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学園生に、破壊と救いと無敗の力を  作者: サトウ
夏 ~戦闘編~
36/57

欲望

遅くなりました・・・

皆さんに支えられてブックマーク40件です!!

ありがとうございます。

 久々に感じる、脳に直接触れられるような激痛。

 ここ最近では掠るような傷ですらほとんどなかった。

 清掃のおばちゃんの突然の自爆。

 本来であればおばちゃんの存在を丸ごと【破壊】してしまえばよかったのだが一瞬躊躇ってしまった。

 操られていれば仕草や反応や目の色などで判断できたが、さっきのおばちゃんは違った。

 今思えば、自ら望んで自爆することを願っているようだったのだ。


 一先ず爆発の余波を【破壊】し、粉々に吹き飛ぶのを防いだが、肩から先の片腕を丸ごと持っていかれた。

 痛みに喘ぐ前に【再正】で腕を元通りにする。

 肩を大きく上下させて、何とか呼吸と思考を整えながら立ち上がる。

 もうもうと立ち込める土煙やら破片を【破壊】し、視界をクリアにすると目の前に清掃のおじさんが立っていた。


「あれ?大丈夫かな?生きてるのか。うんうん、最近の若いのは元気で結構!それじゃあ、おじさんからも君へのプレゼントだ」


 また口がギチギチと音を立て三日月に裂ける。

 このままいけば再度、至近距離からの自爆の余波を受けることになる。

 先ほどの経験からだろうか、今度は一瞬の躊躇いもなくおじさんの存在を【破壊】する。

 痕には何も残らずただおじさんが居たという記憶だけが残った。


「クソッ!!」


 誰かに対してか、はたまた自分に対してか悪態をつく。

 この惨劇はなぜ起きている。

 ターゲットは自分なのか、それともこの宿舎か、学園なのか。

 考えがうまくまとまらない。

 こうなった以上、自分一人では解決の糸口すら見つけられそうにない。

 教室に戻り一旦、麻朝に報告しようかと出口に足を向ける瞬間思い出す。


「あのチンピラ達はどこだ?無事なのか?おい!生きてんなら返事しろ!」


 秋の呼びかけに入口エントランスの方から内府兄弟の返事が返ってくる。


「黒土の兄貴!無事だったんですか、心配しましたよ!」

「兄貴も俺もこいつらも全員無事ですぜ!黒土の兄貴」

「そうか、よかった。なら今すぐここから出て誰でもいいから教師かDクラスの誰か連れてこい!俺はもう少しここに残って調べる」

「わかりましたぜ黒土の兄貴!無理だけはしないでくださいよ!」

「おら、お前ら!ボサッと突っ立ってねぇでさっさと動け!」


 兄弟とその他を送り出すと宿舎の中に居るであろう人物に問いかける。


「俺が目的ならさっさと出て来い。おばちゃん達が犯人ってわけじゃないだろ?」


 秋の声に誘われる様に、エントランス横のパントリーから数人のおじさんとおばさんが歩み出てくる。

 またさっきのアレか。

 無駄に消す必要もない為、とにかく廊下を走り距離を置く。

 しかし、どこから現れたのか目の前にはまた数名にの清掃のおじさんが立っていた。

 消すのを躊躇い後ずさる。

 すると前の部屋の扉が空き、頭から全身を血の様に赤いローブを羽織ったた小柄な少女が出てくる。

 表情は見えないが何故か心底残念そうな雰囲気を醸している。

 その不機嫌さは雰囲気だけに止まらない。


「ちょっとお兄ちゃん!なんで殺してあげないの!この人たちはこんなに殺して欲しいって言ってるのに!」

「何言ってんだお前、この人たちが死にたがってるってのか? それにお前は誰だ! なんでこんなことすんだ!」

「あぁもぅ。お兄ちゃんう~る~さ~い~!! どうでもいいでしょそんなの。でも面白そうだから一個だけ教えてあげるけど、お兄ちゃんはあたしの言う事聞いてくれる?」


 もはや有無を言わせぬとはこのことだろう。

 たぶんであるがここで俺が断ったら最後まで目的を話すことはないだろう。

 そして仮に奴の言う事を聞くとしたら間違いなく俺自身、最悪俺以外の人物にも被害が及ぶような何かを強要してくるはずだ。

