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学園生に、破壊と救いと無敗の力を  作者: サトウ
夏 ~戦闘編~
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女神の猛攻

「ギャラリーも集まったみたいだしそろそろ始めるかっ!」


「えぇ、そうですね。僕も三天神の方と二度もお手合わせして頂けるとは思ってもいませんでしたからウズウズしてるんですよ」


 士気向上の為の一次休憩と言う名目を立てて、秋の捜索を一次中断してして行われる神地と久人の試合。

 当然、その話はここにいるすべての教師やクラスメイトの知る事となり、それを見ようとほぼすべての捜索参加者が見学に来ていた。


 試合形式は、あくまで模擬戦闘。

 死に至るようなことがあれば強制ストップだし、制限時間内に終わらなくてもそこで終了。

 幸いと言うか、この場には三天神である天道てんどう 我玖斗がくともいるため、そのルールが仮に破られようとも強制的に止められる。


 それに教師と生徒、共にこの模擬戦闘から学ぶものがある。

 他人の戦闘を見ることで、生徒も教師も得るものがあるだろう。

 そんなこんなで待ちきれなくなっているのは久人たちだけではなく、周りに集まった生徒や教師も同じという事だ。

 そろそろ人も集まったであろう頃合いに、宇城嶋が久人と神地の前に立つ。


「それではいいですね? あくまで模擬戦闘だという事をお忘れなく。いいですね?」


「わかりました」


「はぃはぃ、いいからさっさとはじめろよ」


「まったく……あなたと言う人は。それでも政府の人間なのか疑わしくなりますね」


「そうそう!私も自由に遊びたいからやめるって言ったんだけどさ、なんか分厚い書類渡されて無理ですみたいなことダラダラ書いてたから面倒だと思ってそのままにしてんだよ。ってことでなにか起きたら起きたでそっちの方が好都合なんだよな」


