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ヒ口インは勝利を確信する

ヒ口イン視点のお話。

 私はこの世界の主人公、ルナ・ルークス。

 私は転生者で、ここが「転生少女は聖女になる」という小説の世界だということを、七歳の時に前世を思い出して理解し、歓喜した。

 私が願ったことは何でも叶えられるし、何でも手に入る。

 その意味が分かる?

 ここは天国みたいなものだってこと!


 けど、邪魔者はいる。

 一人は私の仮の母親。ブスのくせに私を醜いだとか言ってくる、頭のおかしい女。

 何が「お前さえいなければ!」だよ。あんたがお父さんに愛されないのはあんたがブスだからだろ。モブのくせに私にあれしろこれしろ喚きやがって。うざいんだよ、死ねばいいのに。


 その女の娘、つまり私の異母姉も頭がおかしい。私を睨んで「お前がくる前は...お父様がお前の母親と出会う前は...お父様とお母様は仲睦まじかったのに!私のことも、愛し...っ、お父様もお母様も変わってしまった!どうしてくれるのよ...!」と訳の分からないことを騒ぎ立てる。あんたのことなんかどうでもいいんだっつの、うるさいな。


 お父さんはいい人だ。私を溺愛し、何でも言うことを聞く。

 ただ私を、知らない女の名前で呼ぶのが気持ち悪い。距離も近い。イケメン以外私に近付くんじゃねえよ。


 唯一の癒しは、姿の見えない私の友、光。その正体は光の精霊らしく、私はその守護を受けているそうだ。小説での最後にルナがイリスに勝てたのは、そのおかげらしい。

 光は私に助言をしてくれる。シナリオ通りにすれば幸せになれると教えてくれた。

 光はいつも私のそばにいて、頭の中に直接語りかけてくる。私を全肯定する、友達だ。




 ストレスマッハな幼少期を耐え抜き、私は十六歳になって学園に入学した。


 これでレックスとイチャラブの生活を送れる!と喜んだのも束の間。

 イリスがレックスとの初めてのイベントを滅茶苦茶にしやがった。


 イリスは悪者で、最後には死ぬキャラだ。ブスな脇役の分際で、主人公の邪魔していいと思ってんの?


 イリスは転生者だった。

 庭園に呼び出して確認したら、そうだと言っていた。

 その時「私の邪魔しないで。私の幸せを壊すなよ」とちゃんと忠告したのに、さっそくレックスとのイベントをぶち壊しやがった。光もあいつを敵だって言ってたから、嫌いだ。早く死ねばいい。


 その後、ダンスパーティーの前日にも、イリスは「私はあなたに貸しがある!」と私のドレスを奪おうとしたりして、マジで鬱陶しくなった。母親や異母姉と同じく、頭がおかしいんだと思う。


 他のモブの生徒共も、なんのかんの喚いて私を苛立たせる。

 貴族の学園、ほんとめんどくさい。


 ただ、レックス、それとクラルスは、マジでイケメンだった。

 さすが二次元の世界。よく出来てる。


 レックスは入学してすぐに私の魅力に気付き、ダンスパーティーのパートナーとして誘った。

 クラルスは...イリスにぞっこんだった。顔はいいのに、勿体ない。兄弟での私の取り合い、楽しみだったのに。




 イリスに、サロンに招待され、仕方なく参加してやった時だった。

 モブ共が私を意味不明な理由で責め立ててきた。

 レックスが私をうんざりとか、分かりやす過ぎる嘘も吐いてきた。それで騙せるとか思うの、馬鹿過ぎない?

 しかし、光が「今だ!」と叫び、唐突に私の視界はクリアになった。

 何事だ、と思って、退室した後、光に事情を聞いたら、何でも私の知らないところで、前世の人格じゃない私、つまりもう一人の私が、私として活動していたらしい。

 そのもう一人の私がさっきの嘘で動揺したから、光の力で存在を消し去った、とのことだ。

 私じゃない私なんて、ぞっとする。消えて良かった。

 もう一人の私はシナリオなんてどうでもいいと思い込んでいて、強い心を持っていたから光も手を出せなかったらしい。虚を突いて、ようやく厄介事を排除出来て安心した、と光はほっとしていた。

 今まで不自然だった、私がイリスにドレスを借りたりとかの事象は、全部もう一人の仕業だった。

 私以外の私なんかいらない。消えて当然だね。




 ある日、光が私に言った。


「ルナ...残念だけど、もう筋書き通りにするのは不可能だ」

「は?何で?」

「イリスと...裏切り者のせいだよ。奴等は筋書きを外れさせて、世界を滅ぼそうとしているんだ」

「大変じゃん!つか、最悪だなイリス!」

「うん。でもね、結末さえ同じなら、世界は救えるんだ。イリスとクラルスを殺す...処刑させて、ルナはレックスと結ばれれば」

「でも、イリスとクラルスをどうやって...」

「大丈夫。反対しそうな王も貴族も平民も皆、ボク達でどうにかする。ルナがするのはイリスの動きを封じること。イリスはいつもペンダントを身に付けているんだけど、それを奪えば、ボクの仲間がイリスに干渉出来るようになるんだ」

「ペンダントを奪えばいいの?」

「うん。ボクの力を貸すよ。これで君はペンダントのチェーンをちぎれるくらいにはなった筈だ」

「分かった、頑張る」

「ボクもボクの仲間に働きかけて、周りの人間を邪魔させないように、協力的になるように操るから。ルナ、頼んだよ」


 そして私は、談話室にいたイリスに声をかけた。


 周りの生徒は、光の仲間の働きで皆、私の味方。私の言うことに従う。気持ち良いわ。

 生徒達にクラルスの相手をさせ、私は光の力を借りて、イリスのペンダントをちぎる。

 途端、イリスの周りを闇が包み、倒れた。


「イリス!」


 クラルスが何をしようと、無駄。

 これで邪魔者はいなくなる。私の幸せは確定!

 やっぱり主人公って最高だよね!

ルナ=ルナ・ルークスとして生を受けた女の子。一人称は「あたし」。


ヒ口イン=イリスが侍女に殺されかけて変化したこと(シナリオにない事件)に慌てた精霊によって、ルナ七歳時、強制的に前世の記憶を蘇らせたら復活した前世の人格。

一人称は「私」。


七歳の時、ヒ口インが生まれる。ルナの頭痛を引き起こしていたのはヒ口イン。

この時はまだルナが体を動かしており、ヒ口インは思考するだけの存在だった。ヒ口インが思考する度に頭痛は起こり、ルナは苦しんでいた。


十歳の時、ルナがレックスと出会ったこと(シナリオにない事件)によって決別。ヒ口インも体を動かせるようになり、光の精霊の助言を受けるようになる。代わりにルナは光の精霊(囁き)を受けなくなる。

基本的にどちらも常に意識はあり、例えばイリスを呼び出した時は、ルナは「シナリオなんてどうでもいい」と言い、ヒ口インは「私の幸せを邪魔するな」と言ったつもりだった。不自然なところは補完され、自然だと思い込んでいた。


もう一人の自分がいることは互いに自覚していなかった。

が、ヒ口インにとって都合の悪い、例えばイリスに貸しがあるなどの事柄は、ヒ口インは認識しないようになっていた。

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