 だがここで頭を悩ませる時間は無い。いくら考えても、いう事を聞く以外の選択肢はない。


「聞いてやってもいいが内容次第だ」

「ホントにぃ! やっぱりお兄ちゃん大好き! んとね、簡単だよ。ここにいる掃除のおばちゃんとおじちゃん達を全員消してくれたらいいよぉ! 簡単でしょ? 出来ない事はないよね? 一回消すとこ見たしねぇ~」

「・・・・・」


 あいつはここにいる人たちが殺されたがってると言っていた。

 なぜだ?あの能力がおばちゃん達の能力だとしてもおかしい。

 同じ様な能力をもつ能力者は確かに居るが、ここまで集めるにには相当な時間と労力を要するだろう。

 だとすれば考えられることはある程度絞られる。

 あいつの能力で人を爆弾に変えているか、奴以外の第三者の仕業か。

 考えてどうにかできる訳ではないが出来る限り、目の前のおばちゃん達は助けてあげたい。

 纏まらない考えが頭の中を駆け巡る。

 痺れを切らしたのか、血塗りのローブを被る少女が指をパチンと鳴らす。

 それと同時に後に居た三人のおじちゃんが引きつった笑顔をして秋めがけて走り出す。

 反射的に【破壊】を発動。

 三人を塵も残さず消し飛ばす。

 その様子を見た少女は相当愉快なのかパチパチと手を打ち鳴らし甲高い笑い声をあげた。


「クソッ!なんなんだよ!」

「キャハハ! いいよ、いいよぉお兄ちゃん! そうでないと楽しくないよ! でもね、こんなに楽しいことなのにお兄ちゃんは笑ってくれないんだね」

「関係ない人殺して笑えるか!」

「関係ないから楽しいんだよ~?もっと殺せば良くわかるよ! それじゃあ、来ないならこっちから行けばいいんだね! それそれ! 次は五人だよっ!」

「クッ!!」


【タイムエクステンド】で自爆有効範囲外まで逃げる。

 今更な事だが、ここまで来たらもう頭を叩くしかない。

 覚悟を決め突貫しようとするも、その意図を読むかのように自身の周りを人爆弾で囲む。


「知ってるよ、お兄ちゃんはすごく速く動けるんだよね。たぶん私にも見えないからね、こうやって囲んでおけば消しながら進むしかないでしょう?」


 どうしても俺に消させたいらしい

 消すことは容易い。このまま放っておけば今以上に犠牲になる人が増える。

 だからもう、やるしかない。


「後悔するなよ。お前ごとこの世から消してやるよ」

「うぅ~ゾクゾクするよぉ! さぁお願い! 消して見せて!」


 右手を向け【破壊】の発動間際、バリンと大きな音を立てて宿舎への外側からの衝撃に窓ガラスが飛び散る。

 数歩下がる事で破片を浴びずにはすんだが、割れた窓から入ってきた人物に思わず顔をしかめる。


「やっぱり当たりくじは秋が取るんだよね。一人でつまんない体育館を回ってた甲斐があったよ」

「久人、お前なぁ・・・」

「大丈夫だよ。このおじさんたちは僕が貰うね。ホントはその娘がいいんだけど秋に用事があるみたいだし譲るよ」

「いや、むしろどっちもいらなんだけどな」

「そうなの? でも僕は昨日強い人達と戦ってるし、そう言うのとは違って今日は数をこなしたいからやっぱりこっちでいいよ。りたい放題できるしね」

「おい! 出来る限り殺るなよな!」

「え~、さっき秋も殺してたよ~」

「あれは俺が吹き飛ばされそうになったから仕方なくだな・・・」

「そっか! わかった! じゃあ仕方なく吹き飛ばされそうになればいいんだね! じゃあ僕は外にみんな連れてくね、バイバイ!」

「そういうんじゃねぇだろ!」


 久人は秋の言葉も空しく、ここに居るすべての清掃員の人を【引力】で一纏めにして飛び立っていった。

 残る血色ローブの少女は久人の飛び立った向こう側をみてやれやれと言った感じで肩をすくませる。


「あーぁ。来たのは久人お兄ちゃんかぁ。目的の品はまだ来ないみたいだねぇ」

「目的の品?」

「あぁ、こっちの事だから気にしなくても大丈夫だよ。それじゃあこれからどうする? あたしはあんまり戦闘向きの能力じゃないからさっきのがいなくなったらほとんどなんにもできないんだよね」