「別にあなたがなにを起こそうが構いませんが、ことこの模擬戦闘に関しては、その何かを起こさない様にしてくださいね」


「それは私の目に前に居るそこの餓鬼に言うんだな。あいつの方が危ないだろ? どう見ても」


 宇城嶋はにこにこしている久人を軽く一瞥すると、心のなかで確かにと呟き特に注意はしなかった。

 懸念は若干あるものの、試合を始めなければいけない。

 周りに集まった教師や生徒も開始の合図今かと待っているからだ。

 誰にも聞けることのないため息をひとつつき、試合開始を宣言する。


「おまたせ致しました。双方、準備は……いい様ですね。それでは、始め!!」


 始めの合図と同時に、久人は人差し指を向ける。

 すると、目の前の神地の右腕の上腕から先と左足の膝から下がねじ切れるように虚空に吸い込まれ消滅する。

 その様子に、周りで見ている教師や生徒が騒然とするが、手足を失ったというのにバランスの悪い状態で立ち、神地はにやりと笑みを浮かべている。

 久人もその様子に満足げに頷き返す。


「おいおい、いきなり殺そうとしただろお前。ちょっと避けなきゃ頭もってかれてたぞアレ」


「殺そうとなんてしてませんよ? 避けてくれるって思ってましたし。でもここで死んでしまうようなら代わりにまた天道さんに相手をしてもらおうかと思ってましたからね」


「言ってくれるねぇこの餓鬼。天道に相手してしてもらう前に、まずはココで一回遊んでしんでイケよっ!!」


 片足しかないはずの神地はそれをものともせずに、久人に肉薄すると右の掌底・・・を久人の胴めがけ打ち込む。


「ぐっ、がはっ」


 避けきれず左胸部に重い一撃を受け、口から吐血する。

 衝撃は体内にとどまり、内臓を破壊する様に暴れまわる。

 痛みをかみ殺し口内に溜まった血を吐き出した一瞬の隙に今度は左脚・・で体を薙ぎ払われ吹き飛ばされる。

 漂流物で荒れた砂地をゴロゴロと転がり、岩場に背中を打ちつける形になりようやく止まる。

 が、久人はピクリとも動かなかった。


「なんだよ餓鬼、こんなんでおしまいじゃないだろ? 休むのもいいけどよ、時間もねぇからさっさと立てよ。立たねぇなら……」


 と、神地はぐっと全身に力をいれて足元の砂を撒き散らしながら飛び込んでいく。


「こっちからいってやるよ!!」


 迫る神地があと少しで届くというところで急に足を止める。

 ではなく止めさせられる。

 久人の斥力が神地が前に進むのを阻んでいるのだ。


 その効果に気付いた神地も無理矢理前進はせずに一旦後ろに飛び退く。

 神地が再び距離を置いたのを確認するかのように久人はゆっくりと立ち上がり、口元の血を拭う。


「おっ、大丈夫そうでよかった。こんなんで死なれたらストレス溜まるからな」


「まだ僕も楽しんでないんだから死にませんよ。痛かったなぁ。やっぱりこうでなきゃ楽しくないよね。それにしてもなんで腕とか足が元に戻ったんですか? 種明かしはしませんってガラでもないですよね?」


 久人の問いかけに一瞬キョトンとするがすぐに顔は緩み、豪快に笑いだす。


「あっはっはっはっは! いやぁ面白い奴だな。あたしにストレートに能力はなんだって聞いてきた奴は初めてだよ。知らずに死んじまう奴ばっかりだからな。それに生きてる奴らは聞いても来なかったしな。お前みたいにストレートな奴は大好きだよ」


「お褒めに預かり光栄ですね。それで、能力は何ですか?さっさと教えて下さい。その方がお好きなのでしょう?」


「わかってるよ。ホントに面白いやつだ。ここで殺すのがもったいないな」


 神地の言葉に宇城嶋は大きめの咳払いをひとつするが、まるで聞こえていないとでも言いたげに無視を決めこむ。

 宇城嶋の盛大な溜息を耳に入れつつ、久人とこの場にいる全員に自身の能力を教えてやる。


「私の能力は自愛の女神セルフクイーン。名前が大層なだけで能力自体はシンプルなもんだよ。高速自己修復ってやつだ。どんな傷も毒も私の意思次第ですぐに完治する様になってる」


「へぇ。それで急に腕が元通りになったってことですか。で、もちろん覚醒もしているのでしょう?」


「やっぱそう来るよな……でも、そっちの方はこれからゆっくり知っていかないか? そっちの方が楽しいだろっ!」


 と、言い切る前に神地はポケットから直径5センチほどの球を取出して宙に放り投げる。

 白い球は高く舞い上がると形状を変化させそのまま落下してくる。


「さて、お互いにウォーミングアップも済んだからそろそろ……」


 落下してきた5メートル以上はあるであろう巨大な大太刀を肩で受け止めると、軽々と片手で振り回して、切っ先を久人に向けて構える。


「本気でやろうぜ? 真壁」


 それと同時に神地の姿が目の前から消えた。

 かと思った時には久人の真後ろから巨大な刃が振りおろされるが、久人はそれに反応し斥力で弾き飛ばしながら大太刀を持つ神地の腕を引力と斥力で無理矢理ねじりきる。

 宙に浮く大太刀を空いた手で素早く掴むとそのまま再度振り下ろす。


 振りおろされた大太刀は久人に当たる直前に引力によって後方に引き寄せられ、神地の手からするりと抜けて飛んでいく。

 が、神地は構わず打ち下ろしの掌底を繰り出し久人の左肩に衝撃を与える。

 内に響く嫌な音が伝わり、肩の骨を外した感触が伝わる。

 それと同時に久人が神地の空いた脇腹から腰に掛けてを吹き飛ばすことで再度距離を開ける。


「いいねぇいいねぇ! どんどん楽しくなってくよ!」


「そうですね、その意見には同感ですよ!」


「だろっ? ならさぁ……真壁も隠してるもん出せよ。使えんだろ? か・く・せ・い」


「さぁ?それはどうでしょうか……使えるかもしれませんし、使えないかもしれまんね」


「戦う事には正直なのに、そう言うとこは秘密にしたがるんだな。まぁ……まだ戦いは終わってないからこれから出して貰える様にもっとギアを上げないとだな」


「怖いこと言わないで下さいよ。でも、僕もそれを期待しているので裏切らないでくださいよ?」


「あっはっは! やっぱりお前は面白いヤツだよ!!」


 神地は大太刀をひょいと拾い上げるとまた切っ先を久人に向けて構え直した。

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