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学園入学編Ⅴ

5話目です。

グルーピングも終わり学園長様よりルールの説明がなされた。

その説明の間に教員達がプレートを配って歩いている。


主なルールはこんな感じだ。

・各グループに一つクラスが書かれたプレートをランダムに配布する。

・入りたいクラスのプレートを制限時間終わりまで持っていればそのクラスに入れる。

・制限時間は3時間。

・場所は戦闘校舎内。

・能力及び体術による戦闘行為を許可。


という具合に完全に戦闘による決着を目的とした内容になってるのは気のせいではないだろう。

ぼけっと話を聞いていると緒方先生が目の前にきてプレートを差し出す。

なんだかやけにニヤついているような気がするのはきっと気のせいだろう。

…たぶん気のせいだ。気にしたらいけない。緒方先生の後ろ姿を眺めながらそう思うことにした。

ここですべてのグループに対しプレートが配られ終わる。


「配り終わったようですね。それでは始める前に追加で特典です。」


また周囲がざわつき始める。だがそのざわめきを止めようとはしなかった。

生徒がひとしきり騒ぐと自然に静かになっていく。

ようやく収まり周囲をゆっくりと見回し俺たちのグループで視線を止めると口を開く。


「今皆さんが手に持っているプレートを確認して下さい。各クラスが刻印されているはずです」


そう言われ手元を見るとなんとDの文字が丸い樹脂プレートに書かれている。

という事は戦わずしてもう目標達成してしまった。Dなんぞ欲しがる奴はなかなかいないだろう。

そしてこの結果をいち早く知らせようとプレートに書かれたDの文字を燐、仁、久人にこれ見よがしに見せる。


「どうだ。俺のこの運の良さは。あとは隠れるなり逃げるなりすればクリアだぜ!」

「そうみたいね。なんか拍子抜けね」

「だがD狙いもいることはいるだろう。気を引き締めねばな」

「すごいね秋。でも気になる事があるんだけどいいかい?」

「何かね久人くん。この運が見方した神の如き神々しさを纏う俺に祈りでも捧げたいのかね?構わんよ。好きにするがいい。あっはっはっは!」


全くもって素晴らしい!今日のこの日に乾杯!

だがこの最高の余韻に浸っている時に、俺に祈りを捧げているはずの久人から”気になる事”について聞かれる。


「お祈りは後で沢山させてもらうよ。それでそのプレートなんだけど、他のグループと違う気がするのは僕の見間違いかなと思って」

「んな馬鹿なことあるか。クラス決めんのにわざわざ変える必要ないだろ」

「でも、隣のグループのリーダーっぽい人の手元見てみてよ」


そう言って人差し指でちょいちょいと右隣のグループを指さす。

そう言われ覗いてみると手には、白地・・の丸い樹脂プレートに黒字・・でAと書かれていた。


「確かに…な。俺たちのは透明な樹脂に金文字だな。たまたまじゃないか?」

「いやいや。たまたまじゃないですよ。そのプレートが皆さんの中で1グループにだけ配られる、一枚だけしかないものです。そしてそれが特別ルールの適用アイテムです」


俺たちのやりとりをじっと見ていたのか絶妙なタイミングで学園長が口をはさむ。


「特別ルールですが、そのプレートを最後まで持っていた方には今まで言ったA~D組までの特権全てを与えます」


今までで一番のざわめき…というか雄叫びが上がった。

そして一部の生徒がこちらを獲物を見つけたと言いたげに視線を向けている。


(完全に嵌められた。だから緒方先生は笑ってたのか…それにの奴言い方だとわざとこのプレートを俺たちに渡しやがったな。くそ!!こうなったらさっさと他のDプレート持ちと交換して…)


「ちなみに交換などで手放すことを禁じます。なりたいものに一生懸命になれないような生徒に対し特権などの措置は必要ないと考えます。もしそのようなことがあればそのプレートの特権及びいままで各クラスに対し設けた特権もなかったことにしますので悪しからず」


学園長のこの言葉に大ブーイングが巻き起こる。

この学園長からの言葉の意味は俺達が持っている特別なDプレート以外にも適用されるという事。

さっきまで交渉していた生徒の苦労が全て水の泡となるということだからだ。

全新入学園生からの呪詛のようなブーイングの嵐も、涼しい顔をしていられる程度にしか効果がなかったようだ。そして学園長はさらにこう告げる。


「あと更に、1枚しかない特別なプレートには更に特権が与えられています。この特権については終了後に発表します。以上で説明は終わりですが質問はありますか?」


ブーイングや特権の事で一喜一憂し過ぎたのだろうか誰も手を上げる生徒はいなかった。

と言うよりさっさと始めろオーラがそこかしこからにじみ出ている。

この生徒のやる気?に満ち溢れた様子に満足した学園長は開始の時刻を告げる。


「やる気も十分の様ですね。これから10分後に戦闘校舎内の中心にある鐘が鳴ります。その合図でクラス決めを行って下さい。終了の際も同じく鐘が鳴りますので聞き逃さない様にしてください。さて時間もあまりありませんから、スタート位置は自由としますので移動を開始してください。それでは皆さんのご武運を祈っております」


