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学園生に、破壊と救いと無敗の力を  作者: サトウ
夏 ~戦闘編~
43/57

始まる合宿、現る強敵

お待たせしました。毎度毎度

すみません

 ようやく浜辺にたどり着くと各々分かれてそれぞれの課題に取り掛かっていた。


「んで俺はどこにいけばいいのやら……」


 そう思っていると、向こうから何故かここに居る見知った顔の人物が声を掛けてくる。


「なんで学園長がここにいんだよ。学園はどうすんだよ」

「おや、つれませんね。私がこのDクラスを創設したのですからいるのは当たり前でしょう。それに学園の管理や、あなた方の代役には残りの教師陣にお任せしてきたので心配はいりません」

「あぁ、はいはいそうですか。それはわかったけど、そこにいる奴は誰だ?」


 熱く照りつける太陽と白い浜に不釣り合いな真っ黒のスーツ姿に真っ白な長髪の男が海を背にこちらをまっすぐに見つめていた。


「彼ですか? 担任の麻朝先生から聞いてないのですか?」

「聞くもなにも今まで寝てたんだから知るワケもねぇだろ」

「そうですか。彼はですね、」


 秋が瞬きをした一瞬、ほんの一瞬視界を閉ざした瞬間に宇城嶋と俺の間に割り込む様にその異質な男が目の前に立っていた。


「俺は、三天神さんてんじんを束ねている、天道てんどう我玖斗がくとという。お前が黒土秋か。話は宇城嶋に聞いている、なかなか強い…とな」

「お見知り置き頂いて光栄だけど、俺はお前なんぞ知らん。三天神だか三天丼だか知らんがなんでいかにも部外者そうなお前が居るんですかね」

「このバカモノッ!」


 後ろから歩いてきた甚兵衛姿の仁がいきなり俺の後頭部を小突いてきた。

 こいつの小突くは一般人のストレート級の威力があるんだから勘弁してほしい。

 首から上が無くなるかと思ったわ!


「あってぇ…。仁、何しやがんだよ!」

「お前はつくづく馬鹿モノだな。 燐と俺があれほど熱心に話したことをもう忘れたと言うのか?」

「はぁ? 何が」


 仁はため息と共に若干項垂れる。

 ミスティの巨峰でもあんまり感情出さないのにこんなことで出してきたりもするんだな、とか考えていると、宇城嶋が改めて三天神の説明とここになぜ天道が居るのかを簡潔に説明してくれた。

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …


「理解した。今は」

「わかってもらえたようで何よりだよ黒土くん」

「今は、ではない。常識的な話だと前も言っただろう。それくらい覚えておけ」

「はいはい、わかったよ。それで? その三天神の天道様は覚醒者とそれに匹敵する能力者に対して実技の指導を実践けいしきで行うために呼んだ特別講師ってことでいいのか?」

「その通りだ黒土秋。学生にしては強く、教師たちの手だけではなかなか対応しきれないと言う事なのでな。宇城嶋にはカリもある。今のうちに返しておこうと思ったのだ」

「なるほどな…それで? お前と実戦出来るのは俺と仁と久人…くらいか? って言っても久人はいないな」

「対象者は黒土くん、台場くん、真壁くん。あと阿國くんと緋色くんもですが、阿國くんはまだまだ天道さんと戦えるレベルじゃないと言って辞退しました。 緋色くんですが朝から居ません。たぶん遅刻か何かで置いて行かれてしまったのでしょう、あとで学園に問い合わせてみます。そして、真壁くんなのですが……」


 宇城嶋は右に指先を向ける。

 その先の方を辿っていくと見知ったジャージのイケメンが気を失って倒れていた。


「まさか! お前がやったのか天道」

「聞きづてならないな。真壁…だったか。奴がいきなり戦おうと向かってきたのでそれなりに対処しただけだ」


 おぃおぃマジか……あの久人がやられたってのか?

