第3話「現状把握」
血が青いはずがない。
「リアル過ぎるぜ……」
信じられないし、未だ半信半疑だが、目の前で倒れている“これ”は、間違いなくゴブリン。
マスクをひっぺがしてやろうとしたが、取れなかった。
というかこういう顔だった。
そしてどうやら、このゴブリンを俺は間接的にだが殺してしまったようだ。
とても気分が悪い。
まさか俺が殺人……いや、ヒトではないのだろうが、多少なりともヒトに似た生物を殺してしまう事になるとは思わなかった。
エイプリルフールにしては意地が悪い、悪すぎる。
だからこれは、多分現実――にごく近いVR空間。
突き刺さった剣からドクドクと青い血が溢れ出ている。
気絶しているから、例え今は生きていたとしても、じきに出血多量で死を迎えるだろう。
なんというエイプリルフール、手が込み過ぎている。
「オボロロロ」
吐いてしまった。
何をやっているんだ俺は。
というか、どうすればいいんだこれは。
改めて辺りを見渡すと、やはり草原だった。
見渡す限りの草原だ。
後方にはゴブリンが出て来た森、此処はやばいだろう、離れよう。
いくらエイプリルフールだからといって、命を危険にさらす必要はない。
「……」
死体漁りみたいで嫌だが、ゴブリンから剣を引き抜いて頂いた。
ボロボロの剣、それも俺からすれば短剣サイズだが、もしも此処が本当に剣と魔法の世界ならば、無いよりはマシだろう。
嫌に冷静なのは、たぶんゴブリンを殺してしまったからだろう、我ながらなんとも……。
とにかくこの先をずっと進むしかない。
サバイバル経験なんてないし、このまま日が暮れたら俺にはどうしようもなくなる。
草原がこんな嫌なものだなんて知らなかった、衝撃の事実だ。
全く嬉しくない。
ピロリン
「ん?」
何やら音がした。
随分可愛らしい音だったが、何処から鳴ったのか、まるでわからない。
剣と魔法の世界で着信音とは……、着信音?
ゴブリン倒して着信音、戦闘勝利で着信音。
レベルアップだったりして、ハハハ。
ステータスとか見れないのかな。
「うおっ」
レベル 2
職業 村人
筋力 15
体力 15
魔力 10
精神 10
敏捷 10
スキル:スキル譲渡
「すげーエイプリルフールだ」
なんとまあ、ステータスが出ました。
俺の視界に映っていて、若干気持ち悪い。
現実か悩んでいたが、今確信した。
やはりVRという奴だな、これは。
近未来科学まで持ち出すエイプリルフール、これは一本取られた。
元気になってきたぞ!
しかし職業村人とは残念過ぎるな。
能力値も酷いが、一応今のレベルアップで筋力と体力が上がったようだ。
スキル欄が泣ける。
なんというか一見ゲームのようだが、疲れるし痛いし血は出るし、半現実世界の様なものだと思って行動した方が良さそうだ。
こんな訳の分からない所でゲームオーバーは嫌だ。
今日はエイプリルフール、だから俺は行く、まずは第一村人発見だ。
歩いた、それはもう歩いた。
日が沈み始めてからは、さすがのエイプリルフールでも若干の恐怖心を感じてしまった。
「おお!」
見えた、日本では見られないだろう巨大な外壁、こいつはすげえや!
村ではない、街だ!
ありがとうエイプリルフール!
「待ってろ、第一街人!」