学園入学編ⅩⅩⅢ
23話目になります。
いつもお待たせしてます。
勝ったのか負けたのか…
複雑な気持ちで大きな体を項垂れさせながら仲間のもとへと戻ってくる仁。
戻ってきた仲間に皆それぞれに声を掛ける。
「仁…燐がお疲れさま…だって」
「デリカシーのない男だな仁は。あそこまで言って気が付かなかのか?」
「仁くんお疲れ様。今度は僕と遊ぼう!」
燐と蓮の言葉には正直に礼を言うが、残り二人は無視だ。
後で苦しみの幻覚でも見せてやろうと心に誓い、話題転換の為に最後の1人である秋を急かす。
「秋。もう時間がないぞ?あと残り30分程度だ」
「おぉ。もうそんな時間か。ならおれが何もしなくても終わりでよくないか?」
「それも…そうだけど…まだ秋の能力を知らない」
呆れる仁、秋の能力が気になって仕方がない蓮たちとダラダラと話をして一向に進まなかったが、秋に挑戦したいと言う奴らが現れたことで一応の相手はできた。
今回は四人一組のチームの様だが何か面倒そうだ。
何かと言われれば、こいつらが!と即答出来るほど性格的に面倒な奴らだった。
「そこの悪を牛耳る黒土という奴!出てこい!勝負しろ!」
「そうよ。ガイアレッドの言う通りよ」
「理論的な正義の名の下に鉄槌を下す!」
「貴様に、はふゅ…残された、はふゅ…選択は二つ。我らに降伏するか、はふゅ…ボコボコにされるかだ!はふゅ…」
この面白戦隊?なんだろうがもう何からツッコんでいいやら。
ガイアレッドとかもう恥ずかしすぎて俺なら死ねると言うかまず見た目がもう卒倒ものだ。
上から順に、全身赤タイツに黒のブーツと手袋装備。顔も背丈も体型もいたって普通の男子がガイアレッド?らしい。
たぶん正義感が強すぎて頭がイッてるタイプの人種だ。こういう奴は人の話をまず聞かない。
そんで次は、これまたピンクの全身タイツで黒のブーツと手袋装備。
見た目は可愛くもなく綺麗でもなく本当にごく普通過ぎる程の普通の女の子。ただし顔から少し視線を落とすとダイナマイトが仕掛けられているが為に顔の普通さにプラス補正がかかる。
あの中でヒロインになるのは当然か。んでこの子がガイアピンク?とのこと。
次は全身緑の…(省略)。黒縁メガネをかけた、いかにも勉強が命ですとでも言いたげでひょろりと上に長い男子。
しきりにメガネの位置を直している。
はいこの男がガイアグリーン?さんです。以上!
最後の一人は全身黄色の…(省略)。太めではふゅはふゅと陸に打ち上げられたトドのような息遣いをしてだらだらと汗を流している。
そしてこいつが一番、異常だ。こいつだけは何と言われようともぶっ飛ばす!
そして言わずもがなこいつがガイアイエロー?だとよ。
パッと見だけでこれだけの変態性を醸し出している輩に正直初めて出会った。
そりゃまぁ俺のグループも、体は一つに中身は二つな健気な女の子とか、悪魔に向かって悪魔みたいな仕打ちする奴とか、人を惑わす龍の人とかはいるけどさ。
ってかなんか言ってて自分で仲間のチョイスを間違ったんじゃないかって思えてきた。
でもまぁガイアレッドとか痛いこと言ってるやつがいないだけ良しとしよう。
なんだかんだとくだらない考えに頭の中が占拠されてきている間もまだおバカ戦隊の口上は止まらない。
「さては俺達に恐れをなしたか悪党め!」
「そうねガイアレッド、あそこでアホヅラ晒してるわよ」
「さぁ理論的に行くぞみんな!」
「われらの、はふゅ…初陣だふゅ…蓮タン今行くよ」
4人でぐっと拳を握り頷き合い、天高く突き上げながら左右に散開する。
そして右から緑、ピンク、赤、黄の順に一直線に並び、ヒーローにありがちというかお決まりの登場シーンが始まった。
のこり30分と言ってからもうかれこれ10分は経過している。俺としては戦わなくても良さそうだからどうでもいいが、いい加減精神的に疲れてくる。
仁と燐と久人なんかどこから出してきたのかトランプでババ抜きまでしてる始末だ。
…もう好きにしてくれ。
そしてここぞとばかりに変態どものテンションも最高潮へと達していく。そしてイエローキモイ。
「燃える情熱!輝く正義!悪の根源を燃やし尽くす炎!ガイアレッド!!」
「香る平和!安らぎの場所!悪をも癒す魅惑の花!ガイアピンク!!」
「理論的思考による鉄槌を下し、正義の名の下に悪を裁く!私がガイアグリーン!!」
「可愛い女性のはふゅ…味方!美しいスタイルのはふゅ…守り手!リア充にはふゅ…死を!ガイアイエロー!!」
「行くぞみんな!!」
「ええ!」「わかっています!」「はふゅ…おぅ!」
「4人揃って!!愛と平和と学園と生徒と先生と市民などすべてを護る!!白波・ガイアフォース!!」
で、背後でお約束の謎大爆発。
4人ともめっちゃドヤ顔ってるけど奴ら以外はもう…それはもう引きまくっていた。
特にイエローなんて私利私欲の塊じゃねぇか!どっちが悪だよ!
