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短編・恋愛

暗黒破壊神は俺の恋人





「ふふふ、今日も暗黒破壊神である(わたくし)が皆を地獄の底へ送ってやりましょう」




俺の恋人には、前世の暗黒破壊神だった頃の記憶があるらしい。それで今日も彼女は右眼に眼帯を付け、左腕を包帯でぐる巻きにしている。



「うん、それは大変だね。でも、それよりも今日の数学の課題をやってない方が大変じゃない?」

「うっ、忘れてた……ゆきぃ助けて」

「暗黒破壊神なのにいいの?」

「今日は封印が安定してるから暗黒破壊神も怒らないの。だから、見せて!」

「……はいはい。教室着いてからね」




暗黒破壊神の恋人は学校でも有名人。廊下を歩けば人が去り、陰からこそこそ「あれが噂の厨二病の人……」と興味深そうに見ていて。時々、俺も仲間にされてるんじゃないかと不安になるが、美琴が暗黒破壊神(厨二病)に目覚めて二年。最早諦めている。


教室に入ると、一気に教室が静まり返り、とても気まずい気分にさせられる。美琴も本当はコミュ症の気にしいなのに、特に気にした様子もなく鼻唄を歌いながら席につくのだから変なところで神経が図太いのだと思う。


俺らの席は、窓側後方の前後と決まっていて、それは、面倒な厨二病患者を端に置いておきたいからという淋しい理由と俺が暗黒破壊神専属の通訳者であるからいう切実な理由で。なんともな理由だが、それで美琴と近くの席にいられるなら不満はない。寧ろラッキーだとさえ思っている。




「ゆき、早く見せて!!」




確かに、美琴の格好はあれだし、厨二病も痛いが美琴自身とても可愛く優しい性格をしている。不器用ながらいつも一生懸命で、卵もろくに割れず、彼女らしく作ってきたお弁当の感触はいつだってジャリジャリだけど、手には厨二病とは関係ない絆創膏が沢山貼られている。たまに、俺が作り返してあげるとその美味しさに驚愕し「ふっ、これが今の主の実力か……なかなかやるではないか。だが、しかし!!暗黒破壊神である私は真の実力を見せてはいない。明日、覚悟しておくことだな。私の作るお弁当の美味しさにひれ伏すことになるだろう!!」と訴え、気がすんだらまた美味しそうに頬張る。なんだ、これ、可愛い。

だいたい、美味しさにひれ伏すって意味不明だからね?ただ、ひれ伏すって言葉を使いたかったのかなぁ。


因みに、次の日の美琴のお弁当の感触は、ジャリショリで小さく進歩はしていた。人間にとっては小さな一歩だが、暗黒破壊神にとっては偉大な一歩である。



と、思い出に浸っていたら。




「もう!!なにニヤニヤしてんだよぉ。あんまり調子に乗ると私の中の暗黒破壊神が怒っちゃうんだからねっ!!」




何、それ可愛い。



そうか、暗黒破壊神が怒っちゃうのかぁ。でも、全然恐くないなぁ。寧ろキャーキャー騒いでて可愛いし、怒っている姿が見たいなぁ、と内心身悶えながら、震える手でノートを渡し腹筋で吹き出しそうな笑いを殺す。しばらくそうして我慢していたら、後ろからちょんちょんと肩を叩かれた。




「ん?」

「……あの、やっぱり暗黒破壊神にとってもゆきは特別だから怒らないって。だからあんまり落ち込まないで」




K・A・W・A・I・Id=(^o^)=b

ああ、何それ。可愛すぎ。



笑いを堪え、うつ伏していたのを落ち込んでいると勘違いしたんだろうな。可愛い。

まず、そんなことで落ち込むと思っていることが可愛いし、照れながら言った励ましの言葉も可愛すぎる。


ありがとうございます。神様、いや、暗黒破壊神様。恋人がこんなに可愛くて俺は幸せです。ああ、美琴が可愛い。美琴が超可愛い。美琴が可愛すぎて死にそう。でも、可愛い美琴をずっと見ていたいから死にたくない。そもそも、美琴が美琴として生まれてきた奇跡に俺は感謝しなければ。もっと言うなら、美琴のお母さんの卵と美琴のお父さんの精子が出会い、誰でもない美琴を作り上げた奇跡に感謝を。いやいや、それなら美琴のお母さんのお母さんの卵と美琴のお父さんのお父さんの精子が…………(以下略




美琴、生まれてきてくれてありがとう!!




いつの間にか生命の神秘にまで感謝し始めた俺に、美琴はもっと混乱して上目遣いで此方を見てくる。うおっ!そのアングル超可愛い。

仔犬か!?雨の中、段ボールで震えている捨てられた仔犬なのか!?





「ゆ、ゆき?」

「あ、ごめん。大丈夫、気にしてないよ」





ふと、現実に戻り慌てて美琴にフォローをいれる。すると、美琴は安心したらしくまた数学の課題の写しとりに精を出し始めた。





実は、分かっているのだ。

恋人の暗黒破壊神より俺の方が変態度は高いということを。美琴はその内、……そうだな、大学に進学するまでには暗黒破壊神を卒業し、黒歴史として、それこそ記憶の片隅に封印するのだろう。



だけど、俺は違うのだ。きっと大学生になっても、社会人になっても、美琴と結婚しても、おじいちゃんになっても、死ぬ寸前まで、美琴が可愛すぎて興奮する病気は治らない。俺としては、美琴が可愛すぎる事の方が病気なのではないかと疑っているが17年で培った俺の理性がお前はアホか、とつっこんでくるので自分の方がおかしいのだと認めている。





恋人の暗黒破壊神は、孤独で人を寄せ付けない(痛くて浮いている)



美琴にとって悲しいそれは、俺にとっては好都合。俺が美琴を独り占め出来る最高のシチュエーション。






可愛い可愛い俺の暗黒破壊神。


どうか君が消えるその日まで、君を独占する事を許しておくれ。そして、君が消えたその後もずっと共にいれますように。








まあ、美琴が嫌がっても俺は離れないけどね。





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― 新着の感想 ―
[良い点] 小説読ませて頂きました! ブラブラ転々としていたら 、この作品見させて頂き、何コレ、めちゃくちゃ甘々ですやん! て感じでとても面白かったです! 彼女の方が中二病設定なのがいいですね。本当に…
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