「だったらおじちゃん、おばちゃん達を元に戻して今すぐ帰れ」

「それは無理かなぁ、だってまだ終わってないもん。今帰ったら怒られちゃうんだよ? って言ってたら来た来た!」


 いつのまにか秋の後ろに、静脈の様に青黒いローブをまとった少女が立っていた。

 背丈は血色ローブの娘と同じくらいだろうか。

 秋の横をゆっくりと歩き横切ると、血色ローブと並ぶ。


「どうもこんにちわ。私は我欲ガヨクと申すデス。覚えて下さいデス」

「ちょっとぉ、いきなり名前言ったらダメぇ! 去り際にかっこつけながら言うつもりだったのに台無しだよぉ」

「あぁそう。じゃあもういいわよね、さっさと名乗ってしまいなさいデス」

「もう! ガヨクのいぢわる! はぁ、もういいや。あたしの名前は他欲タヨクだよ、忘れないでね!」


 タヨクとは対照的にガヨクはほぼ表情を表に出さない。

 ガヨクが来たことで、タヨクは後ろに下がる。

 どうやらガヨクは戦闘タイプの能力者らしい。


「さぁ、お兄様は私の欲をどれほど受け取って下さるかしら」


 飛び出したガヨクの拳が眼前に迫り、受け止める。

 パシンと乾いた音が宿舎内に響いた。

 それと同時に、受け止めた秋の手首から先がはじけ飛ぶ。


「っがぁぁぁ!」

「あぁ、不用意に触れるからデスよ。今日お兄様に会えたことを嬉しく思うデス! あぁ、喜びにふるえるデスわ!」

「ガヨク! あんまり【喜】よろこびを使い過ぎないでね。終わったあと連れて帰りにくくなるからね」

「ってて!【喜】よろこび? ってかその前にっ、あ~治った! まったく! いきなり拳消すとか出血多量で死ぬわ!」

「素晴らしいデス! さすが【再正】。 あぁ、ますます喜びにふるえるデス!」


 秋は手首から先を治し、体制を立て直す。

 迂闊に触れば一瞬で触れた部分が粉々になる。

 そう、消されたわけではないのだ。

 能力を分析しようと試みるがその前にタヨクがべらべらと喋り出す。


「ガヨクの能力はね、我欲アイグリードって言ってね、自身の喜・怒・哀・楽、の欲望を解放することが出来るんだよ! すごでしょ? それでね、それでね、いまのは【喜】よろこびって言って全身を自在に振動させることが出来る様になるんだよ!」


 ガヨクの能力をペラペラと喋るタヨク。

 そのタヨクの口の軽さにも喜びを感じたのか、一層欲望を解放していく。


「タヨクはおしゃべりデスね。でも今の私は喜びに打ち震えているのデス! さぁお兄様、続きを!!」

「続きなんてのはナシだ。もういてぇのはゴメンだ!」


 突進してくるガヨクの足めがけ【破壊】を発動。

 地面もろとも両足を消しとばす。

 頭から転げるガヨクの両腕も消しさり、ダルマ状態にしてやる。

 床に転がるガヨクは、喜びの欲望が消え去り涙をボロボロ流していた。


「痛い、痛いデス。なんでこんなに痛いのデスか。私がなにしたデスか、哀しいデス。うわぁぁぁん」


 涙が次から次へと溢れ出し、その涙は止まることなく流れ続け、いつの間にかガヨクを覆う様に水の膜ができ上がっていた。

新キャラ登場!!

とうか、最近出し過ぎですかね・・・


今回もここまで読んで頂いてありがとうございました。

次回もお楽しみに!!

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