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学園入学編 ⅩⅢ

ようやく投稿です。

遅くなってすみません。

姿を変え一時的に人間を捨てた阿國は、久人にプレッシャーを与えているが一向に効果がなかった。

それもそのはず。久人はと言うと久しぶりの強者の風を浴び心地よさの中に浸っていた。


「阿國くん、君は素晴らしいね。僕を指名してくれてありがとう!」

「それはどういたしまして。そろそろいいか?この姿も時間制限ありなんでとっとと済まさせてもらうさ!」

「願ってもないよ!じっくり楽しもう!」

「だから!時間が無いっていってるさ!!」


阿國は地面を蹴り上空に居る久人にまっすぐに飛んでいく。

軽く地面を蹴っただけにも関わらず、その勢いは一瞬で久人に到達し肩を掠める。

勢いを殺し空中にとどまる阿國は、手を閉じたり開いたりを繰り返す。


「久しぶりだったからな。今はカスる程度だったけど今度は外さないさ」

「驚いたよ。全然見えなかった。それに傷なんていつ振りだろう。秋にやられて以来だよ」


全く見えていないにしては、阿國に対しまるで恐怖を感じていない口調で話す。

一方、阿國自身は久人に対する先の一撃の違和感が頭の中を支配していた。


(あの速度なら反応出来ないのは嘘ではないか。完全に体を操れるわけではないにしても胴を狙った攻撃があそこまで外れるか?まさか斥力でズラされたのか?分からないものは仕方ない。何度か試すしかないさ…)


阿國は振り向きざまに拳を突き出す。その拳に圧縮された空気の塊が久人にむけ飛んでいく。だが久人は全くそこから動かずにじっと阿國の目を見たままそれを右に流した。


(またか…やはり斥力で確定さ。なら!)


先ほどの空気圧縮弾を両腕で何度か発生させる。その度に弾かれるが構わずに続ける。


「阿國くん。透明な何か…たぶん空気だと思うけどそんなもの何度飛ばしても無意味だよ?現に全く当たってないし」

「そうでもないさ。それももう少しでわかるって」


久人はワンパターンな阿國の攻撃に辟易していた。このままつまらない状況が続くのは勘弁してもらいたかった。ならいっそこっちから出ようかと思ったその時、右腕に違和感を感じた。


(なんだ?)


始めて久人は阿國から視線をはずし右腕を見る。その肘から先が凍傷を負い感覚を失っていた。


「なにがって顔だな。簡単さ。空気を圧縮して飛ばしたんだ」

「そうだったんだね!なら納得だよ!よかったぁ自分から行かなくて。まだここで粘った甲斐があったよ!楽しくなってきた!」


空気は圧縮すると冷気を発生させる。それを巨大化した拳で放ち通過させることで局所的ではあるが凍傷を起こすことが出来た。

久人の引力と斥力はこの作用に対しては効果を表さなかったこと。この意味はデカい。


(ならこのスタイルがいいな)


凍る腕を気にしたのは一瞬で、また久人はにこにこと阿國の出方を待っている。


(その余裕が命取りさ!!)

「久人。アグニオンが師子王だってのは知ってたよな?」


その問いかけに久人も嬉しそうに答える。


「もちろんだよ。だからこれから何か見せてくれるんでしょ?」

「そうさ。師子王ってのは伊達に王を名乗ってるんじゃないってことだ。アグニオンは太陽の獅子とも言われてる。そこまでは知ってたか?」


久人の返答も待たずに阿國はアグニオンの内なる力を引き出していく。

もともと赤かった鬣は紅蓮の炎となり、その体を覆っていく。

やがて全身は赤く燃える炎で包まれる。

そしてそこには太陽があるのかと思う程の熱量を帯びた、青い目の獅子王が立っていた。

その姿を目の当たりにした久人は興奮を抑え込めずに歓喜した。


「すごい!こんなの初めてだよ!秋とやり合ったときだってこんなのは無かった!じゃあここからはお互いに全部出し切ろう!じゃないと楽しめないから!」

「そうだな…俺は初めから全開だったけどな!!」

(そう全開だったんだ…だから今の俺がなぜ動けているのか不思議なくらいさ。でもなんだかんだ言って俺も楽しくなってきちまった!久人のがうつったかな)


全身からその身をも焦がすほどの熱をまき散らしながら、腕を振り上げ炎を飛ばす。

その炎は空気を喰らい巨大化しながら久人へと向かっていく。

しかし久人は相変わらずそこに居るだけ。だが発動している能力の規模が違っていた。

先ほどとは違い進行方向を反らすのではなく、引力の力で叩き潰す。

阿國が放つ炎の塊をことごとく叩き潰していた。


「楽しいな!楽しいよ阿國くん!君もそうだろう?」


全身がうずいて仕方がない久人は阿國に向かい叫んでいた。

その問いに阿國ももちろんだと言わんばかりに突進していく。


「そうだな!大抵一発で終いだったんだ。この姿でここまで戦える奴と会ったのは初めてさ!」


眼前に迫る阿國を右側へ引力で引き寄せ、斥力で無理矢理に進行方向を変える。

不可視の力に引きずられる体を炎の噴射で強引に戻す。しかし後から追い打ちをかける様にかかる後ろからの力によって久人から遠ざけられる。


(なんて強力なんだ!体がもどりきらねぇさ!)


