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学園入学編Ⅲ

3話目です!


 今現在、戦闘校舎へ移動をしている。

 本来であれば校庭などで行うらしい新入生集会であるが今回はそこでやるらしい。


 戦闘校舎とは、主に能力関係の授業や決闘を行う場所の事らしい。

 学園側で修繕を行っている為、建物やそこにあるもの全て破壊しても問題ない。

 やはり維持にはそれなりにかかってしまうようだが、優秀な能力者育成と人材発掘のために国からは相当な額が援助されているようだ。

 援助されているからといって、毎度壊していたらキリがないので決められた授業又は決闘のみでの使用ということになっている。


 決闘と言うのは学園内の生徒同士のいざこざを解消するための、いわば学園公認の喧嘩のことである。

 教職員から承認を取り、生徒会に立ち合いをしてもらう事で成立する。

 立会人制度の理由としては、生命に関わるような事があればすぐさま割って入る必要がある為だ。

 なお実力が高い者同士の決闘を行う場合は、生徒会と教師が両名立ち会う事になっている。


 歩くこと数分。ようやく戦闘校舎にたどり着く。

 指紋・網膜・声紋・そして許可されたもののみが登録されている個人パスワードの認証が終わると重苦しい門がゆっくりと左右にスライドしていく。

 なおこのセキュリティが許可されているのは、教職員と生徒会長。それと学園長に認められた・・・・・・・・・一部の生徒だ。


 中に入ると壁・地面・扉などすべての色が白一色で統一されていた。

 まるでそこから色だけを取りさってしまったようだった。


 他クラス含め全員の点呼を行い少し待っていると、さっき入ってきた入口から一人の男性が入ってきた。

 身長は180後半程だろうか、髪は前髪を一房ほど前に流したオールバック。年齢はまだ30代ほどではなかろうかといえる感じの若々しさがある。

 切れ長の輪郭に目元や口元には人の良さそうな、または何かを隠していそうな笑みが張り付いていた。

 そして何より目を引いたのはその見た目である。

 全身白一色のスーツに靴。肌を露出している手と顔、そして対照的に漆黒と言えるほどの髪と瞳がその異様さを際立たせていた。

 目の錯覚かそこに顔だけが浮いているように見えてしまう。

 あっけにとられる生徒をしり目に男は口を開く。


「皆さんお揃いですか?」


 各クラスの担任が頷きあい代表者の緒方おがたともが答える。

 ちなみにクラスはA~D組までで、一クラス50人となっている。


「はい。今年の新入園、一年生は全員ここに揃っています。」

「そうですか。それでは始めましょうか。」


 男は全員を見回し一呼吸入れると話し出す。


「皆さん、お疲れ様です。白波学園の学園長をさせて頂いてます、宇城嶋うきしま 凍人とうじんです。今後何度か会う機会があると思いますのでよろしくお願いします」


 そういうと軽く頭を下げる。


「さて、私が誰かわかったところで皆さんが今一番気にしているココに集まった理由をお伝えしたいと思います。まずは今のクラスですが仮に・・決めたものなのでご了承下さい。これから変わります」


 この一言で教師以外の全員がざわめき出す。もちろん俺も例外ではない。


「なに!せっかく手に入れた窓側最後尾の席が!」

「私との出会いより席の心配?」

「全くだ。せっかく友人になれたのにつれない奴だ」

「当たり前だ!俺には昼寝の自由な権利がある!」

「はぁ・・・そうですか」


 俺の悲壮感たっぷりの嘆きに燐と仁が呆れたように呟く。


 宇城嶋が緒方に目配せをしたのち、いまだざわざわとしている生徒達に向かって手を叩く。

 軽く叩いたのにも関わらず何かが破裂するような大音響が響き渡る。

 生徒達はその音量により体を硬直させ口を閉じる。

 だが一部の生徒は平然としていた。その何人かのうちの一人である俺も平気。


(あの能力は緒方先生だな。音を操るってとこかな?最初に教室入ってきた時も使ってたし、さっきも学園長が目配せしてたし。今は軽く纏ってる・・・・・・程度だからそれくらいでシャットアウト出来るってことか)


 一人で簡単に結論を出す。

 横に居た仁と燐も平気そうだった。日頃からあの音量に慣れているのか、それとも俺の様になにかで防いだのか。

 久人も同く平気だった様だがあいつの能力では防ぎようがないはずだが・・・まさか我慢してるのか?


