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学園生に、破壊と救いと無敗の力を  作者: サトウ
夏 ~戦闘編~
33/57

謝罪、そして面倒事に好かれてる

投稿遅くなり申し訳ありません・・・

 七宮が去ったあと、いつものように蓮は心の中に入りこむ。

 もちろん燐と話をする為だ。

 目を閉じ心の中で燐を呼ぶ。

 いつもならすぐに帰ってくる返事が返ってこない。

 何故か少しノイズのようなざわめく音が聞こえる気がする。

 だがそれはすぐに止み燐の声が聞こえ始める。

 いつもとの違いにすこし異様な気もしたが、自身がいつもの様な状態ではないことを思うと仕方がないのかなとこの場は考えるのを止める。

 止めるというかそもそも秋の事で何も考えられなくなっていたからだ。


 《燐・・・》

(わかってるよ、ずっと見てたんだから。後悔してるんでしょ?なんで謝れなかったの?)

 《だから・・・ここにきた》

(たぶん秋くんの事だから謝ればすぐに許してくれると思うよ?それでも出来ないの?)

 《だって・・・秋も悪い。私だけが・・・悪い訳じゃない》

(うん、わかってる。だからさっき秋くんは蓮を呼び止めたんだと思うよ?謝りたいのは秋くんも一緒だよ)


 蓮は自分がただ単に意地を張ってるだけだと分かっていた。

 分かっていたけど素直に謝ることが出来ない。

 好きな人が近くにに居れば何も言わなくてもわかってくれると信じていたから。燐の様に察して、それに自分が振舞うものだと思っていたからだ。

 でも実際は違った。

 燐とは違っていつも一緒にいられるわけじゃない。

 心に聞けば応えてくれるわけでもない。

 それに彼の周りには彼を好きになった人たちが男女問わず沢山集まってくる。

 盗られるんじゃないか、いつか違う人を好きになるんじゃないか、本当は私の事が・・・・・好きじゃないんじゃないか。

 たった一日しか経っていないのに不安と焦りを感じてた。

 そんな時に推薦枠で入ってきた女の子の存在が更に不安と焦りを煽ってくる。

 もうどうしたらいいかわからなくなってたし、今もわからない。


 《燐。秋は本当に・・・私の事が、好き・・・なのかな》

(う~ん、どうだろ?)

 《どうだろ?って・・・燐にも分からないの?》

(そうでしょ?だって私は秋くんじゃないから。秋くんに大好きだって言って貰えた蓮が分からないんじゃ私にはもっとわからないよ)

 《燐は・・・なんでも知ってると思ってた》

(そんなことはないよ。だって私がファーストキスを大事にしてたってことは蓮は知ってた?知らなかったでしょ?こんなに近くに居るのに分からないことはまだまだ沢山あるんだよ)


 そうだ。分からない事はいっぱいある。

 燐と一緒に居た時間は秋よりずっと長い。でもまだまだ知らない事はある。

 なら秋のことがわからないのは当たり前だと思う。

 それに秋も私の事を知らないはず。

 なんだ、簡単な事だったんだ。まだお互いを知らなすぎるのに知ったふりをしていただけだったんだ。


 《燐、私・・・》

(はいはい。なにかわかったんだよね?ならいいんじゃないかな?あとはそれを・・・・なんて言ってたら蓮が今一番話したい人が来たみたいだよ)

 《秋が?なんで・・・》

(なんだっけ?あの、時間引き延ばす能力使って学園中走り割ったんじゃないかな?じゃなきゃこんなに早く見つけられないと思うよ?でもこれで一つわかったんじゃないの?)

 《?・・・なにが?》

(秋くんは蓮の事を大切に思ってるってこと。よかったね!それじゃあ、いつまでもここに居ないでさっさと会いに行って来い!)

 《うん!・・・いつもありがとう、燐》

(いえいえ、どういたしました!それじゃ、頑張ってね!)


