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学園入学編ⅩⅩⅤ

25話目になります。

今回は少し早く投稿できました。

 憤怒の表情でレッド・・・を睨みつけるイエロー。

 今戦っているはずの秋ではなくその怒りと視線は何故かレッドに注がれていた。


「ふひゅっ。レッドぉ!お前はチームを捨てるのかぁ!」

「………」

「おまえぇ!はひゅっ。無視するなぁ!!」

「いやいや。今どう見てもレッドさんの意識は夢の中なんですけど。ぶっ飛ばした俺が言うのもなんだけど」


 イエローがいくら叫ぼうが喚こうが一向に目を覚まさないレッド。

 ピンクはイエローのあまりの剣幕に、レッドを起こそうとするがやはりダメ。

 仕方なく3つ目の能力【再正】を発動させる。


「!!あなた!レッドに何をしたの!やっぱり命を奪わないと気が済まないのね!この鬼畜!」

「うるせぇ!女に子が鬼畜とか言うな!その前にいっただろ殺さないって!!せっかく治してやったのに!感謝しながら地面に頭擦りつけて謝れ!」

「何を言ってるの!大体あなたがレッドを、えっ?……嘘……」


 レッドの体から淡い緑の光が発生する。

 すると目に見えて顔色が良くなり、細かい擦り傷や腫れあがった頬も元に戻っていく。

 この能力は、傷ついたり壊れてしまった対象を再度正しい状態に戻すことが出来るというもの。

 その場で傷ついたものを治すのであれば不便はない。

 だが例えば、長い期間隻腕で過ごしその状態を対象者が正しい姿・・・・だと認識してしまったらもう腕は戻らない。

 なぜならばその当人にとってはそれが正しい姿になってしまっているからだ。

 それと、死亡した人は元には戻せない。体は形があり元に戻せるのだが、それとは違い魂に形は無い。

 体から離れた魂を入れ直すことは今の自分には出来ない。

 以上の条件さえ満たせば傷はもちろん物も元通り【再正】することが出来る。


 そして【再正】の力によってレッドは気絶の状態から覚醒した。

 俺の言葉を信じられなかったピンクが驚きのあまり固まる。

 いきなり上半身を起こすと驚きに固まるピンクを見つめ、自らの頬に手を当てさすりだすレッド。


「あれ?痛くない。腫れてない」

「レッド!!大丈夫なの!?」

「ぁ、ああ。うん、大丈夫、みたいだけどどうして……」

「そこの悪党、黒土が治してくれたのよ」

「黒土が?なんで?」

「治したのに悪党はないだろ。はぁ~、治した理由か?簡単だよ。あそこのブタがピギャピギャ喚いてうるさいから起こしたんだよ。レッド様に用事があるんだと」


 そう言って親指でクイっとイエローのいる位置を指す。

 未だに何事かをわめき散らしているが、俺は奴の声を耳に入る前に【破壊】しているからただ口をパクパクしているようにしか見えない。

 あ、さっきブタって言ったの聞こえてたみたいで怒ってるなぁ、まぁ今更か。


「というわけでレッド。あのブタを黙らせろ。目障りっ!」

「恩人に言われては断れないな。というかその前にこっちのチームの問題でもありそうだしな」

「わかってるのならいいんだ。さっさと行って、話つけて、負けを認めて終わりだ。OK?」

「なんだか癪に触るけど……わかったよ。少しそこで待っててくれ。行こう、ピンク」

「えぇ。あなたのそばならどこへでも!」

「どこへでもって、すぐそこまでさ。でも君が望むならどこまでも連れて行けるよ」

「ありがとうレッド、なら今すぐ2人で……」

「わかったよピンク。なら今すぐにでも君を、」

「はい、二度目のドーン!!」

「ほげらばっ!!」

「キャー!レッドーーー!!」

「手加減したんだから気は失ってないだろ!!さっさと行け!!この馬鹿レッドが!!三歩で忘れるとかリアルでやられるとホント腹立つな!!」


 折角治った頬はまた腫れあがり、痛みに涙をながしながらイエローのところまで歩いていく。

 その後ろには心配そうにしながらピンクが寄り添っている。

 ようやくたどり着いたレッドに怒りに震えるイエローが何事か喚いている。

 うっとおしいからあの三人の声を全てシャットアウトしているから何言ってるのかは分からないが、遠目で見てももめているのは間違いない様だ。

 イエローが怒鳴り、レッドが落ち着けとジェスチャーしながら説得し、ピンクは少し離れておろおろしている。

 すると突然イエローが下を向いたまま動かなくなる。

 訝しむレッドとピンクはイエローの顔を覗き込もうとするが、その前にガバッと音がしそうなほど勢いよくイエローがのけぞり狂った様に笑い出す。

 ただ事ではない空気を感じ取り、秋は取り敢えず三人から発する声の【破壊】を仕方なく止める。


「はふゃふゃふゃふゃ、あふゃふゃふゃふゃ!!やっぱりみーんな裏切るんだ!ならぜーんぶ僕チンのモノにしちゃえばいいんだぁぁぁ!」

「何を言ってるんだイエロー。誰も君を裏切ったりはしていないじゃないか」

「そうよ、あなたは疲れているのよ。一度休みましょう」

「う、うるしゃーい!ふひゅっ!黙って聞いていれば好き勝手言って!!自分はリーダーに向いてない!?ピンクの為に強くなる!?ふざけるのも大概にしろぉぉ!」

「イ、イエロー、まずはいったん落ち着こう」

「だまれぇぇ!!僕チンはヒーローになりたかった!見た目で気持ち悪いと言われ、能力もパッとしない。この世の女の子を護って好かれたかった。でもいつもいつも人気が出るのはレッドぉ、お前だけだった!そしてチームの中で唯一優しくしてくれたピンクはもうとっくにお前のものになっていた!これが裏切り以外のなんだって言うんだぁぁ!!」