(まぁいい。楽しめそうな奴らがまだちらほらいるみたいだしな)


 そんな事を考えながらにやついていると、宇城嶋が口を開く。


「驚かせて申し訳ありませんでした。皆さんが落胆するのもわかります。勇気を振り絞り話しかけ仲良くなった友人との時間を奪ってしまったことをお詫びします。しかしながら皆さんは気が付きませんでしたか?クラス席順がランダムであることに。もちろん気が付いたでしょう。本来であれば通例通り、つまらないですが名前順になっていたはずです。ですがそれは本年度の入園生からやめることにしました」


 そこまでで話を区切ると真っ白な革靴をカツカツいわせゆっくりと歩きだした。


「クラスと言うのはとても重要で成長途上である皆さんにとって、とても大切であるという事は過去の統計からも明らかとなっています。能力を使う過程で大切になるのはなにか。想像力・適正・理解。多くの要素が存在します。私は今までの私の経験上、【感情】が一番大切になってくるのではないかと考えました」


(感情、ねぇ。)


 それは一理あると秋も考えていた。

 感情の抑制が効かなくなりそれを糧として暴走する能力。大切な何かを護ろうとする本人の意思に呼応し進化を遂げる能力。人を憎むことで初めて発現する能力。

 一つの感情によって引き出される能力の無限の可能性。それは良くもあり悪くもある。

 俺のこの能力ちからも感情によってかつての能力を超える進化を果たした。

 だが、間違えると危険だ。

 秋が思っていることを代弁する様に宇城嶋は語る。


「若く未熟で不安定。だからこそ感情が大きく作用する。それは危険でもあり希望でもある。見たところ数名はある種の進化をした生徒もいるようですね。ですが学生生活を送る中で、そこから更に進化をする事ができるということもあり得ます。いままで進化の過程で味わった感情と違った感情が宿る事で芽生える可能性です」


 一度立ち止まり反転するともと居た場所へと戻っていく。

 寸分たがわぬ位置に戻り、にこりと笑う。


「さて何が言いたいかと言いますと、これからクラス決めを行いたいと思います。先ほど感情がどうのと言いましたが、これまでの時間で仲良くなった人、これから仲良くなりたい人、旧知の友人、誰でもどんな人でもいいので四人一組を作って下さい。A~D組全員で200名ですのでちょうど50組出来上がります。その50組に一枚ずつ各組のアルファベットが書かれているプレートをお渡しします」


 また生徒達がざわつく。だが説明が気になるのか催促する様にすぐさま静かになっていく。


「もうお分かりですね。そのプレートを奪うもしくは守るなどして自らが入りたいクラスを選んでください」


 静まり返る中、燐がすっと手を上げる。

 それに宇城嶋が気付き裏のありそうな笑みで指摘する。


「おや。四方陣、東城家の燐さんではないですか。いや、この学園では【撃鉄げきてつ】の方でお呼びした方がいいですかね?」


 燐は若干眉間に皺を寄せむっとした表情になるが、すぐに元の表情へと戻し答える。


「どちらでも構いませんが質問してもよろしいですか?」

「もちろんです。なんでしょうか?」

「プレートを取り合い、クラスを思い通りにできるというのはわかりましたがメリットがあまり感じられません。四人一組になる時点で仲のいい人かそれに準ずる人と組む確率は高い。それ以外の人と同じクラスになろうがどうでもいい、とここに居るみんなは感じていると思います。ですからわざわざプレートを取り合う必要がないのではないですか?」


 確かにそのことは誰しもが思ったことである。

 別に仲の良い奴と一緒だし取り合わなくてもいいのではないかと。


「そうですね。その通りです。これから言うクラス特権・・・・・の事を言わなければね」

「クラス特典?」

「そうです。今言った通り各クラスにはそれぞれ特権が用意されています。聞きたいですか?」


 そう言ってまた燐に向かい人の悪い笑顔を向ける。


「是非教えて頂きたいです。お願いします」


 全新入生を代弁し燐が答える。少々イライラしているのだろうか眉がヒクヒクしているような気が・・・

 その様子にはとっくに気が付いているであろう宇城嶋は今までで最上級の笑みでそれに答える。


「そうですね。皆さんのやる気がグンと上がるかもしれませんからね。では説明しましょう。まずA組は、この戦闘校舎の使用権と個人及び集団に対する決闘申込みを自由に行える。もちろん上級生にもです。ただし決闘であっても殺しはダメですからそこはご理解下さい。続いてB組ですが・・・」