 隣に立つ仁に目配せをすると、本当だと短く返してきた。

 曰く、一瞬の事だったらしい。

 久人が空からの攻撃を仕掛けたと思ったらいきなり後ろに弾き飛ばされたらしい。

 仁にも何をされたのかわからなかったという。


「真壁には能力を扱うずば抜けたセンスがあるがそれに頼り過ぎていた。瞬時に対応できなければ、そのセンスを生かす前に死ぬことになる」

「へぇ、どうやったのかは知らんけど、俺も楽しめるってことだな?」


 秋は腰を落とし、天道はそのままの状態で戦闘態勢に入る。

 だが横から仁が手を差し入れ秋の前に入ってくる。


「待て秋、俺の方が前からいた。だから俺の方が先にやるのはスジだろう?」

「マジかお前……空気よめよ。はぁ……でもまぁ仕方ないな。遅れた俺がでしゃばるのもなんか違うしな」

台場だいばじんか……お前の事も聞いている。龍人なのだそうだな。一昔前に一度だけ戦った事があるが、その時は良い経験をさせてもらった。お前はそれ以上に良い経験を俺にさせてくれるのか?」

「それはお前次第だが、タダではやられんさ」


 不敵に笑う仁に対し、表情を崩さない天道。

 宇城嶋もその光景を楽しげに見てはいるがそこはさすがに学園長。

 すべきことはする。


「互いに楽しむのはいい事ですが、これはあくまでも実戦形式の訓練です。大けが程度ならば治せる人はいますが、死亡だけは許されません。それを肝に銘じておいてください。私からは以上です。何もなければ始めようかと思いますが構いませんか?」


 この言葉に仁と天道は肯定もせずに互いに離れていく。

 宇城嶋は笑顔のままやれやれと発し、片手を上げ開始の合図をする。


「それでは………はじめっ!!」


 そして一瞬だった。

 宇城嶋の腕が空を切り、下がりきった瞬間に仁の体は吹き飛んでいった。


「は…? 何が……」

「黒土くんは初めてですよね。あの技でさっきも真壁くんがやられたんですよ?」

「確かに、あれはさすがにズルいな」

「これが訓練ならば、ですがね。でも実際は実戦により近い形の訓練ですので、やはりあれもしっかりとした戦術です」


 だが、先ほどの久人とは違って仁は事もなげにむくりと立ち上がるとゆっくりと元の位置まで戻る。


「さすが仁くんだね。 やっぱりあれくらいじゃやられないよねぇ」

「確かにな。でも久人でもやられたんだ。あいつも無傷ってわけにはいかないだろ」

「そうだね。僕もすごく痛かったけどこうして居られるし、仁君は龍人だからね。僕より丈夫なはずでしょ?」

「そうだな………ってお前いつから居たんだよ! その前に大丈夫なのかよ!」

「さっきからここにいるよ? それでさ、秋にお願いがあってきたんだけど、このお腹の傷治してほしいんだよね」


 そう言ってジャージを捲り上げた久人の脇腹は拳ほどの大きさの穴が開いていた。

 血が流れていないのは引力と斥力で固定しているからだそうだ。

 久人は、痛いんだから早く治してよと催促してくる。

 秋はサクッと【再正】を発動させて治してやる。


「あ~痛かった。ありがとね、秋」

「おう、どういたしました。それで、お前が負けるなんて珍しいんじゃないか?あれくらいの傷でやられるなんてことは無いだろ?」


 そう、こいつは異常なまでの戦闘狂。

 自信が傷つけばつくほど、相手が強ければ強いほど、狂った様に戦いを欲していく。

 だから、自分の試合を切りやめてまでここで観戦しているのかが不思議だったのだが、


「あのくらいの傷だったらもっと欲しいくらいだけどね。むしろあれ以上にもっと楽しいことが起きるって考えたら今すぐ本気出してみたいって思ったくらいだよ。でもまだ合宿も始まったばかりでいきなり全部晒すのも嫌だったし、それで相手が死んじゃったら元も子もないでしょ?だから今はいいんだ!」


 と言う言葉を聞いて、やっぱりこいつはどこまで行っても戦闘狂なんだとしみじみと実感した。


 さて、一方の仁はと言うと、初撃で天道の攻撃を見切ったのかあれ以来大きなダメージは受けていなさそうだ。

 だが、攻撃もできずにいた。

 虚空から音もなく突然現れる柱状の物質や球状の物質。

 四方八方から現れるそれをいなし、躱し、受け止める。


「どうした、台場仁。俺はまだここから一歩も動いてはいない。もしそれで終わりだと言うのなら負けを認めろ。今はまだ殺傷力が低い形状で出してはいるがそれ以上もあるのだぞ」

