプル、ちょっといいかな? 僕もアトラに賛成なんだけど、二人の事を教えてあげようよ。 そうした方が公平じゃないかな。 神地さんが知ってればすぐには死んじゃったりから楽しい時間もたくさんできるし、君たちも久しぶりにいっぱい遊びたいでしょ?」


「……ふ、ふん! 別にご主人様がそう言うんならいいんじゃない? 私はご主人に従うだけだしっ!」


「ありがとうリプル。他の人にツンツンし過ぎなところはあまりよくないけど、君の聞き分けが良い所は大好きだよ」


「他の奴らなんてどうでもいいの! ただ私ご主人様のそばに居て、その……す、好きだって言ってくれればそれでいいんじゃない?」


「リプルはすぐご主人様に甘えるんだから~。 でもでも、今回はありがとうね。 自己紹介っていうのを一回はしてみたかったんだよぉ。 だってだって、アトラ達って初めてご主人様以外の前に出て来れたでしょ? だったら初めての時くらい自己紹介したいんだよぉ」


 きゃっきゃとはしゃぐアトラに、目を潤ませながら久人を見つめるリプル。

 そして一人、蚊帳の外の神地。

 いつまでも始まらぬ雰囲気にしびれを切らし、自身に一番近い所にいるアトラめがけ大太刀で切りかかる。


「ちょっとぉ! まだダメー!」


 そう叫び、アトラとリプルは両手を神地に向けてかざす。

 二人は腕から何かを発し、それが神地を通過するが特に何の違和感もない。

 それを無視して刀を振り下ろそうとした時、久人が大太刀を持つ神地の腕を消す。


 手首から先が無くなったのも構わずに、修復されるのを見越してそのまま殴りかかるが、その一撃は当たらずに空を切る。

 違和感を感じた少しの間に、久人の斥力によって弾き飛ばされて、また元居た場所まで押し返される。


「なんだよ。せっかく遊びに行ってやったのに、すぐ帰れなんてつれねぇじゃねぇかよ」


「すみません神地さん。僕も早く戦いたいんですけどうちのアトラがどうしても自己紹介がしたいというもので。 あっそれと、さっき遊びに来てもらった時にお土産をお渡ししたんですが、お気に召しましたか?」


 と言い、にっこり笑って先ほど消し飛ばした神地の腕を指さす。

 指さされた腕は未だに()()()()()()()()、ダラダラと血が流れ続けている。


「馬鹿なっ! なぜ修復が始まらない……それに、おまえの傷が治っているのは何故だ。何をした?」


 久人の傷は痕すら残らずに、まるで()()されたかのように綺麗になっていた。

 かたや神地はと言うといまだに修復が始まらない。


「僕じゃないですよ? それはこの子がやったんですよ。 ほらアトラ、リプル。自己紹介の時間だよ。おまたせ」


「ぅわーい!! ありがとうご主人様!!」


「ふんっ! ご主人様が言うならしかたないんじゃない?」


 アトラはぴょこぴょこ跳ねながら、リプルは背筋を伸ばし地上に降り立ち、軽く腰を折ってる。


「コンチワですっ! アトラだよ! 私はご主人様の引力から産まれた聖霊だよ。 よろしくぅ~」


「リプルだ。 ご主人様の斥力から産まれた聖霊だ」


「二人ともありがとう。でも肝心の能力の事を伝え忘れてない? 僕から伝えてもいいかな?」


 アトラは舌を出して「忘れちゃったぁ。おねがいしま~す」と、自己紹介する気満々だったのに名前を言った事に満足したのか早々に久人に丸投げし、リプルは「ご主人様のお手を煩わせるとは! 聖霊失格だ!」と項垂れてしまっていたのでさっさと話進めてしまう事にする。


「そういう訳だから僕から説明しますね……」


 アトラの能力は引力。

 引力とは言っても、久人の能力の様に物体に対して作用するものではなく、アトラの引力は()()()()()()()()()()()作用する「対象の能力を引き寄せる」というもの。