「イエロー、お前……」


 涙と鼻水でぐじゅぐじゅになりながら必死で訴えてはいるが、結果から言おう。

 イエロー、君はただ単に女の子が好きなだけだよ。最初からそれ以上でも以下でもなかったんだね。

 あそこまで自分を貫けるイエローは素晴らしいが、その考えには同意しかねる。

 いくらなんでも公言しちゃったらもう駄目だろ。変態さんの仲間入り決定だ、というかもう変態さんか。

 宥めるレッドの肩に掴みかかりイエローはなおも叫ぶ。


「ふひゅっ!お前さえいなければ! いや、この世に僕以外の男さえいなければよかったんだ! もういい。もうおしまいだ」

「そんなことない!イエロー、君は十分魅力的だ!だからこれからもっと自分を磨こう。このチームで!!」


 レッドの的外れな慰めについにイエローが壊れ、一層高い声で笑い出す。

 するとイエローの体がドロドロと溶け出し、レッドを掴んだ腕の先から紫色の毒々しいスライムに変化していく。

 肩から包まれるようにスライムに絡めとられ、身動きの取れなくなったレッドが暴れるが逃げ出すことが出来ないでいた。


「イ、イエロー!?なにするんだ!やめろ!」

「ふひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!もうぜーんぶ僕チンのモノにしちゃおう!ふひゅっ!手始めにみんなの大好きレッドくんをイタダキマース!」

「やめっ……」

「!!あ、あぁ……レッドが!レッドが!!誰か!誰か彼を助けて!お願いよ!!」


 大口を開けた巨大なスライムは一気にレッドを飲み込んだ。

 紫色のスライムと化したイエローはレッドを飲み込むとグネグネと蠢き口と思われる場所からゲップを吐き出す。

 レッドを飲み込んだスライムは紫をベースに赤の斑模様が浮かびあがり一回り大きくなる。


「ふひぇひぇひぇひぇ!これでレッドも能力も僕チンのモノぉ。次はぁぁ、お前だぁ」


 そう言うとレッドのものであろう覚醒能力を発動させ、気絶したままのグリーンのところまで一瞬で移動し、そのまま一気に飲み込んでしまう。

 またうねうねと蠢き取り込み終わると緑の縞模様が加わり更に一回り大きくなる。


「あぁ~ふひゃっ!快感だぁ~!能力を解放するとこんなに気持ちよくなれるなんて……最高だなぁ。ふひゅっ!じゃあお次はピンクちゃんの番ですよぉ」

「イヤっ!来ないでぇ!誰かぁ、助けて!」

「ふひゃっ!来ないでなんて言わないでよぉ。ここには愛するレッドもいるんだよ?ずっと一緒なんでしょ?だったら、さっさと僕チンに喰われろぉぉ!!」

「イヤッ!!イヤーー!!」


 異形の生物が人を飲み込む姿を目の当たりにして、周りの生徒は恐怖で散り散りになって逃げていく。

 取り残されたピンクはすぐそこまで迫る巨大なスライムの姿を確認すると、自らの最後を悟り目を固く閉じた。

 1秒、2秒、3秒と時間が過ぎていくが一向に呑まれたような感覚はやってこない。

 恐る恐るゆっくりと目を開けると目の前には秋が立っていて、迫るスライムの体の一部を消し飛ばしていた。


「どうして……どうして?助けてくれるの! レッドの時も、私の時も」

「どうしてって言われてもなぁ。別に見捨ててもいいんだけど初めに言ったろ?俺は蓮にそういうとこは見せたくないって。それにそうなったとしても背負うのは俺だけで済むからな」


 ピンクはここで初めて秋と言う人間が少しだけ分かった気がする。

 ただ単に優しいのだ。でもそれは身内に対してだけ。

 今の自分が助かるのは、蓮という女の子がいるから。もし居なかったら私はもう既に呑まれている。

 そう思うと震える程怖かったがそれと同時に安心した。

 この人も好きな人を護りたいだけなのだから。


「そっか、なら蓮ちゃんに感謝しないとね」

「そうだな。ついでに俺にも感謝しとけよな」

「わかったわ。でも一つだけお願いがあるの」

「はいはい、わかってるよ。レッドを取り戻してだろ?」


 秋の答えを首を横に振って否定する。

 そして改めて秋に頭を下げお願いする。

 表情までは覗き込んでいないから見えないが、下げた頭の位置からはポタポタと涙が流れ地面を濡らしていた。


「レッド、グリーン……そしてイエロー。みんなを助けて。お願い……」

「はぁ〜……わかった。でも約束はできない。特にイエローだがあそこまで体が変質してるともう戻れるかどうかってとこだな」

「うん。出来る限りでいい。お願い」

「ハイよ!じゃあここで待ってな」


 そう言うと秋はひらひら手を振って気だるげに歩いて行った。


如何でしたでしょうか?

皆様からのご意見・ご感想お待ちしてます。

今回も読んで頂き、ありがとうございました。

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