 溶ける様に消えた燐の声はいつも通り明るく見送ってくれた。

 でもやっぱり少しだけ、気のせいかもしれないけどノイズの様な何かが聞こえた気もした。


 **********


 目を開けると、肩を上下させるほど息を切らした秋が立っていた。


「蓮、」「秋、」


 同時に話しかけてしまった。

 気まずさからか互いに口ごもってしまう。

 出鼻を挫かれたせいか、えっとあっとと繰り返す秋を見ていたらなんだかそれが可笑しくなってきた。


「ふふっ」


 声に出すつもりはなかったのに自然と笑みがこぼれていた。

 だが秋はその蓮の笑いがお気に召さなかった様で少しムッとした顔で抗議してくる。


「なんだよ」

「だって、秋が・・・可笑しかったから。手とか、わたわたさせて・・・えっとえっと、って」

「しょうがないだろ!いろいろ考えてたんだよ!お蔭で台無しだ」

「いいよ・・・」

「えっ?」

「わかってるから・・・秋も私もお互い素直になれなかっただけ。知らなかっただけ」

「蓮・・・」

「だから・・・これから知ろう?私も・・・素直になるから」

「ありがとう、蓮。でもこれだけは俺の口から言わないといけないんだ」

「なに?」

「俺はこれからもずっと蓮を大切にするよ。だからってわけじゃないけど他の女の子と接するくらいは許して欲しい」

「うん・・・わかった」

「それと相手が俺に好意を持ってたとしても、俺はそれに応える気はないから」

「うん・・・信じてる」


 言わなくてもわかるなんてことはごく一部の事だけ。

 それ以外のことは、形にしないと分からないもの。

 言葉・態度・仕草、多くの要素がある。

 今回は互いにそれを知れたという事が大きな進歩になったんだと改めて秋と蓮は思った。


「さ、教室に戻るか。もうクラスの説明も始まってるだろうしな」

「うん・・・」


 そう言って屋上を後にした。


 **********


 蓮とのわだかまりも解消したことで気分は晴れやかだ。

 さすがにスキップとまではいかないが、心の中はそれくらいハッスルしていた。

 分かり合える事の何たる素晴らしきことかな。

 こうやって理解し合う事でいざこざも起きないし、お互いをより誓くに感じられる。

 そう、だから思い出す。

 あの時。親父や母さんとも話が出来ていれば今頃は・・・

 いや。今そんなことを考えても無駄だろう。

 過ぎ去ってしまった事は今更どうしようもない。

 そんな過去の出来事を外に押し出す様に頭を振る。

 そんな俺の心の内を知っているはずもない蓮はそっと手を握り黙って横を歩いてくれた。

 こちらは見ずにまっすぐ前を向いて歩いているが、恥ずかしかったのか頬が赤い。


(まったく。つくづく甘えっぱなしだな)


