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『ジャッジギア』  作者: 臣将汰
第一速【赤き血なる歯車編】
9/17

9Gear『クナギの過去【上】』

今回も遅くなりました。クナギの過去は上と下に分割する事にしました。下は近々投稿するつもりです。お待ちください。

途中から三人称になるのですが、それはクナギ自身が過去を振り返るのを、第三者として見ているからです。

何故そうなっているかは、おいおい書きます。

■クナギの回想■



 【現在から四年前】

 眩しい光の中で、クサナギは這いつくばっていた。左腕は無く、肩から血を流し、全身切り傷と内出血だらけで、まさに満身創痍といった状態だった。

 そこでクサナギは、一歩も動けなかった。すると突然どこからか現れた、幼い緑色の長髪の少女に声をかけられた。可愛いか、美しいか、なら美しいと表現した方がよっぽど似合う少女だった。


 身長は百四十センチぐらいでとても小柄だ。服は、今の季節、冬だというのに、季節外れの白のサマードレスを来て、麦藁帽子を被っている。


『おや、君ズタボロじゃないか。どうしてそんな状態で〝こんな場所〟にいるんだい? 迷子かな?』


 何だが、偉そうな奴だ。俺より小さい癖して、何様だよ。


 クサナギはズタボロなのに、あの頃は心の中でも息巻く元気があった。当時の俺を見習いたい。


『知るか。俺だってなんでこんな所にいるかなんて知らねんだ。それより早くここから出せ。俺はこんな所にいる訳にはいかないんだ』


 クサナギはボロボロの体で立ち上がろうとするが、まだ十歳という若さでこれたけの重症を負った状態で立ち上がれる訳もない。


 なんで立てないんだよ!


 クサナギは不甲斐ない自分を罵倒した。


『そう言われてもねー。まずなんで君がここにいるかなんだけど。君、今まで何をして生きてきた?』


 緑髪の少女はクサナギにそう聞いてくる。

 俺は俯き、声を低くして言った。


『何って罪を犯して生きてきた』


『へー。その年で……罪、か。僕から言わせて貰えば人間なんて全て罪を犯して生きてる様にしか見えないけど、他の人間と君は何が違うのかな?』


 緑髪の少女はふむ、人差し指と親指で自分の顎を撫でる。


『それを話せば出られるか?』


『話の内容に寄るよ』


 つまり内容によっては出る可能性があるということだ。


『分かった。話す』


 この時、クサナギがこの緑髪の少女にクサナギの罪を話さなければ、俺は【罪裁歯車】の担い手になる事はなかっただろう。そうこれが、全ての始まり。

 クサナギの罪の根幹、全て始まりの始まりを語るとしよう。それはまだ俺の名前がクサナギだった頃の話。



■六年前■



 遊びに行ったリナの帰りがヤケに遅いな、と思ったある日の事だ。


『クサナギ、貴様の妹を人質として預かった。返して欲しくばこちらの指示に従って貰う』


 リナを攫った奴らは、金など要求せず、クサナギの力を求めた。そしてクサナギは奴らの要求に従った。


 奴らがクナギに要求した事は三つ。


 一つ目はある人物の暗殺。


 二つ目は【稼動祭】という、祭りで行われるデスマッチグランプリ【キリング】、生か死の大会で優勝し、ある物を回収する事。


 そして三つ目はある国を滅ぼす事だった。



■一つ目の要求【暗殺ミッションキリング】■



 この時、クサナギが殺したのは、【三動大国】の一角、別称【騎士王国】と呼ばれる【ナイトウォーク】の【五剣角】の一人、【覇剣】バリマール=エヴァンだった。

 【五剣角】とは、【ナイトウォーク】の中で、国の王である【騎士王】グラム=ナイトウォークから、選ばれた最強の五人の騎士で、国の政治や行く末の一旦を担っている者達だ。【五剣角】には、それぞれ代々、称号を襲名する決まりがある。【剣鬼】、【覇剣】、【聖剣】、【刃剣】、【剣輪】の五つが存在する。

 当時、【剣鬼】が三十五代目、【覇剣】が十四代目、【聖剣】は三十代目、【刃剣】は七代目、【剣輪】は二十二代目だ。

 そしてクサナギは無謀にもバリマールへの暗殺を実行した。


「がっ‼︎」


 クナギはバリマールの食事中を狙った。しかし、クナギの刀の軌跡は、バリマールの首筋に届かず、逆にバリマールの持つ大剣に弾き飛ばされた。


「今日は、また随分と幼い刺客きゃくじんだ。しかし、その年でその実力にあの剣尖、悪くない。少年、名を名乗れ」


「生憎だが、今の俺に名はない。あえて名乗るなら、そうだな。【からす】とでも呼んでくれ」


 普通ならまだ十歳だったクサナギは、バリマールに瞬殺されていただろう。


 但し、それはクサナギが普通だった場合だ。


「といっても、かなり短い間だろうけど」


「なんだと?」


 バリマールが声を荒げた瞬間、クサナギの持つ刀の刃が輝き、クナギは消えた。


「な、なんだ? この光は!」


 バリマールは目をやられないように、その光を手で遮った。

 光が消えるとクサナギはバリマールの背中を背に切り抜けた後だった。


「悪いな。あんたみたいな人を、殺めるのは好きじゃないんだけど、これも俺という歯車というものに運命を狂わされたと思って“恨んでくれ”」


 カキンッ‼︎


 クサナギがそう言い、刀を鞘に納めるとバリマールの胴体と下半身がズレ、崩れ落ちる。


「……一体……何が……?」


 バリマールの顔が驚愕に変わり、死相が現れる。


「悪いな。俺に“斬れないものは無い”んだ」


 クサナギがそういうとクサナギの左手のグローブが破ける。そこには黒い歯車の紋章が書いてあった。歯車の紋章には、刀のシルエットと烏のシルエットが刻まれていた。


「お前は……まさか……クロ……エ……ド……。残……んだ。少ね……とは……正々……堂ど……戦いたかった……よ」


 その紋章を見て、どうやらバリマールは気づいたようだった。


「悪いな。おっさん」


 それが十四代目【覇剣】の最後だった。


 そして国、最強の五人の内の一人を一瞬で倒せる。それは俺がクサナギだった頃、持っていた力だった。


 【クサナギ:殺害者一名】

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