 そこまで言うと燐が話を遮る。


「待ってください。そんなことをすれば能力を力の誇示だけに使う人が出てくるのではありませんか?さっきおっしゃっていた様に私たちは若く未熟です。そんな特権を与えてしまえば溺れる者がでてきます」


 宇城嶋は表情を崩さずこう告げる。


「私はこうも言ったはずです、危険であり希望であると。力の誇示が必ずしもこの国にとって、学園にとって悪いものだけではないのですよ。それに万が一溺れるような事があっても大丈夫です。私もいますし教師諸君もいます。それに・・・」


 宇城嶋が燐に顔を向ける。しかし目だけはしっかりと斜め後ろの俺を見ていた。

 目がバッチリ一秒は合っていたから間違いない。

 姉貴が俺の能力ちからの事を話すはずはないと思うが俺の事をマークしている様だった。

 どのみちどこかで公けになるのだからどうでもいいが・・・

 一瞬の間の後に宇城嶋はまるでお道化た様に、目が合ったことを誤魔化す様に続ける。


「【撃鉄げきてつ】さんもいらっしゃいますからね。ということで続きにいってよろしいですか?」

「わかりました。構いません」


 とてもわかりましたという顔ではないものの、ここで言い争っても仕方ないと思ったのか燐は簡単に引き下がった。


「さて続きですが時間が惜しいので速足でいきます。B組は非戦闘系能力者を優遇したクラスです。治癒系統・生産系統などの個人に合った専門的な能力学術を提供します。それと一般生徒はランクDまでしか閲覧できない専門書物やデータもランクBまでの閲覧を許可します。ただし自らの研鑚以外、すなわち口外や漏洩などした場合は処罰しますのでそこはご理解下さい」


「C組ですがこのクラスには金銭面での援助を行います。このクラスの全員に対し月に20万円を使用できるカードを進呈します。もちろんどんなことに使っても学園側は咎めません。そして更に家庭での金銭面が心配な方にはその金額分を丸ごと学園で引き受けます。例えば借金でどうしようもなくなり、せっかく入った学園から退学という選択を取らざるを得ないなどと言った場合、学園でその借金を全額返済します。ただし横領など出来ない様にしっかりと審査はさせて頂きます」


「最後にD組です。このクラスは特権はありません。あえて言うならば、A・B・C組に入れず負け落ちた生徒の受け皿用のクラスです。ですが安心してください。他の組同様に授業などは全く同じ様に行いますので。さてそれではグループを組んで・・・・」

「はい!待った!」


 いくらなんでもD組の扱いが酷過ぎる!俺がD組になったらどうするつもりだ!

 何としても何かおまけつけてやる!

 そう決意して先にいこうとする宇城嶋のセリフを奪う。


「君は・・・」

「黒土 秋です。よろしく。質問ってか聞きたいんだけど、D組の特権無しはひどくないですか?」


 そんなことかとため息を吐いて宇城嶋は用意していたであろう答えを簡潔に言う。


「当たり前じゃないですか。やる気さえ出せば限界を超える能力に目覚め、D組にいかなくても済むかもしれないのにそれを怠る事はどうかという事です。懸命に目指し例えD組になったとしても価値があればその人の糧になる」

「そうかもしれないが、特権無しはズルい!攻めて学食ラウンジで食えるものを全額タダとか付けろ!」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」


 あっけにとられる宇城嶋。馬鹿かこいつの目を向ける生徒。青ざめる教師。そして勝ち誇った俺。

 やがて宇城嶋の顔には今まで見てきた作った笑いではなく、心からおかしいと思っているような笑い顔が表れていた。


「あっはっはっはっは!面白いこと言いますね秋くん。いいでしょうそれくらいなら許可しましょう」

「おっし!ありがとうございます!学園長が話の分かる人で良かったよ。これでどこに行っても大丈夫だ!」


 仁と燐に満面の笑みで親指を突き立てる。

 そんな二人は現実逃避する様に明後日の方を向き他人となっていた。

 突き上げた親指をそっと戻す。


(今日もいい天気で晴々するなぁ・・・)


 俺も現実逃避しているとついでにと宇城嶋が言った。


「ついでにですがいいことを考えました。それはクラスが正式に決まってからにしましょう。それではグループを組んで下さい。30分後に確認します」



なんだかんだと休日は見事に時間が取れず・・・

投稿は基本的に平日になるかもです・・・

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