 秋は蓮の手を握りありがとうと小さく呟いた。

 二人はゆっくりと教室を目指していたが、目的の場所にはあっさりと着いてしまった。

 引き戸に手を掛け中に入っていくと、予想していたような視線や冷やかしなども無かった。

 拍子抜けするほど普通にクラスメイトからはおかえりなさいと返ってきたことに逆に動揺してしまう。

 俺が口を開く前に教卓に立つ麻朝から声が掛かる。


「あ、二人ともおかえりなさい。さっそくだけど蓮ちゃんは席についてね。秋は私のところに来て」


 なぜかものすごく嫌な予感。

 そしてハッと気が付く。クラスに入った瞬間のみんなの顔。

 心から心配してのおかえりと言うより、なんていうか憐れみと同情が混じったような顔だった気が・・・

 そんな秋の予想はしっかりと当たってしまう。


「それじゃあ改めて、決意表明とあいさつだね、クラス委員長・・・・・・!」

「・・・は?」

「だから、あ・い・さ・つ!クラス委員長・・・・・・になったんだからしっかりしてよね。そんなんだと皆に示しがつかないよ」

「あいさつじゃないだろ、ってかクラス委員長ってなんだよ!いつ決まったんだよ!ってかその話俺は聞いてないだろ!」

「グチグチしてると彼女に嫌われちゃうぞ!でもまぁ説明なしって言うのも担任の私の沽券にも係わるから一応教えてあげるけど、クラス委員長って言うのは一年生から三年生までの各クラスから一人選任されて学園の安全とか運営を一部取り仕切る学園粛清委員会に入る事になるわ。詳しい話と個人の役割はそこで聞いてね。それといつ決まったって言う話だけど、それは貴方が居なかった数分の間に。俺は聞いてないって話は、今聞いたからオッケーだね!以上!」

「なんそれ!そんなめんどいこと出来るか!」


 事の理不尽さに麻朝含むクラスの連中に避難を浴びせるがどこ吹く風。

 諦めろと目だけで訴えてくる。

 そんな中一人の勇者が立ちあがった。


「いいかいみんな、黒土くんがこんなに嫌がっているのにやらせることは無いじゃないか。だから、この学園のヒーローである緋色ひいろ正義まさよしが請け負ってやろう!どうだみんな!」

「レッド・・・おまえ・・・」


 清々しいまでのキラキラオーラを出しつつ俺に向かい親指を突き立ててくるレッド様。

 今現在ばかりは神々しさすら感じるぜ!グッジョブ、レッド!

 ・・・と、俺とレッドの無言のやりとりも空しくクラス中からは大ブーイングが聞こえてきた。

 やれ緋色じゃ無理だの、やれダサいだのキモイだのレッドだの・・・

 称賛の雨を期待していたレッドはその言われようにもめげずにはじめこそ、照れ屋さん達めと言っていたのだが次第に激化する悪口やらに打ちのめされ、ピクリとも動かずに涙と言う名の湖に沈んでしまった。

 ありがとうレッド、キミの事は忘れない。

 そして更なる面倒事の始まりですよ、俺。

 レッドの死亡が確認されたと同時に、麻朝は早くしろとばかりに挨拶を急かす。

 一応形式上でもやってもらわないと担任としては学園と教職員への報告に困るらしい。

 諦め、全身で目一杯でかいため息をついた。


「勝手に決められてしまった黒土秋です。このクラスはことさら少ないから知らない人もいないだろうけどよろしく。こんなかんじでいい?」

「うん。ダメ!決意は?早くしないとまた髪の毛なくなるよ?」

「わかった!わかったからそれは勘弁して下さい!」

「よろしい!さぁどうぞ!」

「はぁ~。決意って程じゃないけど俺が思う事を伝える。俺一人じゃ無理だからみんなにも手伝ってもらいます。頼りにしてるんでよろしく。そんで頼りにした結果のミスとかは俺が引き受けるからみんなは好きにやってくれ。以上!」


 こうなったら面倒事全部引き受けるなんてことはせず小さいことは全部周りに振ってやると決めた。

 さすがにまるまる投げると引き受ける側も面倒になり引き受けづらくなるが、責任は俺が持つことでいささかやりやすくはなるだろう。

 うんうん頷きみんなの反応を確認するが、やはり思った通り責任持ってくれるならいいやと言う感じだ。

 ゲンキンな奴らめ。面倒事は全て周りに振ってやる。

 そう決意をしすると、麻朝からありがとうと言われ席に着くように促される。


「よろしい。それじゃあ秋、よろしくね。じゃあ次にこのクラスの役割だけど、このクラスは今季から始まったクラス決め制度により一年生全体の中で起こると懸念される問題の処理を目的としたクラスになります。クラス委員長の秋を筆頭に頑張るようにね!」


 面倒事はやっぱり俺を愛してやまない様です。


如何でしたでしょうか?

戦闘回迄もう少しお待ちください。

今回もここまで読んで頂いてありがとうございました。

次回もお楽しみに!!

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