「俺もまだすべてを出し切った訳ではない。出せばすべてが終わるのでな。だが、今はこれ以上を出せないと言うのならば負けを認めよう。ただし、」

「なんだ?」

「お前には一太刀入れさせてもらう!」


 仁は能力を発動させる。

 自身の幻影を無数に生み出していく。

 そして気が付け仁ばの幻影は天道の退路を全て塞ぐように球状に取り囲んでいた。


「幻影か。それに実体もある……この状態・・・・では本体との見分けがつかないな。ならば話は簡単だ。今この状態でお前を倒せる技を見せればいいだけの事」

「ならば防いでみろ。全面からの攻撃、幻影球スフィアファントム!!」


 一気に迫る仁の幻影。

 その幻影はすべて実体がある。

 すなわち攻撃されればその幻影からの幻痛を受け傷が生まれる。

 瞬時にその能力特性を見抜き、天道は己の能力の一端を解放する。


「一章……天を仰ぐ人の浅はかなること。その道をもって平伏せ、天樹の息吹の前に… きょく光神槍こうじんそう!!」


 立ったままの状態で右手を水平に薙ぎ払う。

 すると、天道の体を中心に無数の光の槍先が球状に出現し、その槍は木々の枝の様にびっしりと辺り一帯を埋め尽くす。

 広がりきった槍の枝はまるで花が咲き誇る様に穂先を広げるとそれと同時に粉々に砕けた。

 そしてそこには致命傷を避けるように穴だらけになった仁が横たわっていた。

 傍らまで歩いていく天道が仁を見下ろす。


「台場仁……龍人とは言っていたが思ったほど面白くもなかったな」

「いや……言った通り、せめて一太刀入れさせてもらった」

「……なに? っく!!」



 天道は左側の頬に衝撃を受ける。

 大きく後退した天道の目の前には、傷一つない仁の姿があった。

 無傷で立つ仁の足元で穴だらけになって倒れる仁の姿は、その色を失っていくように消えていった。

 天道は口に端を伝い滴る血をぬぐう。


「先歩の言葉は撤回しよう。面白い能力だな台場仁。使い勝手のいい能力だ」

「俺もそう思う、だが……」

「そうだ、お前もわかっている通り、使い勝手が良すぎてその先の覚醒に至れない。今のままで十分だと納得してしまっている。その自覚はあるのだろう?」

「当然だ。だからこそ、この合宿でその先を見出す」

「……そうか、ならば言う事は何もない。精進するがいい」


 仁は天道の言葉を聞いた後に小さく、負けましたといい秋の下へと戻ってくる。


「仁くんお疲れ様っ!」

「あぁ、久人も無事か?」

「うん、大丈夫だよ。ちょっと痛かったくらいかな」

「なんだ仁、もうお終いなのか? まだ戦えたろ?」

「戦えはするが今以上の力を出すことはできない。とっておきとでも言うか、そういったものはあるのだがそれだけは使えない」

「いや使えよ。隠しててもどうしようもないだろ?」

「隠しているわけではない……ただ、それを使えば一時的に俺は俺でなくなる。そうなるのは今はごめんだからな」


 仁はもう何も言わんとばかりに、砂浜にどかりと腰を下ろし胡坐をかく。


「俺の事はもういい、次はおまえの番だろう」

「はいはい、わかってますよ」

「がんばってねぇ~」


 仁は追い払う様にシッシと手の甲をむけ、久人はおよそ頑張れとは心から思っていないであろう声援をニコニコしながらおくってくる。

 まぁいい、やるからには負けない。

 たとえそれが政府お抱えの最高であろう言われる能力者であろうと。

 砂の感触を足に感じながら天道の下へと歩いていく。

 宇城嶋が仁の時と同様に簡単に実戦形式の訓練であるという事を再度伝える。

 それを聞き流し、互いに正面から相手を見据える。


「……以上です。何か質問は……なさそうですね。それではお二人とも準備はいいですか?」

「いい加減さっさとはじめてくれ」

「俺の方も問題はない」


 宇城嶋は素っ気ない二人からの返事を聞いてやれやれと肩をすくめながら、腕を高々と上げた。


「それでは両名とも用意はいいですか? それでは…………はじめっ!!」

如何でしたでしょうか?

次は秋が頑張りますよ!!


次回もお楽しみに!!

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