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占い師の記憶②

気分が悪くなる箇所があります。

ご注意ください。

 そう、つまりボクは精霊と人間、どちらでもあったということだよ。

 ん?過去形が気になるのかい?

 まあ聞いておくれよ。


 精霊の記憶を得たボクは、驚愕した。

 そりゃあ世界が何度も全く同じように繰り返されていることもびっくりしたし、筋書き...すなわち運命が実在することにも驚いた。

 でも、一番びっくりしたのはね。

 ボクの子供が...愛しい愛しい我が子が生まれる直前で、いつも世界が終わりを迎えてしまうということさ。

 どういうことかというとね...主人公と愛する人が口づける、その時、ボクはちょうど出産の真っ最中なんだよね。

 精霊は何回も世界を繰り返して、全ての人間の行動、運命を知っている。

 それによると、平和な村の普通の女の子、つまりこれまでのボクは辛い思いをしながらもあとちょっとで子供を産むところまでいくのさ。

 けれど、世界は主人公を中心にして回っているから、彼女ボクがどうなろうと気にかけてくれない。

 彼女ボクは一度も、自分の子供の顔を拝むことが出来ずに、世界はまた主人公の誕生から始まり、彼女ボクも全てを消去され赤子に戻ってしまうのさ。

 転生者達の言葉を借りるなら...データをリセットしてニューゲームってところだね。


 ねえ、酷いと思うだろう?

 どうしてボクがそんな目に遭わなきゃいけない?

 折角、愛する旦那様...幼馴染みなんだけどね?彼と結婚して彼との愛の結晶を作り上げたのに...それを取り上げられるんだよ?

 精霊と交ざった幼いボクは愕然として、何とかしなきゃいけないと奮起したのさ。

 何としても、ボクの子供を産み落とさなきゃいけないってね。


 だけど、どうすることも出来なかった。

 ボクは普通の平民の女の子だ。そんな子がどうして貴族に関われる?どうして王族に関われる?

 ボクは何も出来ずに苦い挫折をその時初めて味わったのさ。

 とうとう、主人公は二十六歳になってしまった。

 何とかしないと、世界と共に人間であるボクは消えてしまう。ボクはもう、精霊ではないのだから!


 考えて、考えて...魂の力を利用することを思い付いた。

 幸いなことに...その時ボクの体には、三つも魂が宿っていた。

 一つは、精霊としての魂。

 一つは、村の女としての魂。

 そして、もう一つは...ボクの愛しい子供の魂さ。

 身重の体を引きずって、ボクはまず、精霊の魂の力を最大限使った。

 魂に秘められた魔を、ボクが世界の消失に耐えられる空間を作り出すことに注力し...成功した。

 まあ精霊の魂は力を使い果たして消えちゃったけど、それは仕方のない犠牲だ。そうだろう?この時ボクは正真正銘の人間になったのさ。


 作り出した空間の場所は、貴族の学園の庭園の近く。だって庭園は、ルナとレックスが出会い、クラルスとイリスが決別する運命の場所だからね。


 そうしてボクは消えずに済んだけれど、問題はあった。

 無理矢理作り出した空間、ここは世界の歪みなんだ。時間も進まないし、ここにはボクが認めたもの以外、絶対に入ってこれない。云わばここはボクの小さな王国だね。ボクしかいないけど。

 ボクはここから一歩も出られない。何故なら、ボクは元々消えている筈の存在だから、外に出ると即座に消えちゃうんだよね。

 ボクの肉体は、ここでしか維持出来ないのさ。


 ん?この格好かい?

 実はボク、村にいた時占い師紛いのことをしていたんだよね。だってボクはどんな人間の運命も知っていたから。

 まあ、そんな理から外れたことしちゃったから他の精霊にばれて裏切り者の烙印を押されたんだけどね。




 最初は絶望した。

 ここにいればボクは安全だけど、でも外には干渉出来なかった。

 外がどうなっているかも分からなかった。

 世界が終わる時に揺れを感じたから始まりと終わりは分かったけど、ただただ何もせずに回数を重ねるしかなかった。

 ボクは体験した繰り返しの861回の内、500回くらいまで一人でここにじっと引きこもって絶望していたのさ。

 仕方ないんだ。どうしようもなかったのさ。


 だけど、やっぱり自分の子供を見たいじゃないか。

 ボクがこの空間に入ってから、体の時は止まっているから、もうこのお腹の子に会うことは不可能だ。

 でも、外にはボクがいる筈なんだ。世界と共に新しく生まれた普通の女の子のボクが、いるんだ。

 だったらその子を助けるしかないだろう?

 ボクはその子を助ける為に何でもすると決めた。

 そしてまず、自分のお腹に宿った子供の魂をまるごと使って、世界のどこでも覗ける水晶玉に変えたのさ。

 そしたら何でか子供の体も消えちゃって、ボクの体もすっきり細く元通りになってさ、理屈は分からないけど。

 この水晶玉は、ボクの本当の子供なんだ。愛しい愛しい我が子。この水晶玉だけは、誰にも渡すつもりはないよ。


 ん?どうしたんだい?顔色が悪いようだけど。

 親、失格...?どうして?この子はもう生まれることが出来ないんだから、有効に活用した方がいいじゃないか。

 この子はボクの子供だ。

 ボクが夫と結婚して授かった子供だ。

 でも、もう世に存在出来ない子供だ。

 だったら、新しい、ボクじゃないボクの子供の為に、力になるべきだ。そうだろう?

 だって外にいるのはボクじゃなくても外身はボクだし、そのボクから生まれるのも同じ、この子なんだから。


 ...どうして、そんなに怒るんだい?怖いじゃないか。

 え、帰るの?まだ話は途中だよ?君が聞きたいと言ったんじゃないか。それなのに...。

 うーん、どうやらボクは君の逆鱗に触れてしまったようだね。

 続きはまた今度にしようか。

 それじゃあ、イリスによろしくね。ボクは本当に、感謝してるってさ。

 あ、勿論君にも感謝してるよ。むしろ愛してる。何てね。

 ...酷いなぁ、そんなに言わなくても良いじゃないか。


 それじゃ、またね。体に気をつけるんだよ。

 ボクはいつでも君を待っているからね。

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