 対象から引き寄せた能力は、ほんのわずかな時間であるが一時的に自らのもとで使用することが出来る。

 引き寄せている間、対象は能力を使用できるが、引き寄せられている分だけ能力の性能が落ちる。


 詳しく説明するならば、能力者が発動した能力の何パーセントかを引き寄せることが出来る。

 その間、対象能力の元の性能は、引き寄せられたパーセント分だけ低下する。

 通常、引き寄せておくだけならば数分間は手元に置いておくことが出来るが、それを一時的に自分のモノとして使用するとなると、相手の能力を無理矢理使用したことによる能力の拒否反応がおき、数秒で元の能力側に戻っていってしまう。

 今のアトラの力で言うならば、引き寄せておくだけならば10分程度、使用となると2分程度が限界である。


 一方リプルの斥力はと言えば、アトラの性質とは逆に「対象の能力を弾く」というものだ。

 この力も物理に対する攻撃力は皆無でである。

 弾く対象は遠距離からの攻撃はもちろんのこと、対象者が身に纏っている能力・自己強化などの能力を強制的に弾き飛ばして無効化できる。

 弾き飛ばされた能力は、リセットされてしまうため、対象能力者は再度発動する以外にない。


 久人から産まれた覚醒能力【拒絶と抱擁】《リプル&アトラ》はこと能力者に対しては無類の効果を発揮する。

 だが、いかんせん物理的な攻撃力が無い為、久人との協力があってこその能力になってしまうというのは唯一の欠点と言えるだろう。


 しかし、物理的な面での攻撃性が皆無な能力の性質を補うために、久人は近接戦闘の心得を教え込んだ。

 久人自身、武術の才能があるワケではないので付け焼刃程度なのだが、それでも一時的にではあるが能力を失った状態で生身の人間に戻ってしまった相手からすれば十分な脅威になりえる。


 一通りの話を終え、久人はふぅと息を吐き出し、完治した腕をぐるぐると回して全身の動きをチェックする。


「いまの説明でご理解は頂けたかと思いますが、つまりはそういう事です。アトラが少しお借りした神地さんの能力で僕も元気になりましたよ。やっぱりすごいですねその能力は。たった3割を数秒借りて使用しただけで全回復したんですから」


「へぇ、面白い奴ら呼び出したじゃねぇかよ。でもな、勝手に人のもん盗って自分のもんにしちまうのはいただけねぇな」


「盗って無いモン! 借りただけだもん!」


「ふんっ、盗られちまう方が悪いんだよ」


「リプルまでッ! だ~か~ら~、盗ったんじゃなくて借りたんだっていってるの! もう返してるでしょ!」


 またもギャーギャーと騒ぎ出す二人。

 その二人を挟み、久人と神地は対峙した状態から動かない。


 神地は先ほどの二の鉄を踏まない様に多少慎重になっている様子。

 一方の久人はと言うと、少しだけ本気を出すと言ってリプルとアトラを呼び出した手前、ここで自分も戦闘に参加してしまうと、多少本気が多少ではなくなってしまいそうだから動かないと言った感じだ。

 久人は未だにうるさい二人を能力で宙づりにして、いい加減にしなさいと少しだけ怒ってから地上に下ろす。


「いいかい? 君たちは何故呼ばれたかのかを考えて欲しい。 わかるよね?」


「うにゅぅ…アトラわかったぁ。 これからリプルと二人でカミカミさんをぶっ殺せばいいんだよね?」


「言い方がちょっとあれだけど、そうだよ。リプルもできるね?」


 リプルの頭にポンと手を置き優しく二度三度撫でる。


「はにゃぁ……。 っと緩んでる場合ですか! 私も出来ます!! ります、れます、ってみせます!! ご主人様の為に!! 終わったらもっとナデナデしてもらいます!!」


「あぁっ! リプルばっかりズ~ル~イ~! アトラにもやってご主人様!!」


「二人ともわかったから、まずはやることをしっかりやってからね」


「はいは~い! アトラわかった~!」


「承知しました、ご主人様」


 ピシリと敬礼をするアトラと腰を深く折って頭を下げるリプルに、再度ポンポンと頭を撫でてやり、耳元で「いっておいで」と囁く。

 二人はシュッタと音がしそうなくらい素早く神地の方に向き直り、戦闘態勢をとる。

 神地はにやりと表情をゆがめる。


「話は終わったか? ならそろそろ始めようじゃないか……殺し合いの続きをさぁ!!」


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