そしてそのまま久人の横を通り過ぎていく。が、そのままでは終わらない。

ちょうど真横に来たタイミングで腕を突き出し腕を掴む。


「右腕もらったさ!」


炎の熱と力で久人の腕を強引にねじ切り今度こそ吹き飛んでいく。

そこにあったはずの腕の存在を失った久人は呆然としていた。


「僕の腕が…」


血は出ていない。熱で傷口が塞がった為だ。

そんな久人の後ろからゆっくりと阿國が歩いてくる。


「さっきまでの威勢はどうした?楽しむんじゃなかったのか?さぁやろうぜ!」


ゆっくりと振り返る久人は言葉とは裏腹に、腕を失ったことなどなかったかのような晴れやかな表情をしている。


「ねぇ阿國くん!こんなに楽しいのは本当に初めてだよ!だけどね…」


だが急に久人の顔に凍るほどの冷たさが下りる。


「なんで君はもうさっきの姿じゃないの?」


もう太陽の獅子を使えるだけの力は残っていなかった。

纏う炎は消え、アグニオンとの一体化は解け、ボロボロの体を引き摺る阿國がそこに居た。


「出し惜しみしたのが仇になっちまったさ…でもまだやれるぜ?来いよ」


そう言いながらふらふらと拳を突き出す。

だがやはりと言うべきか久人は完全に興味を失っていた。上空に浮かび上がり見下す様に目を細める。


「ここ一番で最高に残念な思いをしたよ。だから、これも経験だと思って阿國くんは人生を始めからやらやり直してほしい。次生まれ変わった時にまた相手してよね」


阿國に失った方の右腕をむける。そうすることで阿國の周囲に引力の力場が発生する。

徐々に地面に吸い込まれていく感覚。曲がる腕、弾ける血管。

じわじわと味わう死に意識だけははっきりしていく。頭に巻いたバンダナがほどけ目の前に落ちる。


(真理には悪いことしたな。ごめん。長生きできそうにないさ)


そう思い目を閉じようとした阿國の、目の端で真理をとらえる。

泣き顔を想像していた阿國はその真理の姿に絶句した。

体中にある火傷。何かの負荷がかかったのか通常では考えられないくらいに腫れあがった腕。そして焦点の合っていない目。


「真理…どうして、なんで、真理がそんな姿に…」


思い立ち久人に顔を向け絶叫する。


「久人ぉ!!なぜ真理に手を出した!!俺との勝負だったんだろうが!!」


言われた久人は特大の疑問符を頭に乗せて首を傾げる。


「僕はなにもしてないよ。あれは阿國くんがやったんでしょ?僕の所為にしないでほしいな」

「俺が?馬鹿にするな!俺はやっていない!」

「直接はやってないけど、でも君の所為だと思うよ?」

「白々しい!!お前だけは道連れにしてでも連れていく!!」


しかし久人は壊れたものに一切の興味はなかった。


「あのね阿國くん。君と真理さんは一部だけどリンクしてたんでしょ?そんなこともわかってなかったの?」

(リンク…なに言ってんだ…)

「たぶん媒体はそのバンダナじゃないのかな。それを通して身体と精神の一部をリンクしてたんでしょ?だから師子王との一体化も耐えられたんだろうし、理性も失わなかった。違うかな?」

「待て…それじゃ俺はずっと真理を苦しめながら戦ってたっていうのか?真理はなぜなにも…」

「はぁ〜、だからね、苦しめてたのも、あそこまで追いやったのも君がそうしたからでしょ?もういいかな?そろそろバイバイの時間でしょ?」


体に掛かる力が一層増す。


(苦しい、辛い、楽になりたい。真理は俺が戦ってる間ずっとこんな地獄を味わってたのか…)

「久人、真理は…真理はまだ生きてるのか?」

「ん?辛うじてかな。でももうすぐって感じだよ」

「そうか、ならさっさとやってくれ。もう…疲れた」

「そっか!やけにあっさりだね!じゃあ、さよなら!」


久人がさらに力を込めた瞬間、足元に巨大な召喚陣が浮かぶ。


「これは!そうか夏輪くんだね!とてもいいタイミングだよ!」


金に輝く文字が一層強く輝き出す。

その召喚陣の上にいる久人は跳びのき距離を取る。

そして先程まで久人がいた場所には夏輪が立っていた。


「ハジ。君には言いたいことが沢山あるからまだ諦めちゃダメだよ。それに真理はまだダメになったわけじゃない。って言っても、もう話ができる余裕もないだろうから僕が終わらせるまで待ってて」

「やっぱり君達は最高だよ。こんなに楽しませてくれるんだから!さぁ第何ラウンドか忘れちゃったけど早速始めよう!」

「言われなくてももう出てくるところだよ。こっちも事情が色々あるから早めに終わらせるよ!」


夏輪の描き出した金色の召喚陣は中心部分から徐々に漆黒へと進化していく。その色はまるで死の淵を覗くような凶々しさを放っていた。


「君も召喚師か。本当に飽きさせないチームだね。しかも呼び出せるのは…悪魔かい?」

「よくわかりましたね。久人くんは本当に博識ですね。そう。今呼ぼうとしてるのは悪魔です。というか悪魔しか呼べません」


漆黒の召喚陣の中心で俯く夏輪。その表情はおよそ助けに来た者がするような表情ではなかった。

自信がない。無茶だ。そう何度も頭の中で反芻した。でも…


「僕にだって救いたい人はいる!」


決意の色に顔が染まり、目の奥に光が灯る。


「万物を黒く染めし地獄の使者よ、数多の存在を喰らい、我の元に出よ。そして…我の敵を、友人の仇となる者を滅せよ!!ガムルジン!!」


漆黒の濃度が増し、濃くなる召喚陣。

そこから漆黒の体毛に覆われ金の鬣を持つ一頭の馬が現れた。その大きさは約4〜5メートル程だろうか。

空の彼方に鼻先を向け、馬特有の鳴き声で一鳴きする。

そしてゆっくりと久人に視線を合わせた。



どうでしたか?

久人にスポット当てつつ、相手チームの事も描くとなると難しいものです、、、

今回も読んで頂きありがとうございました。

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