もうどうでも良くなってきたを通り越して、時間切れまで好きにさせることにした。
俺もトランプをしている仲間のところへ歩いていこうとすると、いきなりビームのような光の筋が足元に当たり思わず立ち止まる。
「なんなんだよ。なんか用か!」
「用かではない!このガイアフォースの前から逃げようとはいい度胸だな!この悪党が!」
「そうよそうよ!ガイアレッドが怖いからって逃がさないんだからね」
「理論的に考えれば今の奴は精神を著しく疲弊している。なぜならばこのガイアフォースに勝てないと悟ってしまったからさ」
「蓮タンを返せ!!はふゅ…蓮タン、僕ちんのところにはふゅ…おいでよぉ。いいことしようよぉ。でふゅっ、でふゅでふゅでふゅ」
ホンっトに何なんだこいつら!気持ち悪すぎる!
特にイエロー。ホントもうつくづくなんでヒーローになったんだ!
もうめんどい。さっさと終わらせるしかない!となんとか気持ちを高ぶらせるがまたしても出鼻を挫かれる。
「いくぞみんな!!来い!ジャスティスソード!」
「待ってたわ!来てジャスティスツインダガー!」
「理論的な武器を選んだ私の下へ。ジャスティスロッド!」
「はっふゅ!蓮タンと一緒になりたい!正義のロープ!」
また変なもの出したよぉ。
レッドは炎をモチーフとした形状の刃渡り約80センチほどの片手剣、ピンクは花びらの形状をした二本のダガー、グリーンは木の枝をモチーフとした杖と言うよりは指揮棒といった感じのロッド、イエローはたぶん願望が具現化したであろう何の変哲もないロープ。
イエローにはもうツッコみません、ごめんなさい…
心の中でそっと誓いを立てているとそれぞれが自慢気に自らの能力説明を開始してきた。
自由すぎて笑いすらおきない。
「いいことを聞かせてやろう。これは同士となると誓った者にだけ使える正義の武器を与えるという僕の能力から産まれたものだ。持つ者の意思に呼応し、形や個人の能力とは別の特殊な能力が使えるという素晴らしいものだ。どうだ欲しいだろう?今仲間になれば君にもこの武器を授けてやろう」
見た目は個人によるからともかくとして意外と良い能力なのは確かだ。
だがしかし、あの変態スーツを着て声高らかに口上とか…考えただけでゾッとする。
丁重にお断りしようかと口を開きかけるとガイアピンクが、レッドの能力で手に入れたツインダガーの先からさっき撃ってきたビームを連発してくる。
「ダガーからビームかよ!!」
「お黙りなさい。貴方のような不埒な輩にガイアフォースは名乗れないわ」
「理論的に考えるとそのようだね。頭も悪そうだし」
そう言ってグリーンが指揮棒で切りかかってくる。
長い腕を利用してしなるように切り裂いてくるが、それをスイスイと避けながら叫ぶ。
「どいつもこいつも武器の形と能力がめちゃくちゃだろ!」
我を忘れる程の馬鹿馬鹿しさに後ろからの攻撃に反応が遅れる。
「はふゅ…でもこれでチェックメイトだふゅ」
イエローのロープが蛇の様に絡み付き全身の自由を奪う。
「はふゅ、僕ちんのロープは対象を捕まえるまで追い続けるのでふゅ。さらに僕ちん自身の能力で…」
イエローが開いた手のひらをぐっと握るとロープが溶け出しスライムのようなものに変わり体を包み込む。
「はっふゅ…ロープだと切られちゃうけど、スライムに変えちゃえば切る事もできないし自由も効かなくなるからじたばたもできないでふゅ。この僕ちんの力は自分が装備したものをスライムに変えるっていう素晴らしい能力でふゅ。これを蓮タンに…でふゅでふゅでふゅ」
「気持ちワルっ!!ぬるぬるが服の中に!」
「はっふゅ、もがけばもがくほど服の中に入ってくるでふゅ…でも男がもがいてるところをみてもつまらないでふゅ」
「こんのぉぉぉ!」
暴れるがやはりイエローの言う通りどんどん服の中に入ってくる。
出られないし気持ち悪いし最悪だ!
「さてここらへんでトドメといこうか!!」
「そうね!みんなっ!私の下へ!」
そう言うと4人はレッドを中心に右にピンク、左にイエロー、後ろにグリーンのひし形に並び、武器を秋の方へと向ける。
するとそれぞれの武器が輝きだし一つの巨大な大砲に変化する。それをレッドが肩で支えトリガーにゆびを置き、グリーンとピンクが左右から位置を秋に固定し、イエローは後ろでX字でポーズを取る。
「これが私の同じ意思をもつ同士みんなの力を一つにする能力。パワー、スピードも人数分倍になるわよ!」
「そしてグリーンである私の能力は、決めポーズをすると背後で爆発が起きるというものだ!どうだ、実に理論的だろう」
ピンクはまぁ使い勝手は悪いけど使えないわけではないな。グリーンの能力は意味不明、お前もイエロー同様何しに来た!
そうこうしてるうちガイアフォースの持つ大砲ににエネルギーが収束していく。さすがにあれの直撃はまずい。
避けなくてはいけないのだが体の自由は利かないし、頭の中はこいつらの意味不明さにパニック中だしでもうなにがなんだか…
そうこうしてるうちに砲身には虹色の光が溢れチャージが完了していた。
そしてレッドは高らかに叫ぶ。
「くらえ!これが、ジャスティスフォースキャノンバーニングボンバーフラッシュエグゼキューション・・…略してジャスティス砲だ!」
「最初っから短い方でいいだろ!!」
秋の魂のツッコみも止まぬまま、その光の中に飲み込まれ大爆発を起こした。
そしてガイアフォースは決めポーズをとり、高笑いしながら爆発を見ていた。
ようやく主人公の戦闘回にはいれました。
無双難しい・・・