一方的に話を終えるとその白い服の所為なのか、はたまた能力を使ったのか、周囲に滲む様に学園長・宇城嶋うきしま凍人とうじんは姿を消した。


**********


取り敢えず一番狙われるだろう俺達はその場をさっさと移動する。

というかあの場のあの空気が異常だった。

特上霜降り肉を前にした野犬の群れが合図を待っている状況と遜色ない程の異常性。

よだれこそ垂れ流してしないものの、目が狂気じみていたは間違いない。

誰しもが思うだろう。まずは逃げろと…

俺たちは一も二もなくその場から走り去った。


*********


ある程度の距離は稼いだしまずは作戦会議だ。


「これから3時間どうする?」

「戦いを挑んできたグループを各個撃破するしかないんじゃないの?」

「いや待て。それだと複数グループに狙われている俺達には厳しいと思うが」


俺の問いかけに燐と仁が答えた。

確かにそうだ。複数相手にするとなると弱ったところを叩かれるのは目に見えている。

頭を抱えるがいい案は出てこない。いや…案というかそれだけで終わらせられる手段は持ってるが…


(さすがに卑怯な気がする…能力を使っていいとは言ってたが、あれを使うとなるとやはりズルいな。取り敢えずこの事は伏せておいて、別案を提示しよう。

そうだ!強行手段で逆に襲いに行くとかどうだろう。燐も仁もいるし逃げるときは久人が何とかしてくれるはずだ)


考えがまとまり提案しようとすると、久人がこんなことを言い出す。


「一番簡単なのは、秋が持ってればいいだけじゃないかな。それくらい秋の能力使えば余裕でしょ?」

「え?そうなの秋くん?」

「そうなのか?なぜ黙っていた。それならそれで終わりだろう」

「……久人くん。ちょっといいかね。」


人差し指でちょいちょいと少し離れたところに久人を呼び出す。


「うぉおい!なに言っちゃってんだよ!あれはズルいだろ!さすがに!」

「でも一番簡単に片付くし何より確実に目的達成できるでしょ?というかその卑怯な能力は秋自身のものだよ」

「ぐっ、確かにそうかもしれないがそれだと俺以外の、ってか俺までなんにもしなくても終わっちまうだろうが!」

「だけど実力は示せるんじゃなのかな?能力を打ち破れるくらいの人がいなければ晴れて秋は逸材認定。仮に打ち破れる人がいれば、その強い人と戦えるよ?どう?」

「どう?じゃねよ!っていうか楽をするな楽を!」


あーだこーだ言っていた所為で燐たちが近くまで来て話を聞いていたことに今更気が付く。


「ねぇねぇ。秋の能力ってどんなの?そんなに強いの?」

「久人がそこまで見込んでいるとなると気になるんだが」

「何盗み聞きしてんだ!ってか待て!俺の事は始まればわかるからいいとして。それよりいいのか!俺が能力使っちまったらお前ら一回も戦えなくなって終わるぞ?」

「ふーん。自分の能力ちからに余程の自信があるみたいね……うーん。でも一回も戦えなくなるのはちょっとねぇ」

「ボディーガードをする以上危険が無いに越したことはないが、さすがに一度もとなると考え物だな」


結果。まとまらず。

一人は俺に全部押し付けようとしてるし、二人は程々に戦いたいらしい。

みんなが戦えてかつ俺らが確実に勝てる方法か…

一個思いついたがそこそこリスクはある。確実に勝てるかは不明。


「ん~、そんならこんなんはどうだ?まず燐、仁、久人、俺の4人で1グループに対し1人で順番に戦う。実質4対1の戦闘だ。俺らが最大で戦う回数は1人一回だから計4回。俺たちのうち誰か一人でも負けたらプレートは勝ったグループに渡す。そんで相手にもその条件を呑んでもらう」

「それはそれでいいとして、それでその後はどうするの?」

「久人が言った通り俺の能力ちからで制限時間までこのグループを保護する」

「だが、たった4回しか俺たちのグループとしか戦えないってことは特別プレートを狙ってる数あるグループの中で4グループしか挑戦出来ないという事だろう。そんなことになるくらいなら一時的に結託して集団で襲い掛かってくるかもしれんぞ」

「それはごもっともだし俺でもそうする。その場合は俺の能力ちからでなにもさせない。というか一度襲って来れば相手にもわかるだろうよ。どうやってもこの千載一遇のチャンスと言う名の条件でしかプレートは奪えないってことが」


呆気にとられる俺と久人以外の2人。

お前はどれだけ自意識過剰なんだ的な目を向けるでもなく、むしろ面白いものが見れるならいいかもしれないといった好奇心がその目に宿っていた。

燐と仁は俺を見ると手を差し出してくる。

そして俺はすぐに握り返す。


「それだけの自信がるのならばお前に任せよう」

「私もそうするわ。一回は戦えるかもしれないし、戦えなくても面白いものは見られそうだからね」

「じゃあこの作戦で。だけど4対1だからって負けるなよ。負けたらまた奪いに行かなきゃならんから面倒だし」

「みんなわかってるよ。秋に任せっきりじゃ嫌だからね」


ようやくまとまった頃、戦闘校舎内の鐘はすでに打ち鳴らされていた。

早くもあちこちで戦闘音が聞こえてくる。


「お、もうあちこちでやってるな。じゃあこっちも準備するか」


そう言って4人は周囲の警戒を始めた。


今回もご一読頂きましてありがとうございます。

次回はようやく戦闘に入ります!!

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