第2話「初戦闘」
さあ、俺の戦いっぷりをお茶の間に届けるぜ!
「うおおお!」
右拳を振りかぶり、ゴブリンに突撃した。
踏み出す足はもうガタガタだ。
だがこれでいい、満身創痍の男が絶望を感じながらも必死に戦う姿。
そしてもたらされる「うっそでーす」
これで全てのピースは揃った。
今、俺のエイプリルフールが完成する!
「ギッ!」
俺のパンチは避けられた!
だがこれでいい、さあ打ってこいゴブリン!
「ギギッ!」
振りかぶる剣!
ズタボロだが、確かに凶器!
しかし俺はそれをギリギリ当たるか当たらないかの位置で避け――
「うわあああ!」
盛大に尻もちをついてやられた振りだ。
さながらビビッて倒れ込んでしまった様な迫真の演技。
決まった、これでゴブリン役のこのおじさんは――
「ギッ!」
「えっ」
左腕を切られた。
演技じゃない、マジで切られた。
浅かったから良かったものの、直撃していたらやばかった。
だってこれ、血出てる。
マジで出血してる。
「ギギギッ!」
「ちょ……ちょっと待って」
ゴブリンが近寄って来る。
目つきがヤバイ。
これ、もしかして、いやいやまさか。
「あのゴブリンさん」
「ギーッ!」
ゴブリンのもう一太刀を慌てて転げて避けると、今度は剣を振りまわして来た。
必死に立ち上がろうとして、疲労困憊だった事を思い出す。
力が入らずずっこける俺をお構いなしに、ゴブリンは剣を振って寄って来る。
「ギィッ!」
大上段、本気の一発が来る。
これはやばい、本当にやばい。
振り下ろされた一撃をギリギリでかわした俺は――
「あああ!」
残る力の限りで叫んで、殴りつけた。
顎にクリーンヒットしたそれで、ゴブリンは崩れ落ちた。
倒れたゴブリンの体に、持っていたその剣が刺さった。
「青……?」
ゴブリンの血は、青かった。